製薬会社プレアデス
アクアリオ王国の首都はノース・クァーリーの北西に位置している。
そこから街道沿いに進んで行くと首都に辿り着く。
問題なのは、サウス・クァーリーとノース・クァーリーほどの距離がないため、列車が通っていないことだ。
「車の調達が必須ね」
私たちは夜行列車のなかで作戦会議をしていた。
「盗めばいいのかい?」
「そうね。ここまで来たら指名手配されようがノイアルルを殺してしまえばこちらの勝ち」
「そうだね。どちらにせよ、天王がいなくなれば車が使えなくなる。有効活用させて貰おう」
「でも、着くころには夜が明けてるわ。実行は今日の夜にしましょう」
すでに日の出が見えかかっている。
もうすぐノース・クァーリーに到着する。
そこは首都に最も近い都市である。
実行は夜にする。
その方がノイアルルにバレにくいでしょうし、あとは探し物があるからだ。
ノース・クァーリーにあって欲しいものが。
「ノイアルルに、どれくらい罪がある?」
「……分からない。会ってみないと」
ランヴェルさんの【断罪】は、対象が持つ罪の重さだけ強くなる【能力】である。
しかし、その罪はランヴェルさんの価値観によって左右される。
ランヴェルさんが悪だと思った相手にはとことん強く、善だと思った相手にはとことん弱い。
弱点は自分に嘘を吐けない、ということだ。
例えば相手を悪だと思い込もうとする、とかはできない。
絶対に心の芯で審判した結果だけが反映される。
そして、ノース・クァーリーに到着した。
それを見たランヴェルさんは一体なにを思っただろうか。
製薬会社プレアデス。
新たに生まれた会社。
私が探していた会社。
ノイアルルは絶対に作ると思っていた。
首都に最も近いこの都市なら、供給も早いだろうと思っていた。
完全なる回復薬。
スバルと名付けられたその薬は、中心が赤い錠剤だ。
飲めばあらゆる病気、怪我を治癒できるそうだ。
その効果を私は知っているし、ランヴェルさんはもっとよく知っている。
「すば……る?」
意中の女を錠剤に加工された男は、一体なにを思うのだろうか。
精神の波を見るまでもない。
憤怒。
抑えきれない激情が肉体を支配する。
精神は嵐のように波打ち、それが肉体を突き動かす。
彼は、プレアデスのビルに入っていった。
「【断罪】、【断罪】、【断罪】、【断罪】……!」
義憤なんて生やさしいものじゃない。
彼は、製薬会社プレアデスに勤めていた社員、総勢72名を殺した後にビルから出てきた。
その顔つきは、すっかりこちら側と同等のものになっていた。




