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子知る

幕間

 ん?

 どこへ行った?

 奴は時間停止で動けないはずだ……。

 なぜ、いない……。


「これは――」


 俺の腹に、剣が生えていた。

 ランヴェルの剣だ。


「ゴホッ……」


「君を殺す。でも、僕はやっぱり自分が正しいとは思えない」


「ガ、アア……!」


「僕はやっぱり間違っていたんだろう。そして、君も間違っていた。……この世に正しい人間は、もしかしたらいないかもしれない。それはスバルさえもね」


 く、そぉ……。

 いた、い。

 痛い。

 なんだ、この剣……。

 痛すぎ、る……。


「彼女は僕が悲しむと知っていてもどこかへ行ってしまう。エキュリソーは信念こそが正道と言っていたけど、それではただ自己中心的なだけだろう」


「だれ、か……。いない、のか……」


「それが人間の性だと割り切って思考停止するのは楽だった。でも、僕はやっぱり自分に嘘は吐けない」


 こんな、こんなカスに、俺の無双を邪魔されてたまるかああ!!!


「【かいと、う】、【ぼ、にゅう、せいせ……い】」


「僕は死なない。死ねない。スバルを必ず助ける。結局それが僕の結論だ」


 体が、動かない。

 まさか、スバル、か……!?

 馬鹿な……、スバルの血液が、俺を止めている、だと……!?


「天王ノイアルル。地獄で待っていてくれ」





「が、あ……」


「……死んだか」


 僕は天王の死体を見つめた。

 ここ最近は精神がおかしかった気がする。

 多分、エキュリソーさんが僕の精神を操作していたんだろう。


 僕はまず玉座の間を出て、仙孤さんを加勢に行った。

 仙孤さんは死んでいた。

 近くに氷漬けとなった女もいたため、相打ちだろう。


 王城の地下に入った。

 そこにはシルシフという女がいた。

 製薬に関わっていたようなので、殺した。

 他の地下にいた人間は全員殺した。


 そして、スバルを見つけた。


 彼女は骨髄だけの状態で装置に組み込まれていた。

 装置から外し、彼女が自分の肉体を治癒するのを待つ。

 治っている。

 治っているが、精神は戻らない。

 廃人のように虚ろな目。

 声を掛けてもうめき声しか出さない。


 彼女に服を着せ、王城の外に出た。

 これから、ゆっくり回復すればいい。

 ここは、僕らの終着点だ。

 だから、ここを始発点とする。

 終わったのなら、また始めればいい。


 終わりとは、絶望ではないからだ。

 また、新たな世界が始まる。





 天王が死んで数週間、世界は混乱に包まれた。

 あらゆる機械・魔導具は効果を失い、通信手段もなくなった。

 しかしもとの生活に戻るだけ。

 まだ文明が変わってから半年も経っていないことが功を奏したのだろう

 さらにその数年後、代替エネルギーが見つかった。

 発見者はただの研究者である。

 法制度も変わったことがある。

 SNSの台頭によりネットの危険性を知った国家は、今の内から法を整備し、いずれ訪れる第二のブレインに備えた。


 世界はノイアルルの登場によって大きく変わったが、それはあくまで文明を速めたに過ぎない。

 人間は皆が進み続けており、よりよい世界の創造に寄与している。

 ノイアルルの作った世界も、人間にとっては決して夢想ではないのだ。


 人間とは、そういう生き物なのだ。

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