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策略

エアル昇格試験前日、夜。

冒険者ギルドヴェイリン支部支部長室にて。


「てことで、エアルくんにはグレイルジャガーを倒してもらおうと思ってる!」


私とレインは、ヴィルさんの急な呼び出しで急遽部屋に集められていた、いつものことではあるのだけど今日は雰囲気が違うと意気込んでいたのだけど、やはりヴィルさんは馬鹿らしい。


「はあぁぁぁ!?無理に決まってるじゃないですか!バカなんですか?エアルくんを死なせるつもりなんですか?グレイルジャガーと言えば危険度4ではありますがかなり5に近いと言われてことで?いる魔物ですよ!?」


レインが机を叩き立ち上がりヴィルさんに向かって怒鳴っている、少しうるさい。

すると、ヴィルさんはレインを落ち着かせるように手で落ち着くようにジェスチャーして私の方を見ながら続きを説明し始めた。


「まぁまぁ、落ち着いてよレインちゃん、クエストには同行人としてエイちゃんつけるから、何かあったら必ず中止をしてでも助けに入ってもらうから」


「えっ」


急に仕事を丸投げされて声が出てしまった、エアルのことは嫌いではないけど正直めんどくさい、行きたくない、それに正直街から出たくない。

エイはすごく嫌そうに口を開く。


「え、ヴィルさんが行けばいいじゃないですか」


そんな私を見て、ヴィルさんは少し考えとある条件を出してきた。


「まぁ、そんなに嫌がらずにさ、そうだなぁ、受けてくれるならこの前できた肉屋の食べ放題をご馳走するよ?」


その言葉を聞いて私は即答で今回のクエストを受けることにした、別に肉に釣られたわけではない、全然、本当に。

何故かレインの視線が痛いが私には分からなかったので無視することにした。

その会話を聞いてレインは深く深くため息を吐き渋々了承することになり、私達は解散することにした。


エアル昇格試験当日、朝。

私がギルドに着くとヴィルさんが入り口の近くで待っていたのか私を見つけるなり声をかけてきた。


「やぁ、おはようエイちゃん、はいこれ」


ヴィルさんは元気に挨拶をすると、私にボールの形をした魔法具?を手渡してきた。

私が受け取り不思議そうに見ているとヴィルさんは笑顔で言葉を続ける。


「それは、お守りみたいなものだから試験が始まったらここにあるボタンを押してね、何が起こるかはやってみてのお楽しみで」


「怖いのだけど、本当に大丈夫なんですよね?」


「うん、大丈夫大丈夫」


ボタンを指差し説明するヴィルさんにかなりの不安を抱きながらも受け取り、カバンに入れる、この人のこういうところが嫌いだわ、これが終わったら転職しよう。

そう心に決め、ギルド内の酒場スペースにてエアルを待つことにした。

合流して、試験の討伐対象のグレイルジャガーのところに着き軽く説明を済ませ、石を投げ直ぐに少し距離を取りその場所が見える木の上に隠れて見守ることにした。

相手は正直、今のエアルには倒せるとは思わないし直ぐに助けに行くことになるだろう、そう考えいつでも参戦できるように見ていると、ふとヴィルさんに渡された魔法具を思い出す。


「不安だけど押してみるしかないわね」


意を決して魔法具のボタンを押すとボールからロープが勢いよく射出され私の手、足、身体に巻きついて身動きできなくなってしまった。


「な、何よこれ?」


ロープを解こうともがけばもがく程、ロープの締め付けが強くなるのを感じた、これじゃあ助けに行けないじゃない、本当にあの人は何を考えてるのかしら。

ロープを解こうともがきながらもエアルの方を見ると、地面に倒れグレイルジャガーに襲われそうになっているのが見えた。


(マズイ!助けないと!)


その言葉を発しようとした時自分の声が出なくなっていることに気づいた。

エアルがグレイルジャガーに噛みつきをしようとしているのを見てもうだめだと思った次の瞬間、エアルはそのままグレイルジャガーの顔に雷の魔法を放ち怯ませているのを見て少し驚く、そして、なんと起き上がり自分に回復魔法をかけているのを見て口が開くほどに驚いてしまった。

回復魔法!?あの子そんな魔法も使えたのね、聞いてなかったので正直びっくりしたわ。

感心して見ていると隣に誰かが着地したのに気づく、大体の予想はついているが見てみると予想通りの人物だったので睨む。


「うまく起動したみたいだね、ちょっと怖いよ睨まないでよ、ゴメンって」


私は口で″早く解きなさい″と伝えているが声が出ておらず口をぱくぱくさせているだけだった、それでもヴィルさんは読心術が出来るはずなので伝わっているはずなのだが、聞こえないふりをしているみたいだった、やっぱりこの任務が終わったら退職しよう。


「まぁ、これが終わったら解いてあげるから、今はあっちあっち」


エアルの方を指差し視線誘導をしてくるので見るとなんと先程まで押されていたはずのエアルが攻めに出ていて驚く。


(なんなのあの動き、本当にレベル2なの?)


私はヴィルさんの方を見て言うとヴィルさんはニヤリと笑い嬉しそうに言う。


「やっぱりレインちゃんに勝ったのって本当だったんだ、ねぇ見てあれグレイルジャガーと互角とは言わないけど張り合えてるよ、凄くない?」


確かに危険度4のグレイルジャガーと冒険者レベル2のエアルがほとんど同じ力量なのは確かにすごいと思う、それにエアルって確か12歳って言っていた気がするのだけど、将来かなり化けそうね。

でもそろそろ限界が近いんじゃないかしらさっきから動きが少しずつ悪くなっている気がするのだけど、そう思いヴィルさんの方を見ると全く動く気配がなかったどころか木の枝に座り高みの見物を決め込んでいた。


(ヴィルさん、エアルを助けないの?)


私がヴィルさんに問いかけると笑顔で答える。


「助ける気ないよ?だってあれくらい1人で倒せないとこれから先の敵には勝てないからなぁエアルくんにはもっと強くなってもらわないと」


余裕そうに笑い少年を見守るそのヴィルさんの目には期待がこもっているふうに感じた。

この人は本当に何を考えているんだろう、私はヴィルさんの事を見つめ少し考えに耽る、すると恥ずかしそうにヴィルさんは笑いながら言う。


「何々?見惚れちゃった?そんな真剣な顔で見つめないでよ、照れちゃうじゃないか」


少しイラッとするが、はぁとため息をつき木の上からエアルを見守ることにした、彼の無事を祈って。


(てか、この縄早く解いてくれない?)

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