【仙術】vs【龍装】
【仙術】、それはワシが一万年の年月で編み出した技術。
それは、自身の肉体を魔導具として改造し、外部接続を必要とせず龍の力を発揮する技術である。
【龍装】が外部に力を委ねるのと反対に、【仙術】は体内循環で全てが完結する。
「【仙術 tipe:β】」
ベルフェゴールを持った販売員がワシに突きを放つ。
じゃが、それは幻術じゃよ。
空振りによって生まれた隙を攻撃する。
「年季が違うんじゃよ!」
やはり、攻撃が当たらぬな。
ベルフェゴール、儀式系の【龍装】。
特定の手順を順番通りになぞらなくてはお互いにダメージをあたえられぬ。
しかし、手順を踏んだ後の約五分間、攻撃は必中になる。
さて、どのような手順を踏んでワシに攻撃するのかのぉ。
「お客様、幻術は他のお客様に迷惑となるためお止めください」
「ベルフェゴールは手順を踏めば幻術を使おうが関係ないじゃろう? どんな手順を踏むかは所有者に委ねられる。お主、見破られることを恐れておるのじゃな?」
「……」
つまり、この者はかなり単純な儀式を設定しておる。
それがワシにバレたのなら、【仙術】を使えるこちらが有利。
わざわざ話しかけてきたのはワシを惑わすため。
若いのぉ。
ベルフェゴールはいかに自身のルールを押し付けるかが最も重要じゃ。
「しかし、早く儀式を完遂させるべきじゃぞ? ここまで狭い場所で長物を振り回すのは賢いとは言えぬからな。それに、仲間を呼んでも構わんからのぉ」
「……」
お互いに距離を保ちながら睨み合う。
やはり、天王はスマホを普及させるべきではなかったのぉ……。
手を使わんでも電話ができるぞい。
『あーもしもし、仙孤さん?』
「もしもしじゃ。こちらに魔導騎士がおってのぉ、助力を頼みたいのじゃ」
『! 分かった! すぐに行く!』
「……ほれ、早くせんと2対1じゃよ」
「お客様、私が設定したベルフェゴールの儀式をお教えいたしましょう」
む?
なんじゃ?
この余裕は……。
まるで儀式がもう終わったかのような……。
「それは相手が仲間に連絡を取ること、です」
「……は?」
販売員がベルフェゴールを構える。
そして、突きを繰り出した。
「便利な世の中になりました。いつでも連絡を取れる。……おっと急所は外しましたか」
ベルフェゴールは必中攻撃。
しかしどこに当たるかある程度は制御できる。
「お客様なら知っているとは思いますが、この五分間は何度でも攻撃できます。そして、私は仲間に連絡を取りません」
自分がやったら、ではなく相手がやったら、とは予想ができなかったのぉ。
ワシの思考も凝り固まっていたことがよく分かった。
じゃが、すぐにランヴェルもやってくる。
それに【仙術】の新たな活用も試すいい機会じゃ。




