RN:名古屋市出身の料理人
首都に向かう街道を車で走る。
運転はランヴェルさん。
彼は前世から車の運転免許を持っていたらしい。
「この車、結構速いわね」
「……」
「そうじゃのぉ。これが動かなくなってしまうとは、なんとも悲しいのぉ」
ランヴェルさんはだいぶ元気がない。
まああんな物を見たらそうなるだろう。
ん?
物?
者?
スバルちゃんは人間だからあれは者って言ったほうがいいかな?
「……後ろに車が張り付いて来てる」
「本当ね。敵かしら」
あれ、リムジンだ。
嫌な予感がするわね。
ヤバい奴とは戦いたくないわよ……?
「あのリムジン……。そうか」
ランヴェルさんがそう呟くと、突然車の扉を開けた。
そのまま、道路に飛び出した。
「ちょ、運転は!?」
「ワシがやろう」
「いや、仙孤さんでき……、ぐえあ!!」
運転が、運転が荒すぎる。
蛇行運転なんて次元じゃない。
「うはははは!! 楽しいのぉ!」
「うっぷ……、酔った……」
クソ!
こんな車に乗ってられるか!
私は自分の手を少し切った。
これは体力温存のために編み出した方法。
一部だけを悪魔化する。
「そして波を放つ!」
これはテレパシーの応用である。
私は他者に波を送ることでテレパシーを用いている。
つまり、悪魔化により強化した波を放てば、その衝撃波にて飛ぶこともできる。
「ランヴェルさん!」
ランヴェルさんは【断罪】によって生み出した剣に乗っていた。
彼の【能力】は追尾性能があるため、それでリムジンを追っているのだ。
そして、奴が現れる。
リムジンの車窓から身を乗り出し、ルーフに立った。
奴は剣を抜く。
前回はその瞬間に斬られた。
だが、そうはさせない。
切断される瞬間、ランヴェルさんと私自身に波を送る。
今現在、私たちの体は、斬られるという波を発している。
斬撃とは物質の変化だからだ。
物質が移動したり変化する際には必ず波が発生される。
つまり、その逆位相の波を発せば、移動や変化を封じることだってできる。
「……斬れない?」
「ランヴェルさん! 今の内に!」
「ああ!」
【断罪】の剣が奴の脳天をかち割った。
ように見えた。
しかし、割られたのは奴の脳天ではなかった。
「なんだ、これ……」
リムジンのルーフに、何かが散らばる。
黒い木の破片と米と鰻の蒲焼。
「ひつまぶしだ!」
「……」
ひつまぶしが突然現れた。
空中に、奴と剣との間に。
まさか……、こいつ……。
「名古屋市出身、だと……!?」
「……」
「強い、強すぎる……。だって名古屋市出身なのよ……? 勝てる訳がない……」
だからこんなに強いのか……。
さすが名古屋市出身。
強すぎると思ってたのよ。
「バレてしまったようだな。だが、その情報は俺の弱点にはなりえない。むしろ、お前たちが絶望するのみだ!」
「くっ……」
「【断罪】」
無茶だ!
ランヴェルさん!
まだ【能力】の分析ができてないのに!
それに名古屋市出身なのよ……!?
くっ……、だがやるしかないわね。
こいつを殺さないと、ノイアルルに到達できない……!
勝ってやるわよ。
だがそんな私たちの思いとは裏腹に、奴は空気に【能力】を発動させたのであった。




