バカとアリルと鈍感臭
キーンコーンカーンコーン。
学校の終業のチャイムが校庭に響いてゆく。
退屈な時間を眠気と戦い切った学生たちは、その戦いに勝とうが負けようが、等しくそれぞれに帰り支度をはじめる。
もっとも、負けたものに、この後の人生で勝つ側に回ることは難しいのではあるが。
「うおっしゃああああ。終わった終わったああああ!!」
大きな革の鞄に黒板と蝋石、紙と黒炭をしまって、アリルは思い切り伸びをした。
一週間が終わった放課後は、帰り道にあるお菓子屋のマグ婆のところに寄るんだ。マグ婆はいつもあつあつのホットチョコレートとクッキーを振舞ってくれる、優しいばあちゃんだけど、一部の大人はマグ婆は魔女だっていう根も葉もない噂を信じて嫌煙している。
だからなのか、マグ婆は子どもにはすごく優しいんだ。
「アーリルー。今日もマグ婆んとこいくのか?」
「あの、あのあの、わたしも連れてってほしい、かも」
ぽむぽむと肩を叩かれて振り返ると、クラスメイトのアギとナギがそこに立って笑いかけていた。
アギは紅みがかった髪に、袖のないタートルネックを着て、手首から肘までをオレンジの腕甲で覆っている。 ナギはおかっぱの緑っぽい髪をして、黒いちゃんと袖のあるタートルネックを身につけている。どちらも同じ大きく膨らんだ、ゆったりとしたズボンを着ているが、この二人、実は双子なのである。
黒く日に焼けたアギと、白く雪のようなナギ。
獣化族のこの二人は、もとより混じっているだけの他の亜人とは異なり、完全な獣に変幻することができる。
スポーツ万能な人気者だ。
「ん? うん。あったりまえじゃん。マグ婆のお菓子を食べないで、休みに入るなんて勿体無いだろっ」
「へへっ。言えてる」
「う、ううううん。わた、わたしもそう思う」
「だよな!! で、なんでナギはぼくにだけそんなシャイなの?」
「うえ!? え、ええっと・・・・・・その」
「アリル」
ぽん。と、肩に手が置かれる。
「え?」
「女心と?」
「アキコ・ワダ!!」
「分かってんじゃねえか!!」
ウインクバチコーン!
「あったぼうよ!」
グータッチバチコーン!!
「ふえええーん。ばかあー!!」
みぞおちバチコーン!!
「「ごぼほぉぉぉぉぉぅぅぅ・・・・・・」」
賑やかな登下校。
その様子を、屋上から誰かが見ていたのを、その時彼らはまだ知らなかった。