北方宗一の銃器語り #8 先ず西側のアサルトライフル
前回の構造のはなしから実践編です。
今回は歩兵向け装備の基本であるアサルトライフル。それも西側諸国のさまざまな特色を持った個性豊かなアサルトライフルを紹介しましょう。
画像は、目の前の集積回路を詰め込んだ箱で検索検索ぅ~!!
M16
アメリカ軍の運用するアーマライト社設計、コルト社製造のアサルトライフル。ですが、最近はM4に押され気味です。
最初期は1962年に.223レミントン弾を使用するAR‐15として設計された銃を空軍がM16として導入したのがすべての始まりです。
この銃にボルト強制閉鎖ノブを追加したA1型を1966年に陸軍が採用。その後1982年に弾薬規格SS109のM855弾に対応し連射機能を三点射にするなどの改良を数多く組み込んだA2型を海兵隊と陸軍が採用。さらにA2型を再度フルオート化したA3型を採用。またA2型のアッパーレシーバーをピカティニーレールによってフラットトップ化しただけのものをA4型として採用。そしてA3のフラットトップモデルをA5型として採用しています。
機関はガス圧利用式のリュングマン式を使用しました。
全長はフルサイズライフルなのでほぼ1メートルあり、ストックは調整不可能の一体成型固定タイプ。
最初期のM16はひとたびジャムを起こすと行動不能になり、チューリップ型のハイダーに異物が挟まるなどの問題がありました。A1型でボルト強制閉鎖ノブや鳥かご型のハイダーの搭載で欠点をいくらか克服しましたが、今度は銃のデザインが未来的だったために整備要らずと思い込まれ、火薬の質の悪い弾薬の使用もあって整備不良で調子をわるくしました。このためかアメリカ軍は美女の絵を使った整備マニュアル(今の日本でいえば『萌える銃器整備マニュアル』とでもいえるもの)を配布し整備を徹底、弾薬も高品質のものを使用することで故障は激減しました。
M4
現在アメリカ軍全体で採用されているカービンです。
M16系のカービンはM16A1を基に銃身の短縮、ガスチューブの設計変更、伸縮型ストックの組み込みをしたCAR‐15をアメリカ軍が1968年に配備したのがそもそもの始まりです。
このCAR‐15のハイダーを大型のものに変更しマズルフラッシュを抑えたXM177を航空機乗員や将校、特殊部隊隊員向けに配備しました。その後、M16A2のカービンモデルであるM727、通称アブダビカービンをアラブ首長国連邦に納入。そして1984年から試験していたM16A4のカービンモデルに当たるものをM4として1994年に導入しました。
リュングマン式の構造上、ストックを曲げることはできず、調整することしかできませんが、これが好評となり現在開発中のライフルの多くが調整可能なストックを搭載するきっかけとなりました。さらに、ハンドガードにレールを搭載することでスコープ、レーザーサイト、フォアグリップ、グレネードランチャーなどなど様々なオプションを積むことができます。
M4A1はM4の中でも3点射ではなく連射ができるものを指し、特殊部隊や練度の高い兵士を中心に配備されています。
M14
アメリカのスプリングフィールド造兵廠で設計されたM1ガーランドの改良型ライフルです。
マガジン給弾、連射機能の追加などを施したものの、フルサイズの7.62ミリ弾を曲銃床で連射するという設計はいかに体格が良くても制御が困難であり、最終的に制式化から5年で製造打ち切りとなりました。
それ以降は世界各国で生産されましたが、やはり短命に終わりました。
現在では連射機能をオミットしたり、DMRという改修でマークスマンライフルに仕立てたりしています。
FNC
ベルギーのFN社による5.56ミリNATO標準弾を使用した初めての銃です。というよりも5.56ミリNATO弾はこの銃向けに調整された弾薬です。
機関はロングストロークガスピストン方式。3点バーストと連射の両方を使える銃で、ストックはたたむことができます。
もともとカービンとして設計したため短く扱いやすい特徴もあります。しかし出来たのが多くの国で新型銃の研究開発が大きく進んで採用がはじまった時期だったためベルギー、スウェーデン、インドネシアなどを除くと配備した国はほとんどありませんでした。
なお、昔、日本が採用したと外国を中心に話題となりましたが、構造から外観までなぜか似てしまった89式を誤認したのが原因です。
なお2012年の春ごろアニメの影響で日本では急に知名度が上がりました。
SCAR
FNCを基に大きな改良を加えた銃です。ストックは長さと頬当てを調節可能な折り曲げモデル。4面レールを搭載しており、拡張性も良好。オープンサイトは折り畳むことができます。多くの操作をどちらの手でも行えるため利き手を選びません。欠点は値段と、撃つたびに動くうえに指が衝突しそうなところにあるボルトハンドル。
部品組み換えで全長を変えることができ、バリエーションで7.62ミリ弾が同じ操作で使えます。
F2000
FN社が誇るブルパップ式のアサルトライフルです。
カジキやマンボウに例えられる独特なデザインをしていますが、このデザインのおかげで非常に持ちやすいといわれます。
そのSFっぽいデザインからは想像できないほどに構造は保守的で、特殊なのはオプションのコンピュータ内蔵照準器くらいとされます。
排莢口が銃の前方にあって、薬莢が前方向に冷やされながらぽとぽと落ちるという特徴的な光景が見られます。これも実は非常に枯れた技術によるものだとか。
スロベニア軍やサウジアラビア軍に採用されましたがセールスは低調です。
じつはリビア内戦でこの銃を民兵が持っている写真が発見され、そこそこ話題になりました。
FAL
FN社の戦後製造したアサルトライフル、
フルサイズの7.62ミリ弾を使用するが、当初は短小弾を使う計画でした。
銃床が直銃床で、反動制御に強い利点があり、オーソドックスな設計から世界的に大ヒットしました。
しかしこのことがその後の新型ライフル製作の遅れにつながってしまいシェアを落としてしまうことになります。
ドイツ向け輸出モデルはG1、イギリスでの改設計生産モデルはL1A1と呼ばれます。
G36
ドイツのH&Kが作った軽量な銃です。それまで一途にローラーロッキング式を使ってきたH&Kがガス圧利用式にした初めての銃です。マガジンは独自のプラスチック製シースルーマガジンですが、部品の取り換えでSTANAGを使うこともできます。
機関はショートストロークガスピストン。
銃全体にプラスチックが使われ、カービン以上のサイズのモノはスコープが備えついてあります。
HK416
H&Kが開発したM4の改良型。
最大の問題とされた汚れやすい機関部はG36のモノを基に作りました。
連射しながら銃を逆さにしていって100発撃ってももまったく調子が変わらない高い動作性を誇ります。
実は上半分のアッパーレシーバーだけも売っていて、M4やM16の下半分と組み合わせるとHK416風の銃になります。
XM29
H&Kがスプリングフィールド造兵廠、アライアント・テックシステムと一緒になって作った非常に特殊な銃です。
G36を基にして作ったライフル部分と新規開発の20ミリ高初速セミオートグレネードランチャー、さらにコンピュータ内蔵複合照準器を組み合わせた未来的な銃でした。
しかし、非常に重く、非常に壊れやすく、そして非常に高いという欠陥を有しており、2003年に計画が中止されてしまいました。
一部では、「この銃を兵士みんなに持たせて予算を圧迫して戦争できなくする気なんだ」とか「スプリングフィールドにスタートレックオタクがいるからこうなる」とか言われたりもしました。
XM8
H&Kがスプリングフィールド造兵廠と一緒になって作ったより軽量な銃です。
G36を基にいろいろ軽くするための工夫が施されており、さらに最近標準化したレールの代わりに独特な凹みと突起を合わせて使う光学機器を固定する新システムを採用しました。
片手で構えて連射しても当るというとんでもないレベルの反動の軽さ、圧倒的な故障しにくさを持っていましたが、形状がなんとなくぬめっとしていて海兵隊が嫌がり、M4を卸しているコルトがロビーした上に、実は国防総省上層部が碌に知らぬ間に開発されていたことが発覚しお蔵入りになりました。
G3
ドイツが戦後初めて設計した国産小銃です。
スペインのCETMEを基にハンドガードの追加など様々な改良を加えた銃です。元の銃とは違い常装弾を使います。ローラー・ロッキング・ディレード・ブローバックシステムのおかげで他の銃より反動制御は容易とされます。
HK33
G3を基に5.56ミリ化したモデル。しかし、ローラー・ロッキング・ディレード・ブローバックシステムが5.56ミリ弾と相性が悪いという理由で短命に終わります。
改良モデルとしてG41があります。
CETME ModeloA
G3の基になったスペインのライフル。ローラー・ロッキング・ディレード・ブローバックシステムを搭載し、また減装弾を使うことで反動制御を容易にしました。
なお改良型のModeloBでは、常装弾を使えるようになり、その後ModeloLで5.56ミリNATO弾に対応してHK33のようになりました。
MASADA/ACR
アメリカのサードパーティーの銃器向けアクセサリーメーカーであるマグプル社が設計したアサルトライフル。
AR15やAR18、SCAR、G36、G3などを参考にして設計した意欲作。
銃身を簡単に交換できたり、左右どちらの手でも扱えたり、ストックを簡単に交換出来たりと先進設計の塊で、銃器設計のデビュー作でありながらもかなり優秀とされています。
しかしマグプルには設計能力があっても製造能力がないためブッシュマスターとレミントンに製造権を売却。ACRと名を変えマグプルは共同設計という立場に落ち着きました。
AR15の2~3倍の値段ということもあって一般市場や軍用市場では低調なようですが、マグプル謹製のエアソフトガンは日本国内でもかなりの量流通して人気を博しています。
また、MASADA向けに開発したマガジンであるPMAGはSTANAG規格に対応し、AR15向けに販売し大人気となりました。
SG550
正確には西側ではないものの西側に比較的近い姿勢を取るスイスのSIG社のライフル。
ロングストロークガスピストン、連射と3点バーストの併用、二脚備え付けといった特徴があり、FNCや89式小銃と共通項が見られる部分があります。
専用の5.6ミリ弾が存在し、比較的長距離に対応。マガジンもSTANAGではない独自規格を採用している。なお、世界的に見て高額な部類のアサルトライフルです。
FA-MAS
フランスのサンテーヌ造兵廠で設計されたブルパップ式の銃。初めはマガジンの規格が独自でNATO標準のSTANAGを使えませんでしたが今では使えるモデルを使っています。採用国が少ないのも特徴です。
機構はブローバック。大きいキャリングハンドルが目を引きます。
改良モデルにフェリンが試験されてましたが、最近雲行きが怪しいようです。
AUG
オーストリアのシュタイアー社で設計された機関部がストック内に収まったブルパップ式の銃。
折り畳みできるフォアグリップが備え付けられていたり初期モデルではスコープを搭載しています。
比較的最近のモデルはレールを搭載し拡張性が改善しました。
部品の組換えだけで簡単に様々な用途に使えます。
L85
イギリスの王立造兵廠で30年以上の間、設計試作を続けていた銃の量産モデル。多くの5.56ミリアサルトライフルが3.5キロ程度になるのに、なんと4.5キロという重量級です。ブルパップ式は普通小型になるので軽くなりますから異常ともいえます。また、全体的に動作不良が頻発し、連射で30発撃ちきれない、100発撃つととんでもない故障が起こる、などの逸話が知られています。その後動作性は改良されましたが重量は拡張性のために悪化しています。
ARX160
イタリアのベレッタ社製のアサルトライフル。
G36より先進的ながら、XM8ほど未来感のない、どこか太めのデザインが特徴。
重量が同クラスのXM8より400グラムも軽く、3キロとなっている。
排莢口が左右両方にあり、先端がとがったもののワンプッシュで排莢方向が変わる超便利設計。
ストックも調整と折り曲げが可能、マガジンはSTANAGと最近のトレンドをつぎ込んでいる。
また、ピンフリー構造を取っていて簡易分解でピンが一つも出なかったり、バレルの取り換えが簡単に出来たり、非常に先進的な設計。アメリカのSCAR計画でもここまで良い銃は存在しなかった。
地味にセールスも優秀な銃です。
AR70
イタリアのベレッタ社製のアサルトライフル。
M1ガーランドを改造して7.62ミリNATO弾に対応しボックスマガジンや連射機能を付けM14っぽく仕立てたBM59を代替するために開発されました。
初期型で.223レミントンを使うAR70/223と後期型で5.56ミリNATO弾を使うAR70/90が存在します。
K2
韓国の大宇精機(S&T大宇)で設計されたライフルです。M16をロングストロークガスピストン化したモデルと言えばほぼ説明しきったようなものですが、実はフルサイズモデルのK2の前にカービンモデルとしてK1が先行した、少々珍しい歴史があります。これはM16をライセンス生産していた時期に国産銃を作ろうとしたためで、M16の生産ライセンスになく訴訟リスクのないカービンを先に作り旧式のサブマシンガンを置き換えることになったためです。
K11
韓国がXM29をみて、なぜか作る気になって製造した複合小銃です。計画開始がXM29凍結前とはいえ、3年後にXM29が凍結されたのを尻目に、なんと制式配備にまでこぎつけました。
構成はXM29と変わりませんが、グレネードはボルトアクション。
現在韓国やセールスの実ったUAEで試験採用中ですが、銃のコンピュータと連動するグレネードが銃の内部で自爆する事故が発生したり、逆に異常なくらい不発が起こったらしく、リコールされた模様です。
T65
台湾で設計されたライフルで、韓国のK2と同じようにM16の機関を変更したものです。しかしショートストローク式で、先にフルサイズモデルが作られた点で違います。
なお型番の65は民国歴であり、西暦でいえば1976年にあたります。シリーズ化され、ちょっとずつ改良が加わっています。
89式小銃
日本の豊和工業で設計されたライフルで、輸出や性能評価向けにライセンス生産を行ったAR‐18からノウハウを吸収し、先代の64式小銃のデザインを踏襲する形で諸外国の設計に習って作られました。64式では連射時の命中性を確保するため独特な機構を使ったためにいろいろ不都合があったものの89式ではオーソドックスなロングストロークガスピストン式になっています。また、フラッシュハイダーがバートケージタイプや3つ又、4つ又ではなく側面の3対の四角い穴となっています。このフラッシュハイダーのおかげか反動は非常に小さいとされています。3点バーストは機関部で別ユニット化されています。
ボルトキャッチボタンの設計がよくわからないことになっていることも有名で、ボルトを前進させるためにボタンではなくレバーを使う羽目になります。
また、最大の特徴としてセーフティを解除すると真っ先に連射になるという点があります。これは先代の64式から続く自衛隊がアサルトライフルを歩兵一人一人が持つことができる軽機関銃として使用することを念頭に置いた戦略のためです。二脚もそういう意図で標準化されました。
AR18
アメリカのアーマライト社が設計したアサルトライフル。
ショートストロークガスピストン、5.56ミリ弾、AR系標準型マガジンという現代のアサルトライフルの雛形といっても良い銃。
もともとは西側のAKをめざし設計されたものの、M16の生産数の増加で存在意義がなくなってしまう。その後、日本の豊和工業によってライセンス生産され民間市場や自衛隊の性能評価、また一部は海外に輸出され、タイやブラジルの警察軍に配備されました。
その後IRAのテロに使用されたことや武器禁輸三原則の設定で製造意義が消失し、イギリスのスターリング・エンジニアリング、台湾軍、シンガポールのCISにわたって各地で銃器設計の基礎を築きました。M16のリュングマンシステムに不安を覚えた世界中の銃器に影響を与え、西側の大半のアサルトライフルはAR18の遠い親戚といってもおかしくないほどになっています。
なお、ストックの折り曲げヒンジが弱いという話があり、取り扱いを慎重にしないといけないとされます。
64式小銃
日本が戦後初めて製造した軍用小銃で、日本史上初の本格的自動小銃、そして突撃銃です。
設計に際してM1ガーランド、M1カービン、M14、BAR、CETMEやZB26、SKSカービンといった世界中の自動小銃を参考にしました。
最大の特徴は連射時の制御を簡単にするため、引き金を引いてから激発するまでの時間を遅らせる必要があったために機関部をストライカー式にしたことです。
また、二脚を標準装備し、塹壕で伏せ撃ちすることを前提としていました。これは自衛隊が自動小銃に求めていたのが歩兵一人一人に持たせられるBARのような銃だったためといわれています。
弾薬は7.62ミリNATO弾ですが雷管の感度を下げ火薬を減らした特殊弾。
なぜかこの時代の銃にしては特殊な折り畳み式アイアンサイトを有していますが反動で簡単に倒れることがあったり、セレクターの切り替えの時の手順が特別面倒だったり、「実戦を考えていない」といわれるような設計が多々ありました。しかし、精度の高い個体は小改造で狙撃銃化でき、警察や海上保安庁にも納入されました。近年ではレール追加とダットサイト搭載を施した個体が海自や空自の基地警備に用いられています。
もし、訳が分からなかったら、コメントにお願いいたします。