我知る
久しぶりに会ったノイアルルはどこか不気味だった。
考えていることが分からない。
昔はノイアルルの思考を読めていたのに。
ノイアルルの精神は特殊だった。
普通の人間は水でできた波のように見える。
しかし、ノイアルルの精神は言葉を波のようにしていた。
だから思考を読めた。
それは今も変わっていないように思える。
だが、見づらい。
まるでなにかに覆われているような感じだ。
ランヴェルさんが一步前へと進む。
彼は【断罪】を発動する前に、ノイアルルへと話しかけた。
「天王、スバルはどこだ?」
「スバル? ああ、新薬か。地下にあるよ」
「っ! お前!」
「まあまあ、落ち着けよ。俺がなにか悪いことをしたか?」
「は?」
「確かに一人の人間を薬製造機に変えたが、それはより多くの人間を生かすためだ。最大多数の最大幸福。お前がやろうとしてるのは多くの人間を殺す行為だぞ」
「黙れ!」
「スバルは優しい奴だった。彼女がいたら、今のお前を止めるんじゃないのか? 復讐は何も生まないぞ。復讐したって、彼女は喜ばない。エキュリソー、お前もだ」
「ほう」
「俺の目的は全人類をシュミレーション世界で生活させることだ。水槽の中の脳をしってるか? 俺はお前の脳を保管していた。目的が叶えば、お前を復活させる気でいた」
「知らないわよ。どうでもいいし。私は復讐がしたいだけで、別に憎しみを晴らしたい訳じゃないのよ。ゲームみたいなものね。あなたはゲームを好きな子供に、そんなものは何も生まないと言い聞かせるの?」
「駄目だ。エキュリソーは無理だな、これ。性格が終わってる」
クソが!
ノイアルル!
分析は終わったぞ!
「あなた、骨髄にスバルちゃんを入れてるわね」
「……は?」
「いや? 入れてないが?」
「斬れば分かるわよ。骨髄で血液を作らせて治癒効果にあやかっているのね」
ノイアルルの思考を読めないのはその所為だ。
スバルちゃんの精神がノイアルルの血管内を流れているから、精神の波同士が干渉して読みづらくなってる。
悪魔化すれば見えるでしょうがね。
「……天王、僕は知っている。君の悪行を知っている。誰が君を褒め称えようが、君を許すことは絶対にない」
「ま、待つんだ……。あれはエキュリソーの戯言。虚言だ」
「……スバルは確かに一人の人間だ。一人を犠牲にして多くの人間を助ける。それは素晴らしいことのように思える。だが……」
ランヴェルさんが【断罪】を発動する。
そして、さらに一步前へと進んだ。
「その一人の人間は、誰かにとっては大事な人間である。たかが一人でも、その一人を大切にする人間がいる! だから僕は君を許さない!」
「クソがッ! 【解凍】、【母乳生成】」
ノイアルルが母乳ソードを作り出す。
二つの剣が、交差する。




