悪魔のささやき
チェルベッロの中心。
そこには周囲の景色に似合わない、西洋風な城があった。
あれがノイアルルの住処。
警備が数人いる。
「どうするのじゃ? 素通りはできぬぞ?」
「え、車で突っ込めばいいでしょ?」
「え?」
「エキュリソーさん、あそこには歩行者も多くいる。一般人が……」
「あなたの覚悟はそんなものなの? 一般人が死ぬからなに? スバルちゃんを救うためならなんだってできるでしょ」
「そ、それは……」
押せばいけそう。
「よく考えてランヴェルさん。この国にいる人間は全て敵よ。明らかに異常な技術があるのに、なんの疑問も持たずただ享受しいている。人間の犠牲ありきのものなのにね。異常に目を瞑り、自分の心に嘘を吐いている。そんな連中よ」
「……」
悩んでる悩んでる。
でも、覚悟を決めたようね。
くはっ、人の言葉に流される奴が信念?
笑っちゃうわね。
でも笑ったら作戦が失敗しちゃうかもだし、ポーカーフェイスを保ちましょう。
「……よし、行くぞ。行ってやる。スバルのためだ!」
誰かのためとか言って責任を押し付けんなよな。
まあいいや。
車道で加速をする。
手のひらを切り、波でさらに加速させる。
人を轢いた。
ランヴェルさんの顔色が青くなるのと裏腹に、車は血で赤く染まった。
もう一人轢いた。
また一人。
お、あれ妊婦じゃん。
ダブルキルだね。
「……天王を殺すため。……これは天王を殺すためだ」
ランヴェルさんがブツブツ呟く。
洗脳チャンスかな。
「そう。天王の所為よ。天王を殺せば全てが丸く収まる。天王を殺すのよ」
【断罪】は自分に嘘を吐けない。
なら、洗脳すればいい。
【龍玉】の真似事だ。
脳に波を流して精神を操作する。
あれほど強力ではないが、ある程度は誘導できる。
「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ」
錯乱しているわね。
視野を狭める。
それが【断罪】の効果を最も上げる方法。
そして、城に突っ込んだ。
よし!
城内に入ったぞ!
「警備が来る前にノイアルルを見つけましょう!」
「【断罪】」
ランヴェルさんが【能力】を発動させる。
ノイアルルがいる方向へ剣が動き出す。
つっよ。
こんなんできるの?
「さあ、こっちだ」
「……行きましょうか、仙孤さん」
「そうじゃのぉ」
城内を走る。
私たちの侵入を確認した警備兵がいたが、仙孤さんが殺す。
そうしていると、一人の女がやってきた。
「あなたたちをこの先に向かわせる訳にはいかないっすよ」
「ワシが足止めをしよう。先に行け」
「行かせる訳ないっすよ! あなたたちにはここで死んで貰うっす!」
仙孤さんが【仙術】を発動させる。
そして、女を凍らせる。
だが、すぐに動き出しそうだ。
「早く行け! スバルを救うのじゃ!」
「くっ……、分かった……」
「スバルと共に、また炎を囲もうぞ」
仙孤さんがいないのはかなり負担だが、ノイアルルはランヴェルさんがいれば殺せるはず……。
先に行くか。
その後も城内を進み、遂に大きな扉の前へと辿り着いた。
「この中に【断罪】は入りたがっている」
「……入りましょう」
扉を開ける。
そこは、玉座の間であった。
「エキュリソー? マジか……」
「ノイアルルゥ! 地獄から蘇ったぜぇ! てめぇをぶっ殺すためによぉ!! ランヴェルさん! やって!」
「人任せかよ」
そうして、最後の戦いが幕を開けた。




