ベルフェゴールの弱点
二十二話
【仙術】は基本的に感覚で使っておった。
じゃが、天王の知識を見た際、思いついたことがある。
ワシの【仙術】、拡張性がありそうじゃのぉ。
もともと【仙術】や【龍装】、もちろんただの魔導具であっても、力の源泉は龍にある。
死した龍の骨や鱗を加工し、作り上げる。
現代の魔導具は基本的に死後何千、何万年も経過した龍の死骸を用いるため、天王が作り上げたそれを除いてそこまで強い効果を発揮しない。
じゃが、ワシらの持つそれは新鮮な死骸を使って作ったものじゃ。
故に、効果が強いものが多い。
しかしその力の源泉を龍に委ねている以上、その効果も龍が持っていた力と似ていく。
この技術を作っただけで満足してしまったが、恐らくもとの龍は幻術使いではない。
まあワシは龍同士が争い死んだ方の死骸を利用しただけじゃから真の力は知らぬが、幻術だけということもないじゃろう。
そして、天王が現れてから一つ思いついた。
虹の原理。
光がどうたらこうたらでよく分からんかったが、ワシの【仙術】と似ておると思った。
虹は雨が上がったあと、空気に散らばった水滴が光を反射させ、虹を生み出す。
ワシの【仙術】も、それを利用しておると考えた。
「……? 水? 一体どこから……」
「1m³に含まれる水蒸気量は15℃の湿度80%のとき10.24gほど存在する。ワシの幻術はそれを水滴にし、光を反射させる」
つまり、水蒸気を凝縮させる。
で、あるのならそれをさらに凝固させることも可能じゃろう。
ベルフェゴールは攻撃を必ず外させることができる。
しかし、攻撃ではなく拘束であれば可能だ。
「こ、んな、薄っぺらい氷なん、て……」
「うむ。これは時間稼ぎじゃな。ベルフェゴールの弱点はここからじゃよ」
「な、に……?」
ベルフェゴールが攻撃だと判断する要因はダメージの大きさではない。
ベルフェゴールは殺意に反応してオート回避とオート攻撃を行うのじゃ。
つまり、殺意がなければダメージは与えられる。
「殺意なくダメージを与えるなど不可能じゃよ。しかし、こういうのはどうじゃ?」
ワシは自身の尾を引き千切った。
これを販売員に巻き付け、列車の屋根に登る。
「ず、随分と風が強いのぉ……」
「ちょ、ちょっとまさか……!」
販売員を外に突き出す。
ワシの尾は特別じゃからダメージは特にないじゃろう。
じゃがこのスピードについてこれるのかのぉ……。
「ぐ、ぐああああ!!」
「ふむ? 見たことのない挙動をしておるのぉ」
ベルフェゴールがワシに向かって飛んできておる。
それを持っている販売員と共に。
どうやら無茶な挙動には限界があるようじゃのぉ。
だんだん離れていっておる。
「ほれ、片手で窓を外側から開けられるのかのぉ」
「お、おおお!! 掴んだ! ……え?」
あぁ、時間切れじゃのぉ。
販売員は落ちていき、地面に激突した。
このスピードでいったら死ぬじゃろうな。
「しまった! 【龍装】を失ってしもうた! ……これはエキュリソーのことを言えぬな」
「仙孤さん! 敵はどこだ!?」
「遅いわい! すでに列車から突き落としてしまったわい」
「そ、そうなんだ。……ああ、怪我をしてるね」
「この程度では問題ないぞ。応急キットだけ欲しいのぉ」
そうして列車はノース・クァーリーに到着した。




