それぞれの旅
村の近くまで走ってきて、すごい悪寒を感じる、村は一体どうなってしまったのだろう、誰がこんなことをしたのだろういろんな事が頭によぎる、山から村までそんなに距離があったわけでは無いのになぜ何も音が聞こえなかったのだろうかここまでの惨状を引き起こしたのだ、魔法の爆発音、住民の悲鳴など様々な音が聞こえてきても良いはずだ、もしかして誰かが私を山へと誘い出すための罠なのか?
そんなことを考えながら走り続けて村に着くと人の気配は全くなく、ただ、この世のものとは思えない気色の悪い魔力が村を包み込んでいるのに気づく。
「何だ?本当に何があったんだ?それよりもみんなはどこに消えたんだ?」
私は疑問が残るがとりあえず教え子達の家を回ってみることにした。
結果から言うと何もなく誰も居なかった、それに全ての家は燃えておりそこに残されたものは何もなかった、私は絶望の淵に叩き落とされた気分になる。
「あぁ、みんな、また私1人になるのか?」
自然と涙が溢れてくる、みんなの家を見つめそのまま時間を過ごしていると村の中心から魔力の動きを感じた、私は涙を拭き微かな希望を胸に走り出した。
「は?」
村の中心にあったそれを見て声が漏れたと同時に村を包む気色の悪い魔力の正体が何だったのかを理解する。
「何故こんなものがここにあるんだ?それよりもこれを作る為にどれだけの犠牲をこの村で出したんだ!」
怒りと疑問が込み上げてくる、爆発する様に怒鳴り私は魔力でその口を覆い全力で何重もの結界を張り階段を封鎖した、結界を施し終え息を切らしながら座り込む、悔しさと魔族への恨みが今になって込み上げて来た。
「どうして私はいつもこうなんだ!村には私以外まともに戦える者が居ないのにどうして、どうしてタイミングが悪いんだよ!クソが!私のせいだっ!私のせいなんだ…クソがよぉ」
喉が枯れる程に私はその場で怒り泣き崩れたただ後悔と恨みを感じながら、自責の念に駆られ続けて気がつけば日は昇っており私は弱々しく立ち上がる、そして心に決めて声に出す。
「私は魔族を許さない、絶対に絶滅させてやる、覚えてろよ害虫どもがっ!」
枯れた声でそう言い放ち、隣街へ行き冒険者ギルドにこの事を報告し厳重に管理してもらう事を約束して、彼女はまた1人魔族を追い続ける旅を始めたのであった。
現在、エアル達はトネールの隣村であるカルードと言う村の宿に宿泊していた、各々が家族と過ごす中エアルはただ1人宿の外で修行をしていた。
僕が弱いから父さんを死なせたんだ、僕が弱いから村を燃やされても逃げることしか出来なかったんだ、全ては僕が弱いから!僕は強く、みんなを救えるくらい強くなりたい!
心の中で叫びながらただひたすら鞘に収めたままの剣を振り続ける、朝から晩までただひたすらに手に豆が出来ても血が流れて来ても止めることなく振り続けること1ヶ月が過ぎた、この1ヶ月で色々あった、アシリアとアクトの家族ジール一家は近くの大都市アルカバレイと言う街に引っ越してしまった、ジール一家は僕のこの状況を見て一緒に来ないかと誘ってくれていたのだが僕は自分を鍛えたいと思い無礼にも断りここカルードに残ることにした、アシリアとアクトは最後まで僕を誘い続けてくれたが出発の日には僕の考えを尊重して笑顔でお別れした、と思っていたが後ろ姿でもわかるほどアシリアは肩を震わせて泣いていた。
ニーナの家族マルゼリア一家は僕と一緒にこの村に残り今日まで面倒を見てくれていたのだが先日の事件以来父の方が精神を病んでしまい両親は不仲のまま離婚してしまったらしい、今はニーナと母親の2人で暮らしているらしい父親が居ると気まずいらしく来月にはこの村を出て行ってしまう様だ、あの事件以来みんな心の底から笑っていない様な気がしてならない、正直僕も心の底から笑えない日々が続いていた。
そんな中でも1ついい事があったといえば、この1ヶ月で1度村に戻って見たのだが国から派遣された兵士たちが村を囲んでいて中には入れなかったのだが遠目でもわかるわかった事が1つあった、村の中心にあった結界魔法の様なものは間違えなく先生のものだろう、と言う事だ、先生が前に一度使うところを見た事があるその時の魔力の流れと仕組みによく似ていた、それに国から軍隊が派遣されていたのだ誰かが何かを封印して報告までしたのだ、多分先生だろうと思い、先生が生きているのがわかっただけでも僕はかなり救われた気がした。
今何しているんだろう、先生は僕たちが生きている事を知らないだろうから早く会いたいな、そんな事を思いながらも今日も1人で修行していると後ろから声をかけられて顔を向けるとそこにはニーナが立っていた。
「よっ、エアル!今日も修行?たまには休みなよぉ」
ニーナは毎日の様に僕を心配してか挨拶しに来てくれていた、僕もずっと1人で修行しているので少しでも話に来てくれるのは気持ち的にだいぶ助かっていた。
「おはよう、ニーナ、今日も一戦どう?」
「ふふん、やる気だねぇ、今はまだ私の21戦13勝で私の勝ち越しだからねぇ、お姉さんが相手してあげよう!」
「はいはい、直ぐに追い抜くよ」
ニーナとはいつも模擬戦の様なものをしていた、今はまだ負けているが最近ニーナの動きもわかって来たので一本取れることも多くなってやっと追いついて来たと言うところだ、1人で修行していたら実践を味わえないのでニーナにはかなり助かっている、精神的にも。
2人は距離を取り気を削って作った木刀を構える、エアルは長い一本の木刀でニーナは短い二本の木刀を手にしていた。
僕は落ちている石を拾い上に投げながら言う。
「じゃあ、この石が地面に落ちたらスタートでっ!」
「おっけー」
石は高く空に上がりそのまま自然に落下してズサっと音を立てて地面に落ちる、それと同時にニーナが素早い動きで距離を詰めてくる、両手の木刀を交互に振りながら素早い動きで攻撃をし続ける、エアルは木刀を上手く使いガードはしているが防ぐので手一杯と言った感じだった。
「へぇ、なかなかやる様になって来たじゃん、それじゃあこれはどうかな!?」
話しながら後ろに大きく跳んだと思った次の瞬間、体制を低くして一気に距離を詰めて来て足元を狙われる、僕はそのままニーナを飛び越える形で飛び上がるとガラ空きの背中目掛けて木刀を振るうとニーナは待っていましたと言わんばかりに身体を90度曲げて僕の木刀を交わしながら短刀を僕のオデコに見事に直撃させる事に成功する。
「いだっ!」
痛みで声が出て後ろに大きく倒れるとニーナは喜び跳ね回っていた。
「やったー!これで私の22戦14勝だね、まだまだだねぇ、エアルく〜ん」
オデコを抑えながら座り込んでいる僕にニーナは煽りを入れてくる、ムカつく
と思いながらも堪える。
「ムカつくけど今の動き何?どこであんなの覚えたの?」
僕はニーナに聞いてみる、死角からの攻撃を避けて反撃まで入れてくるなんて凄いしそもそもあの体制から攻撃できるのが怖い。
するとニーナは何か考える様なジェスチャーをしながら笑顔で答えてくれる。
「カンかな」
「え?カン?」
予想外の答えに僕はキョトンとなる、するとニーナは続ける。
「まぁ、エアルならこうするだろうな、って思ったから」
「うっ」
実践を積んでいく上でニーナのクセがわかって来たと思っていたが、それはニーナも同じだったのかと思うと少し恥ずかしくなる、でもまぁわかっててもあんな動きはニーナにしか出来ないんだろうなと思いニーナの凄さを再確認する、昔からこう言うセンス的なのはピカイチだった、するとニーナは何かを思い出した様にハッとなる。
「そうだ!私、お使い頼まれてたんだった!早く行かないと怒られちゃうよ!今日は確か野菜スープとパンって言ってたからエアルもそんなに遅くまで修行せずに早く帰って来なよ!」
「うん、そうするよ!」
ニーナは慌ただしくも去って行った、また1人になり僕は鞘に収めた剣を振り続けた、最初は筋肉痛や疲労であまり触れなかったのだけど最近はかなり形も様になって来たし数を増やしても余裕でこなせる様になった、そんな成長を感じながら今日のノルマを終わらせるとランニングをして、宿に帰る事にした。
食事を済ませて自分の部屋に帰って来た頃、僕は今後のことを考えて1人布団の上で作戦会議をしていた。
今後の第一目標はみんなを救えるくらい強くなる事、そしてその次は冒険者になる事、冒険者になってレベル10の冒険者になる!そして父さんに報告したい、そして最後にまたみんなで笑顔で暮らしたい、先生やアシリアやアクトやニーナまたみんなで笑顔で暮らせる様に僕は全てを守れるくらい強くなりたい!
そんな事を考えながら僕は眠りについた。
そこから時は流れて半年が過ぎた頃、マルゼリア家は確か東和国と言う場所に行くのだとか、ニーナのお母さんの実家がそこにあるらしくそこでお世話になるらしい、マルゼリア家にも着いてくるように言われたがこれ以上お世話になるのは気が引けると断りお礼を告げて僕は見送った、ニーナは号泣しながら僕を必死に連れて行こうとして来たがさすがお母さん僕の意思を尊重してくれてニーナを止めてそのまま別れる事にした、マルゼリア一家には本当に色々お世話になったのでまたお礼をしに行こうと思っている、もちろんジール家にもそのつもりだ。
僕はまだカルードに残り父が渡してくれたお金もまだまだあるのでそれを切り崩しながら生活しており村の人たちとも仲良くなり手伝いをしてお礼をもらいなんとか半年が経ったのだがそろそろお金がそこをつきそうになり、僕はそろそろ村を出る事を決めた。
「街に行って、冒険者になってクエスト受けよう!」
僕は宿の部屋で1人で言う、荷物をまとめてみんなに挨拶をして回り村を出る事にした。
村の人から食料を分けてもらえて旅には困らなそうで良かったと思いお礼を告げて1番近くの都市”水の都 ヴェイリン”と言う街へ行く事にしたここからは10日程で着くらしいので僕は1人で歩き始めた、森の中を歩くので気を緩めずに歩いていると何かの気配を感じて姿を隠して様子を伺う、するとそこにはポブボアが1匹いるのが目に入った。
「ポブボアかぁ、今日はご馳走が食べれそうだなぁ」
涎が自然に垂れてそれを拭き、剣を抜きゆっくり足音を消して背後から近づく、近くまで近づき気づかれていない様だったので背後から一撃で仕留め、焼いて食べる事にした。
近くから乾いた気を持って来て焚き火を作り、気を削り串を何本か作り肉を刺して串焼きにして食べる。
「うまぁ」
そう言いながら食べていると匂いに釣られたのかジャングルベアーと言う魔物が姿を表した、完全に油断していたので僕は焦って剣を取り出すとジャングルベアーも僕に気付き戦闘体制に入る。
「せっかくの食事だったのに落ち着いて食べれもしないじゃないか!」
嘆きながらもジャングルベアーと戦う、前にルーンベアと戦った時は硬い毛並みに邪魔されて剣が通らなくて切れなかったけど今はどうかな?やってみよう!
そう思いたち素早くジャングルベアーに斬りかかろうとすると爪で反撃しようと切り裂こうとしてくるので僕は攻撃止めて大きく避ける、一撃でももらえばお陀仏だろうと思い唾を飲む。
僕は一度距離を置き体勢を立て直そうとするとジャングルベアーはその隙も与えてくれない様ですぐに大きな爪で追撃をしてくる、剣で受け流そうとするがその爪からなる攻撃は重く上手く流せずに後ろにのけぞりその勢いのまま剣が地面に強く当たる。
「うくぅ、重過ぎないか?」
そんな事をジャングルベアーに向かって言うが当たり前に何も理解していない様子で僕に威嚇する。
「う〜ん、ちょっとキツイかも、どうしよう」
額から流れる汗を袖で拭い剣を構え直す、逃げようかと考え始めたその時、ふと木の枝から垂れているツルに目がいき僕は直感する。
「アレだ!」
ジャングルベアーが突進して来たタイミングで走り出しそのまま股をくぐる様に滑り込み後ろに回る、そのまま体勢を立て直し木を踏み台にして高く飛び木の上から垂れていたツルを掴む。
「よし、掴めた!」
そのままツルの片方を切り輪っかを作り地面に垂らしそのままジャングルベアーが近づいてくるのを待つと作戦通り近づいてくる、ジャングルベアーが僕を目掛けて近づいて来た時にツルの輪っかに足が入る瞬間を見計らって僕は木の上から少しずつ体を傾けて頭が斜め下を向く頃に力いっぱいに枝を蹴りそのまま地面に向かって強く跳ぶとジャングルベアーを宙吊りにする事に成功した。
「上手く決まった、ってうんん、重いぃ」
ツルは思ったよりも丈夫でジャングルベアーが暴れていても切れることはなかった、僕は持っていたツルを木に巻き付けて少し息をつくとそのまま剣を構えて、命を頂戴する事にした。
「ごめんね、一撃で終わらせるから」
暴れるジャングルベアーの首に狙いを定めて、深く深呼吸して一歩大きく踏み出して剣を大きく振るう、見事にジャングルベアーの首を一刀両断する事に成功して首がドサっと地面に落ちると体は力無く宙吊りになった。
地面に下ろして肉を少し切り取り後日また食べるために草に包み保存しておく事にした、僕は近くで川を見つけ体や剣やナイフを洗い少し休憩する事にした。
「着くまでに何日かかるんだろう。」
川で休憩しながらそんな事を呟きながらも立ち上がりまたヴェイリンへと歩みを進める事にした。