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変身ヒーローカップルの、人に言えない悩み――変身すると男女が入れ替わる  作者: 青い水


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13/21

温の受験生生活がスタート。とりあえず挫折を乗り越えて。

温は模試を受けて受験生スタート。郁は新しい武器に夢をはせながら、基礎戦闘力のアップに努めます。

 はるは予備校の模擬試験にやって来た。会場の入り口で百合華に会った。


「あ、おはよう、百合華ちゃん。」


「おはよう。ね、聞いて。誰にも信用されないんだけど、私、こないだ温と別れたあとで怪物に出会ってしまったの。恐ろしかった。でもね、すぐに美少女戦士が現れて、青く輝く剣で消し去ってくれた。やっつけると消滅するって良いわね。死体とか残ると気持ち悪いもん。」


「まあ、そんなことが。災難だったわね。」


「美少女戦士さん、すごくかっこよかった。でも不思議なことに、あとで思い出そうとしても顔とか全然思い出せない。」


「きっと全身のかっこよさに目が行っちゃってるから、顔とかのパーツは記憶に残らないようになってるんだよ、きっと。」


「なるほど、記憶の操作ね。合理的だわ。変身前の正体を守るための仕組み。」


「そ、そうなのかなあ、あははは。」


「温もきょうは制服で受けるの?」


「うん、試験だというので何も考えずにこれ着てきた。」


「うちは学校で決められている。模試は制服で受けることって。」


「そうなの?」


「本番の受験でもそれが規則。同じ試験場の受験生を威圧するためなんだって。」


「威圧?」


「そう、この制服、わりと有名なの。進学校の制服だということで。これを見て、あ**学園の子が来てるとなってみんな緊張する、それが学校の狙いらしい。なんだか性格が悪い。」


「あははは、でも作戦ってそういうものかも。だとすると、私の制服は他の受験生を油断させるアイテムになるわね。**高校の子が来てる。あんな子に負けるわけないじゃん、ってね。」


「ちょっと、自虐だと思って流そうとしたけど、それって同級生たちに失礼なんじゃない。」


「あ、ホントだ。みんなごめん!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 かおるは自宅のパソコンでここ数年の特撮変身ものをチェックしていた。何か戦闘の参考になることがあるかもしれない。何人かのヒーローは武器を出して戦っている。いや、平成後期から令和にかけてはほとんどが専用武器を携行している。ただでさえ生身の喧嘩に縁がないのだから、ここはひとつ組織にかけあって武器を作ってもらえないだろうか。しかし、つい最近バーニアをおねだりしたばかりだ。組織には予算というものもあるだろうし、ここはしばらく我慢だな。そのうち本部が武器の必要性を認めることもあるだろう。そのときどんな提案ができるか。


 武器はやはり使用者の意見を汲み入れて開発されるだろうから、自分の特性を把握しておかなければ。テレビのヒーローの専用武器は、玩具メーカーの意向もあって、複雑なギミックになっている。たいてい斬撃と射撃の両方の機能を備えている。ものによっては射撃の代わりに弓やボウガンのような形状で矢を放つものもあった。ううむ、剣か。チャンバラができる気がしない。中学と高校の武道は柔道だったし、棒状のものを振り回した経験がない。弓も無理だな。未経験。射撃はゲームのシューティングで人並み。練習すればもう少し上手くなるかも。ということで、もらえるなら銃だな。接近戦のときに双剣のように使えるとかっこいいかも。郁は液晶タブレットで想像した武器の絵を描き始めた。そして、しばらくすると小学生時代を思い出して照れ笑いした。


 よし、どれほどの実力か確かめるためにゲーセンへ行こう。今までスコアを気にしたこともなかったが、真剣に取り組んでみよう。



挿絵(By みてみん)



 久しぶりのシューティングゲームだったので最初は悲惨なスコアだったが、集中して取り組んでいたらだんだん上がってきて、ついに店のハイスコア表に名前が載った。郁はヒーローのレベルが上がったような気がして上機嫌でゲーセンを出て、次に向かったのは本格的なトランポリン施設だった。バーニアを使うようになると、空中での態勢バランスが重要だ。きょうはバイトで貯めたお金を消費してでも能力を上げておこう。あ、そういえば訓練の費用はあとで精算してくれるって言ってたな。しまった、ゲーセンの...いや、ゲーセンのコインの領収書は出ないだろう。トランポリン施設の領収書だけはしっかりもらっておこう。



挿絵(By みてみん)



 空中を跳びながら郁はバーニアのイメージトレーニングをした。ここで練習すれば、空中戦もできるようになるのではないだろうか。エアロヒーロー郁です。いや、美少女戦士ではないので自己紹介はしない。「でやっ!」「とうっ!」空中でパンチやキックを繰り出していたら、まわりに子どもたちが集まってきた。うわ、どうしよう。どうごまかそう?うん、何も言わずに立ち去ろう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はあ.....。」


 温は模試の結果を見てため息をついた。英語が壊滅的にひどい点数だ。素点が35点、偏差値が42。わかってはいたけれど、実際に目にすると落ち込まずにはいられない。試験を解いている最中に逃げ出したくなった。長文が読めない。知らない単語だらけ。英作文もどう取り組んだら良いのか皆目見当が付かない。学校の試験では経験したことがない状況だった。受験勉強をしたことがないというのはこういうことか。いや、絶望はしない。美少女戦士が絶望したら世界は終わりだ。温は唇を噛みしめて前を見た。さすがに大勢の人の前で奮起のシャウトはしなかったが、闘志がメラメラと燃え上がった。


 もちろん必死で頑張るつもりだが、やり方を間違うと取り返しがつかなくなる。成功者の助言が必要だ。誰が良いか。百合華...いやダメだ、出発点が違いすぎる。東大を目指して挫折した人間を成功者扱いして助言を求めるわけにはいかない。となると...郁さんか美咲さん。郁さんだと違う方向にデレる可能性が高いので、美咲さんに相談しよう。よし、すぐさまLINEだ。「美咲さん、英語の受験勉強でアドバイスが欲しいのですが良いでしょうか?」っと。すぐに返事が来た。週末で良ければとのことだった。




「温ちゃん、お久しぶり。」


「美咲さん、無理言って来てもらっちゃってごめんなさい。」



挿絵(By みてみん)



「良いのよ、温ちゃんはかわいい後輩なんだし、大学でも後輩になれるよう精一杯サポートするわ。」


「模試の結果が出たんです。受験勉強をしたことがないので、ひどい成績でした。素点が35点です。学校の試験なら赤点です。なので、一念発起して英語の受験勉強に取り組みます。ただ、自己流で突っ走って取り組み方を間違えると大変なことになるので、成功者の話を伺えたらなと思いました。」


「なるほどね、状況は理解したわ。たしかに定評ある参考書を前から順番にこなして行けば、そこそこ点数は上がるでしょう。でもね、それはあまり身についた実力とは言えないの。」


「どういうことでしょう?」


「英語は言語であるという簡単な前提を忘れているから。」


「参考書をやるだけだと英語は言語であると思えなくなると?」


「そう。語彙力が上がって文法の規則も覚えるでしょう。でもね、それは日本語の中に作り上げられた“英語”という名の知識構築物よ。英語そのものとは違う。」


「良くわかりません。」


「英語は言語だからひとつの世界なの。よその世界に模型を作り上げても英語という世界とは別物ね。」


「難しいです。私にもわかるようにもっと簡単に。」


「英語の世界があって、そこで話されたり書かれたりしたことには意味がある。外の世界の私たちはその意味にたどり着けない。要するにわからない。当然ね。だけど、昔からの知識の積み上げで日本語へ翻訳できるようになったので、その翻訳を読めば意味がわかる。」


「はい、そこまでは理解しました。」


「そこでもう一歩、そこで満足しないでもう一歩踏み出すと英語の世界へ入れます。英語の文を目にして、英語の音声を耳にして、そのまま受け取れるようになれば良いのです。はい、それはなかなか大変なことですよ。でも諦めたら試合は終了です。」


「具体的にはどうすれば良いでしょう?」


「英語の参考書で勉強したあとで、その日に学んだことをすべて音声化します.今はそういうアプリがあるので、学んだ英文を入力して音声で読み上げてもらうの。それを習慣化すると、音声でできた英語の世界に浸ることができるようになります。勉強したので意味はもう把握してるので、その音声がその意味を担っているということが身体でわかるようになるの。」


「おおっ、それはなんだか修行っぽくてやる気がアップします。」


「でしょ?毎日やっていれば英語の世界に浸ることができるようになるわよ。」




美咲のアドバイス、ぼくも高校2年生で受けていたら、もっとマシな英語力がついたのに、もう取り返しがつきません。

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