北方宗一の軍事語り #18 全領域対応部隊 U.S.Navy SEALs
今回は初の国外の特殊部隊。
アメリカでも有数の有名部隊についてです。
アメリカ軍の精鋭部隊はかなりの数になります。
筆頭として語られる組織の中でも近年特に取り上げられるようになったのが海軍特殊部隊、SEALsです。
SEALsは海(Sea)・空(Air)・陸(Land)すべてを作戦領域とした部隊という意味になります。またSeal自体にはいわゆる封のシールやアザラシという意味があります。
このSEALsの設立の裏には水中破壊工作部隊UDTの存在があります。第二次世界大戦中に存在したUDTは掃海や機雷敷設、敵艦への破壊工作を行う専門部隊としての性格を有しており、長時間の潜水などを得意としていました。
ベトナム戦争において猛威を振るっていた南ベトナム解放民族戦線(通称ベトコン)の掃討を目的として1962年1月1日に結成されたSEALsですが、UDTと同じように掃海、機雷敷設部隊の潜水隊員を中核として水中からの隠密侵入を基本としつつアメリカ特有の空母一隻を基本編成単位に置いた機動艦隊の航空投射能力を利用した空挺もこなせる高度多目的部隊としての側面を有しています。
偵察、監視、不正規戦と適応される領域は広く、また多くの舞台が管轄を決めず世界各地への即応を可能としています。
このSEALsの選抜試験の過酷さは情報が公開されている選抜試験の中では最も厳しいともされています。
5週間の基礎教育課程でSEAL体力審査テスト(PST)と呼ばれる基礎体力テストが行われ、また精神面も厳しくチェックされます。
これをクリアするとまず受ける基礎水中爆破訓練では、8週間の基礎訓練課程を第1段階とし第2段階で8週間の潜水訓練課程 、第3段階で9週間の地上戦訓練課程が施される。特に著名な『ヘルウィーク』は基礎訓練課程の第四週に行われます。このヘルウィークが重要とされる理由は仲間よりも自分を優先するような人物を暴くためで、そのために低体温症を起こす寸前の状況下で睡眠時間を一週間で4時間のみに追い込むうえに過酷なメニューをこなすように指示されます。しかもチーム制で一位のチームにはボーナスの睡眠時間が与えられるという条件のためさらに過酷になります。
最終訓練で3週間の空挺降下訓練、15週間のSEAL資格訓練(SQT)、3週間の基礎寒冷地海洋訓練を受けます。
ここまでの訓練で2年半をかけるとされています。ヘルウィークをはじめとする各訓練段階ごとに隊員をふるいにかけるため結果が出るまでに時間がかかるうえに、多くの訓練は肉体に対し負荷をかなりかけるためにすべてを一斉にこなした場合最後の段階で使い物にならない肉体になっている可能性があるというのもあります。
SEALsの結成理由はベトコンの掃討ですが、最初の任務は差し迫ってきたキューバ危機に関連したキューバ本国への強攻侵入偵察でした。その後ドミニカ内戦に参戦。ほぼ同時期にベトナムのメコン川偵察作戦を皮切りに北軍の要人暗殺や誘拐、捕虜救出作戦や現地人を利用したベトコンあぶり出し作戦「オペレーション・フェニックス」にも参加しています。
その後はレバノン内戦やグレナダ侵攻、アキレ・ラウロ号シージャック事件、パナマ侵攻、湾岸戦争に従事して多大な戦果と多くの犠牲を残します。
ソマリアのモガディシュの悲劇を経てからもボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、在リベリア大使館員救出作戦、2001年以降の対テロ戦争に参加しています。
この過程で遊撃部隊と化していたチーム6は1998年ころから海軍特殊戦開発グループDEVGRUに改組されています。
また初期ナンバリングはチーム1、2を除き不規則でした。これは冷戦下での情報戦を意識して混乱を起こす意図があったとされます。チーム10があるのにチーム9が欠番なのはチーム6のDEVGRUへの改組が関わっているのもあって事情が違います。
SEALsには様々な装備がありますが代表的な装備はSCAR‐LとHK45CTでしょう。アメリカ軍でも試験的に導入されたこの二機種は高い性能を誇り、特にSCAR‐Lは「まるで弾丸を置きに行くよう」な撃ち味とされます。
高い性能を持つ火器は少数精鋭の部隊の能力を最大限発揮します。
また、標準的なM4A1やHK416も装備しているとされています。
近年では一昔前の「元グリーンベレー」のような「元SEALs」のキャラクターがよく登場します。
その先駆けともいえる沈黙の戦艦では主人公ケイシー・ライバックがSEALsとしてパナマ侵攻に参加していたとされ、チーム5も登場します。チーム5は携帯SAMでヘリごと殲滅されますが。
さて、SEALsには分派した最強部隊DEVGRUが存在します。それについてはまた今度にしましょう。