遅刻とおじさん
「うぃーっす!!」
手伝いを初めて一時間ぐらいが経過した頃、ばっちり髪をセットした大学生くらいの男が入ってきた。
「また遅刻ね」
「すんません海百合店長」
「もぉ気を付けてよね」
会話しながらも素早く男は着替える
「あっそうだ、今日手伝ってくれるそーま君に自己紹介してね」
「新入りっすか?」
「今日のお手伝いよ」
「ほほーん」
文姫と一緒にカウンターの裏にある水道で食器の準備をしている手を止め遅刻さんと向き合う
「よろしくなそーま君」
「よろしくです」
「文姫ちゃんは相変わらずかわええな」
聡真の後ろでグラスを整理している文姫を覗き込む
「ほれほれ遅刻したんだし早く!」
海百合さんに急かされ押されるようにして遅刻さんは厨房へ入って行った。
「あの人の名前は?」
再び文姫の脇に立ち食器系の準備に戻る
「あの人はバイトの岬裏さん、いつも遅刻してくるんだよ」
「ほぉ~」
つまらない話をしていると早速仕事を終えた土木関係人が入店してきた
「いっらしゃいませー」
テーブルなどを掃除していた海百合さんが気持ちよく響く挨拶で出迎えている
「ふみちゃん、畳の席に案内して」海百合さんに手招きされた文姫はメニューを持ってカウンターから飛び出して行った。
一通り説明されていた通り土木集団の人数分のグラスを用意し、適度に氷を入れて麦茶を注いだ。素早くお盆に乗せ文姫の向かった場所へ運んだ
「お疲れ様です」土木集団がメニューを見ている所に麦茶を並べる
「新入りか?文姫ちゃんの彼氏か?」ニヤニヤしながら話しかけてくる土木集団のおじさん方、文姫と言ってる事は常連さんらしい
「いや、まぁ友達です」曖昧に答えをにごす
「てへてへ」文姫は隣でてれてれしている、
「ほほぉう、おあついねぇ」ますます絡まれ返答に困りながらも愛想笑いで表情を隠す
「こらこら聡真君はふみちゃんの救世主なんだからいじめちゃだめよ」救世主、海百合さんの登場により救済の兆しが見え始めた
「おぉすごいな、救世主か!!」
「文姫ちゃんモテモテだな」土木のおじさん方の熱い声援を受ける
「えへへ」相変わらず文姫は照れている
「さぁさぁからかってないでご注文は?」海百合さんがメモを持ってカウンターで頬杖をついている
「すまんな海百合さん」
「生といつもので!!」
おじさんたちに麦茶の入ったポットを渡し一度会釈しカウンターへ戻る
「ちょま」おじさんたちと何か話していた文姫がエプロンの端を掴んできた
「なんだ?」
「一人じゃ生ビール五本も運べぬだろ?」無い胸を叩いて私を頼れとアピールしてきた。
「ほいほい、んじゃいきましょ」カウンターの裏へ二人で仲良く戻った。