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北方宗一の銃器語り #17 拳銃沼へようこそ その4 旧東側系現代ミリタリーオート

今回は冷戦勃発期からの旧ソ連や東ヨーロッパ、中国、北朝鮮などで生産された拳銃です。

しかし、実は東側はそこまで銃の多様化が進みませんでした。AKも同じですね。

そしてやはり独走するチェコ。

MP443 グラッチ

ロシア軍の現制式拳銃。

機関銃のようなダブルカラムダブルフィードマガジンを採用しており、また80~90年代に完全新規設計された拳銃としては珍しく鋼鉄製のフレームを採用している。

ハンマーが見えないが、実際は露出式ハンマーであり、ハンマーの両横を延長したスライド後縁が覆っているため。

またポリマーフレームモデルのMP446ヴァイキングも存在し、欧州やカナダを中心に販売されています。

MP446はなぜかフランス書院の美少女文庫の某作のヒロインの愛銃として登場しました。(割と真面目になんでこれ選んだんだろう?)


SR1 ギュルザ

マカロフの外見にグロックのセーフティートリガー、ショートリコイル機構にグリップセーフティを組み込んだ拳銃。

フレームが上半分が鋼鉄、下半分がポリマーなのが特徴。

また、トカレフを思い出させるマニュアルセーフティの無い設計です。

MP443と制式の座を争いましたが採用されませんでした。


Gsh‐18

グロックフォロワーの自動拳銃。名前の数字もグロックと同じくマガジンの装弾数を指している。

バレルの高さを低く抑えていたり変則ダブルアクションのストライカー式という点も同じではあるが独特の妙に有機的かつ複雑なデザインはグロックとまったく逆である。


マカロフ PM

ロシア軍で今でも使用されている自動拳銃。

ワルサーPPをもとに設計したものの、セーフティーの方向を逆転したほか弾薬も9ミリウルトラを基にした9ミリマカロフにしました。またファイアリングピンを後方に保持するばねをオミットしハンマースプリングとマグキャッチを一体化させるなどして部品点数を減らしました。

グリップパネルが他にない形状で、グリップの角度が他の拳銃より直角に近いため、見分けるのは意外と簡単です。

ブルガリア、東ドイツ、中国でライセンス生産されました。

また、ロシアではスペツナズ向けのサプレッサー組み込み型のPBが開発されました。

現在、日本で最も取り締まられている拳銃です。

ロシアでこの拳銃が長く使われている理由はスライドを引ききるとフレームとバレルで瓶のせん抜きになるためだというジョークがあります。しかも実際に出来るそうです。


スチェッキン ASP

全長225ミリという軍用拳銃としては最大級の拳銃です。

マカロフを大型化したような設計で、セーフティがセレクターとなっており機関拳銃として連射することができます。

装弾数は破格の20発。ストック兼用ハードホルスターはモーゼルの影響が見られます。

当初は砲兵や工兵向けの自衛装備として配備されましたが非力さゆえに軍では早々に陳腐化して警察や内務省の特殊部隊に回されました。

サプレッサー搭載可能化モデルAPBが開発され、特殊部隊に再配備されているようです。


PSM

潜入作戦向けの薄くかさばらない拳銃。デザインはPPKやTPH等に似ているがセーフティが引っかかりにくいように独特になっている。

特殊部隊や治安部隊向けに配備されている。

この拳銃向けの5.45ミリ×18拳銃弾はボトルネック弾でありFNの5.7ミリ弾と同じような防弾チョッキに対する貫通力を重視した弾丸です。


PSS

世界で最も静音性に優れた自動拳銃です。

独自の静音弾は薬莢内に燃焼ガスを封じ込め、弾丸を亜音速で押し出すことでソニックブームを生じさせません。

基本的にはマカロフの設計を基にしており、動作法はシンプルブローバック。

KGB、そしてその後継組織のFSB、SVRの暗殺セクションに配備されています。


トカレフ TT33

言わずと知れた危険な拳銃です。

M1911の機構をコルトM1903の外見に収めたという経緯があり、これ以降のロシア製拳銃は露出式ハンマーも可能な限り側面から見えないようにするようになったとされます。

また、強力な弾薬を使うためにショートリコイルを採用した反動で部品点数を減らし凍結時の動作確実性を改善するためにあらゆる安全装置が廃されました。

これは市販を予定せず、十分な訓練を受けた兵士のみがこの銃を扱うと仮定したためで、兵士が携帯する際は薬室に弾を入れないかハンマーをハーフコックにするかの対策を行っているためです。

また、トリガーと噛み合うシアにかかるハンマースプリングのテンションは高くなっており簡単にハンマーが落ちないようになっています。

7.62ミリトカレフ弾を使用しますが、モーゼル弾も使用できます。逆は威力の問題で使用できません。

またトカレフ弾は軟鉄の弾芯を採用しているため貫通力は他の一般的な拳銃弾を圧倒します。

東側の多くの国が生産しました。また、各国で輸出や装備更新のために安全装置追加や口径変更改造が行われたものが生産されました。

相棒ではこのオリジナルのトカレフがキーアイテムになる話がありました。


Cz75

現在チェコのチェスカー・ゾブロヨフカが生産している軍用拳銃。

もとは外貨獲得用の輸出向け拳銃として1975年に登場しました。

登場当時はアメリカでシューティング競技の権威ジェフ・クーパーが「口径以外は世界最高のコンバットオート」と評し、非常に人気になりました。

何の皮肉かこの銃はその後の西側の拳銃に対する基本的な考え方であるダブルアクション・ダブルカラム・9ミリパラべラム(トゥー=ダブル・ナイン)という哲学をS&W M39、ベレッタM92とともに体現した拳銃となりました。

フレームがスライドを覆うような設計はP210に通じています。

この当時のモデルはファーストモデルまたは外観からショートレールと呼ばれ、硬質スチール削り出し故の生産性の悪さや共産圏に対する関税のために伝説のようになっていました。

その後生産性向上のために素材と一部外観を変更したセカンドモデル、ロングレールを投入しました。

冷戦後、セカンドモデルを基にCz75Bが設計され、さらに大幅なデザイン変更を伴ったポリマーフレームモデルの投入を行いました。

この銃のバリエーションSP‐01はお披露目の際アクセサリーとして銃剣が採用された事が話題になりました。

また、イタリアのタンフォリオTA90、イスラエルのジェリコ、スイスのスフィンクスAT2000、ルーマニアのクジールM98、ブレン・テンなどのコピーや派生モデルを生み出しました。

ファーストモデルはガンスミス・キャッツの主人公ラリー・ビンセントが愛用し、日本でのこの銃の知名度を飛躍的に向上させたとされます。というより、この漫画の影響でこの銃を買ったアメリカ人も多数いるとか。


Cz100

チェスカー・ゾブロヨフカが設計したポリマーフレーム拳銃。

ダブルアクションオンリーでマニュアルセーフティがありません。

派生モデルとしてコンベンショナルダブルアクションのCz110があります。

この銃の特色としてスライド上部排莢口後ろにあるバレルストップがあります。これをどこかに引っ掛けてスライドを引くことができます。

グロック19と同じクラスです。

しかし数年前に生産中止になったようです。

日本ではちょくちょくザスタバ製と間違われますが、これは-GHOST IN THE SHELL- 攻殻機動隊の影響があります。


Cz82

チェコスロバキア軍が9ミリマカロフ弾を採用することになった際に採用した自動拳銃。

やはりロシア人嫌いからかCz52ほどではないにせよマカロフに比べると高度な設計となっています。

ダブルカラムマガジンにフレーム搭載セーフティとベレッタのM81チーターを思い起こさせる部分があります。仕上げも美しい黒染めです。

また外貨獲得の民間向けモデルとしてCz83が設計されました。

日本だけでなくアメリカでもマイナーでメディアへの露出は少ないです。


Cz52

チェコスロバキアでトカレフ弾を使用する拳銃が必要となったため設計された拳銃です。

トカレフとは違いローラーロッキングショートリコイルを搭載し、セーフティも完備しています。

実はH&Kより先にローラーロッキングを拳銃に実装しました。

そのPPのような外観と裏腹にM1911より7ミリ短いだけとかなり大柄です。

命中精度が高く、アメリカではそこそこ人気があります。

ヨルムンガンドのチェン・グオメンはこの銃に刃を溶接したものを振り回していました。


ZVI KEVIN

チェコのZVIツヴィ社が開発し2007年に発表した自動拳銃。

名前の由来はホーム・アローンの主人公、ケビン・マカリスターからです。

ポケットサイズでありながらマカロフ弾を使用できるという特殊さで映画やゲーム、はたまた小説などのメディアに出ていないのにそこそこ知ってる人がいたりします。

ZVI社では個人の自衛用のほかに特殊部隊やパイロットのサイドアームとしても提案されています。

ガス圧閉鎖式メカニズムを薬室直前部の二つの小さい穴と排莢口の前縁の組み合わせで実現しており銃自体のコンパクト化を実現しましたが、サプレッサーを使っても銃声が小さくならないというこの銃だけの欠点を生み出しました。

アメリカではマイクロデザートイーグルとしてデザートイーグルと同じくマグナムリサーチ社が販売していますが製品の開発を自社で行ったと発表してZVI社と問題になっています。


ツァスタバ Cz99

ユーゴスラビアのザスタバが設計した自動拳銃。

9ミリパラべラムでP22Xの影響を受けた部分があります。

グリップ前方のレバーはスライドストップ兼デコッキングレバーとなっています。

イスラエルではゴランとしてライセンスモデルが製造されています。


クジール モデル74

ルーマニアの将校向け自動拳銃。

PPKそのままのメカニズムでさらに小型化した設計です。

とにかくマイナーですが緋弾のアリアの登場し、どのような銃かわからない人が続出しました。

日本語の情報がある書籍は『現代軍用ピストル図鑑』『現代ピストル図鑑 最新版』(床井雅美 著 徳間文庫 刊)以外現在みられていません。


QSZ‐92(92式手槍)

中国のノリンコが設計したポリマーフレーム拳銃。

9ミリパラべラム弾を使用しますが、輸出禁止の5.8ミリ×21PDW弾を使用するモデルもあります。

露出ハンマー式のコンベンショナルダブルアクションで、機構としては手堅く変わり映えしません。

仕上げの一部が手作業などまだまだ発展途上と言えます。

レールを前方で露出している金属製インナーフレームに搭載するなど独創的な面もある。


77式手槍

ノリンコが設計したシングルアクションストライカー式自動拳銃。

トリガーガード前縁が動き、引くとスライドが後退し装弾、コッキング、引き金に指を戻して撃発を片手で行うことができます。

なおこのメカニズムはほぼ同様の物が日本でも玩具向けに開発されており、開発者の名前を取ってタニオ・アクションと呼ばれています。

このメカニズムのためにリコイルスプリングは弱くなっており、代わりに薬室にリング状の溝を切って摩擦係数を増やしています。

この銃の改良型であるM77Bはガス圧閉鎖メカニズムとなっています。


64式微声手鎗

ノリンコ製の特殊部隊向けの静音拳銃です。

スライドを閉鎖状態でロックする機構が積まれています。

北ベトナムにも供給されました。

改良型に軽量小型化した67式があります。

経済自由化後は輸出が行われたようです。


54式手槍

詳しくはTT33の項目で。

中国ではマカロフのコピーである59式が短機関銃の口径の問題で軍に採用されなかったために長らくセーフティなしの54式が生産されました。9ミリ口径でセーフティを搭載したモデルが輸出されています。

日本国内の大多数のトカレフはノリンコの54式で、ソ連製TT33は稀です。

しかもその中でも横流し品や規格外部品の寄せ集め品、軍で消耗しきった廃棄品、密造品ばかりとされています。

特に日本では54式手槍は「黒星」それのクロムメッキモデルを「ギンダラ」と呼んでいます。

クロムメッキは海上輸送時の防錆以外にも酷使しきった中古品の状態や密造品、横流し品の粗悪な仕上げをごまかすために行われたとされます。

日本の暴力団向けに中国の駐在武官によって大量に密輸されたために大問題になりました。

ヤクザ映画の常連で、またソードアート・オンラインのファントム・バレット編ではキーアイテムとなっています。

しかし近年は用廃になったマカロフ、および59式がとってかわるようになりました。

なお、中国はこれら54式や59式以外にも世界各国の銃のコピーモデルを生産している。

P226のコピー品であるNP22やCz75のコピー品であるNZ75を生産しており、NP22はイラン、NZ75は北朝鮮の制式拳銃として輸出やライセンス生産がされています。


白頭山拳銃

北朝鮮製のCz75クローン。

軍用にあるまじきエングレーヴがされたモデルが功労者への下賜用として製造されているほか、軍の制式モデルとして他の拳銃を更新したと北朝鮮政府は発表しています。

また中国のノリンコが生産したCz75クローンであるNZ75か空軍パイロットの自衛装備となっています。


70式

北朝鮮独自の軍用拳銃。

FNのM1910を基にハンマー式に改設計したもの。

64式の後継で将校向けに製造されました。

また、アフリカにも輸出されました。


68式

北朝鮮製のトカレフ。

しかしショートリコイル機構をブローニング・ハイパワーと同様の物にしており、全体のデザインも変更されています。

しかし安全装置はまったく存在しません。

輸出もされている模様です。


64式

北朝鮮初の国産拳銃。

世界最初のスライド式量産自動拳銃、FNのM1900を基にしており、将校向けモデルはほぼ同じ。

特殊部隊モデルはスライドを短縮しネジを切ったバレルを搭載しサプレッサーを取り付けることができます。

この銃が製造された裏には金日成が抗日運動を行っていた際の愛銃であったことが理由にあるとされます。

多くの東欧諸国は改革開放後マカロフを維持したり独自に銃を設計開発し配備してみるものの輸出をしなかったり西側の拳銃のライセンス生産をしたりといろいろです。

しかし、やはりロシア、チェコ、中国以外はあまりパッとしません。

社会主義政権下でも工業力がある程度維持されたり、あるいは国際社会の援助で工業化に成功したこの三国以外は工業能力が破たんしてしまったのです。

今後、東欧で革新的な拳銃が生まれることはあるのでしょうか。

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