病室にて
パッと目が覚めると見知らぬ天井が目に入る、起きあがろうと体を起こそうとすると少しお腹の辺りが痛むのを感じる、そこを摩りながら起き上がり周りを見ると小さな部屋に僕一人だった。おとあわな、わさわや
「あれ?そう言えば試験はどうなったんだろう」
ポツリと呟き記憶を辿るが、うっすらとしか思い出せないでいた。
グレイルジャガーを倒した後の記憶が曖昧ではっきりと思い出せないでいた、確か魔法を打った後地面に倒れたような?ダメだ全く思い出せない、何があったんだろう?
一人でベットの上で体を起こして座り考えていると、扉をノックする音が聞こえて開く、視線ぬをそちらの方に向けるとそこには様子を見にきてくれたであろうレインさんが手にお見舞いの品であろう果物を持って入ってきた。
僕が起きているのに気づいたのか驚いた顔で近づいてきた。
「良かったぁエアルくん、起きたのね?体調は大丈夫?痛むところはない?」
かなり心配してくれていたのだろう、嬉しそうに今にも泣き出しそうになった顔で、僕が起きた事を喜んでくれているのがわかる。
「心配かけてすみません、少しお腹の辺りが痛みますが大丈夫ですよ、全然元気です、それよりも試験がどうなったのか分かりますか?」
僕が右手を曲げてガッツポーズをして、元気な事を伝えると、レインさんは笑顔で喜んでくれた。
「本当に良かったよ、エアルくん3日も起きなかったんだもん、流石にもうダメかと思ったわよ」
「3日もですか!?」
レインさんは僕の驚く顔を見て嬉しそうに頷く、その反応を見て僕は改めて驚いていると試験の事を持ってきてくれた果物を食べやすいサイズまで切りながら話し始めてくれた。
「そう言えば、試験は合格だってヴィルヘルさんが言ってたよ、試験は相当厳しかったみたいだけど大丈夫だった?」
「はい、大変だったのですがなんとか、でも、倒した後のことが曖昧であまり覚えてないんですよね、誰かに何か言われた様な?」
質問に対して曖昧な回答をすると、レインさんも不思議そうに聞いていた、レインさんも何も聞いていないのだろうか?まだ疑問も残るが、果物を食べながら身体を伸ばしリラックスしていると、レインさんが改まって僕に言ってきた。
「そうだ、エアルくん、私ももう一度、冒険者やってみようと思うの、君を見てたら勇気が湧いてきたんだ、私ももう一回頑張ってみようって思ってね」
真剣な顔でそんな事を言うレインさんに僕は嬉しさと恥ずかしさを覚える。
彼女も色々考えての答えなのだろう、そんなレインさんの意思を尊重するべく応援する事にする。
「レインさんなら大丈夫ですよ、必ず冒険者として活躍できますよ、僕も応援しています、またいつか冒険者として同じ依頼なんかもできるといいですね!」
笑顔でいうと、その言葉を聞いて安心したのか嬉しそうにただ一言。
「ありがとう」
そう言い残してレインさんは仕事に戻ると帰ってしまった。
一人の部屋で静かに横になっているとこれまでのことを思い出してしまう、村であったことやこの町に来るまでのこと来てからの事を思い出し、このままでは、グレイルジャガーレベルの魔物に負けている様じゃダメなんだと自分を叱責する。
「僕はまだまだだな、あぁ、強くなりたいなぁ」
そんな独り言を呟き、悔しそうに唇を噛み決意に溢れる少年の姿がそこにはあった。
「じゃあ、俺が君を鍛えてあげてもいいよ?エアルくん」
「うわぁっ!なんでいるんですか!?」
「君が心配だったから」
そこにはベットの端にしゃがみ込んで顔を覗かせていたヴィルヘルさんがいた、驚いて変な声が出る僕を見て笑顔でニヤニヤしているヴィルヘルさんに正直イラっとするも顔を見て違和感に気付く。
「その右目どうしたんですか?かなり酷い見た目してますけど大丈夫ですか?」
ヴィルヘルさんの右目は青く腫れており、本当に大丈夫なのか気になる、僕が痛々しいもの見るかの様に不思議そうに聞くと、頬をぽりぽりとかきながら気まずそうに答える。
「あぁ〜、これはエイちゃんにね、まぁ気になるなら本人にでも聞いてみてよ、それよりだよエアルくん、俺が君のこと鍛えてあげるって話だよ、どう?」
何もないのにエイさんがそんなことをするなんて思えないけど、相手がヴィルヘルさんなら確かにやりかねない、というか、多分ヴィルヘルさんが何かやらかしたんだろう、絶対そうだ。
「鍛えてくれるのはこっちからも頼みたい事なのですが、どうして今更その気になったんですか?」
ヴィルヘルさんの事だから何か裏があるんじゃないかと思い疑う様に聞く僕にヴィルヘルさんは真剣な顔をして答える。
「俺は、見てみたいんだよ、世界を救う様な英雄を!数多の強敵を薙ぎ払い、平和をもたらす様なそんな存在を!初めてエアルくんを見た時に感だけど何か光るものを感じたんだ、そしてグレイルジャガーとの戦いで確信に変わったんだ、君ならそんな存在になれるんじゃないかってね」
物語を詠むような、言葉に緩急をつけ自分の夢について体も大きく使い語るそんなヴィルヘルさんを見て、彼への疑いは全く無くなっており胸が熱くなり、少し興奮気味で答える。
「見てみたいです!いや、そんなみんなを救えるような希望を与えれるような英雄になりたいです!」
前のめりで言う僕に、ヴィルヘルさんは笑みを浮かべる。
「よし、決まりだね、じゃあまた明日迎えに来るよ、取り敢えず今日はゆっくり休む事だいいね?」
「分かりました」
背中を向けて手を振るヴィルヘルさんを見て、頭を下げ見えなくなって横になる、これからの事が不安ではあるが、それを超えるほどの期待を胸に興奮冷めやまぬ感じで眠れないでいたが取り敢えず今はただ目を瞑る事にした。
目を瞑っている内にいつの間にか眠っていたらしい、ヴィルヘルさんが帰ってからどれほど時間が経ったのだろうか、目を擦りながら起きると外はまだ暗く静かだった。
自分のお腹からぐぅ〜と音が鳴りお腹をさすりながら起き上がる。
「お腹すいた」
部屋の明かりは消えており、薄暗い部屋を外に出ようと進む、何時なのかもわからないが取り敢えず何か食べるものを探そうと部屋を出ると外の廊下も明かりが消えており人の気配は全くなかった。
「取り敢えず進んでみるか」
暗い廊下を壁を頼りに少しづつ進む事にした。
暗闇に目が慣れるほど進んだが通路がずっと続いているのに気づく。
目の前に扉の空いた部屋があり人がいるのかと思い中を覗く。
「あれ?ここさっきまで僕がいた部屋?」
先程まで自分がいた部屋と全く同じだったので驚く、ベットの方に駆け寄り観察して見るが布団を退かすた後立ち上がるためにできたシワまでしっかりとは見ていないので確信はないが、僕の手や体の大きさと合う。
「そうだ、ゴミ箱を見てみれば」
そう思い立ちゴミ箱を見るとそこにはレインさんが来てくれた時に切ってくれた果物の皮が捨てられており確信に至る。
廊下を壁沿いに進み続けていたのに僕のいた部屋に戻ってきたらしい、廊下は丸みを帯びているわけでもなくまっすぐな通路を通って来たはずなので同じ部屋に着くはずはないと思うけど、どう言う事だ?
そう考えながらもう一度廊下に出て左右を確認する、目も慣れて来たため薄っすらと先が見える程度で奥までは見えないが廊下は真っ直ぐだった。
あることを思いつきもう一度部屋に戻り、部屋に備え付けてある、魔光石に魔力を少し流し起動させる、するとゆっくりと中心部から光が大きくなり部屋全体を照らすほどの大きさになる、暗闇に慣らした目を細めてその光を見る。
久しぶりに見た気のする光を見つめて少し安心した気がする。
魔光石は一度魔力を加えると1時間ほど光を灯し続けるため、生活必需品とも言える魔石だ、小さいものなら銀貨1枚ほどで買えるためどこの家庭にも一つは必ずと言ってもいいくらい置いてある。
僕は部屋の入り口に付けられている扉を大きく開き光を外に漏れるようにして、また、廊下の奥の方に目をやる。
「やっぱり、光ってる同じ部屋ってことなのか?」
奥を覗くとそこには扉が開かれており部屋から漏れた光が点々とあり廊下を照らしていた、その光景が何十何百と永遠に見えた気がした、反対側も例外なく同じ光景が続いており驚愕する。
「これ、どうなってんの?」