魔導騎士、参上!
ビジネスホテルを借り、今夜はそこに泊まることにした。
明日はこのまま北上し、ノース・クァーリーという都市まで向かう。
夜の領域であるにも関わらず、都市は未だ闇を知らない。
私はどうにもホテルで休まらず、コンビニを探して彷徨い始めた。
地図アプリを使えばすぐに出るが、この都市をもっと見てみたかった。
繁華街から少し反れると、住宅街に出た。
モダン風な家が建ち並び、それらの窓から部屋の明かりが漏れ出ている。
だが、コンビニがまったく見当たらない。
仕方がないので自販機でジュースを買う。
「ん?」
誰かがいる。
街灯に照らされた所に、黒いフードを被った男が一人いた。
ストーカーか?
しっしっ……。
「……こんばんは。スバルさんのお仲間さん」
「はぁ……。スバルさん? 知らない名ですね……。人違いでは……?」
「え?」
「うん?」
この男、帯剣している。
それにあの剣、見たことがある。
魔導騎士だ。
あれは【龍装】。
まともにやり合うだけ時間の無駄ね。
適当に受け流しましょう。
「いや、確か料理人からの話では一人だけおかしい奴がいるんだったな」
「え、いや。なんですか……?」
「それに、人違いでも魔導騎士は罪に問われない」
「ちょ、ちょっと!? き、騎士様を呼びますよ!?」
「残念だが、私が騎士だ」
そう言って男はフードを取る。
中から出てきた顔は知った顔だ。
ノイアルルが革命を起こす前からの有名人。
「ザンリュヌ様……?」
「私の名を知っているとは。では、これも知っているな?」
ザンリュヌは剣を引き抜いた。
当然知っている。
学院の高等部、一年前期での中間テストで出題された。
【龍装】、レヴィアタン。
それは、最強の魔導騎士に贈られる特別な【龍装】である。
「では、参る」
「くっ……」
刀身に触らないよう、距離を置く。
さっき買ったジュースを投げつけ、目眩ましにする。
だが、それもその場しのぎにしかならない。
「ほう。液体を投げつけるとは。やはり知っているようだな」
「なんで、あなたは天王に付き従っているんですか! 魔導騎士は魔導王直属の部下でしょう! 天王は魔導王を殺したんですよ!?」
会話で時間を稼ぐ。
なにかないか……?
いや、あれがあるが……。
できれば使いたくはないわね。
「天王は美味い飯を作るからだ」
「クソ! しょうもねぇ! 聞かなきゃよかった!」
確かに。
この世界に美味しい料理ってあんまりないのよね。
もちろん一流シェフが作った料理は美味しいけど、その分高いし予約もいっぱいだった。
手軽に最低限の味が保証される今の世界はとてもいいわよね。
「だから、君には死んでもらう」
「ッ!」
ザンリュヌはこちらへ近付く。
もう少しだ。
もっと引きつけろ……。
今だ!
「なに!? 自販機を!?」
よし!
逃げる!
レヴィアタンの【能力】は、刀身に触れたものを液状化させるというもの。
だから元から液体のジュースなどを投げると防げないし、重量が減るわけでもないから質量攻撃は有効だ。
そんなもので勝てる相手でもないが、逃げるだけなら……。
と、そこで気が付いた。
お腹に剣が刺さっている。
それは、重力に従って落ちようとする。
刀身に触れた腹部は液状化し、さらに落ちることで液状化が広がる。
「さて、天王様に報告をしなければ……。うん?」
私のお腹から炎が噴き出す。
地獄の炎だ。
それは、全身に伝播する。
炎が晴れると、そこには黒い外骨格があった。
「さあ、第二ラウンドよ」




