新たな都市
十六話
建ち並ぶビル群。
営業に行くサラリーマン。
制服で練り歩く女子高生。
荷物を載せたトラック。
その全てが、この世界には似合わない。
私たちが来たのはサウス・クァーリーという街。
いや、都市というべきだろう。
ニューヨークのようでもあり、新宿のようでもある。
いや、看板の文字が全て日本語であるところはかなり日本っぽい。
アメリカかぶれの日本人が作ったみたいな都市だ。
「こんなに、変わるものなのか……」
ブレインでこの都市に生きる人間が写真をアップしているのは見たことがある。
だが、どこか遠くの世界のように感じていた。
というか、実際に日本は遠くの世界だし。
しかし、これで実感できた。
ノイアルルを殺したら絶対にヤバいことになる。
「……お腹空いたわね」
「アクアリオ王国に入ってからは一度も街に寄っていないからね。適当に何か食べよう」
「あれに入ってみたいのぉ! あの面妖な店! 食べておるのはサンドウィッチか?」
「……仙孤さんってサンドウィッチ知ってるのね。いや、【龍玉】の影響……?」
「仙孤さん。あれはハンバーガーというんだ。ブレインでたまに広告が流れていないかい?」
「おお。確かにそうじゃな。向こうでは見たこともなかったからのぉ……」
「入ってみましょうか」
店内は完全にマクドナルドだ。
ノイアルルめ、パクったな?
モスはあるのだろうか。
バーガーキングは?
「エキュリソーさん、ハンバーガー好きなの?」
「そうね」
「意外だ。ジャンクフードを食べるイメージがないのに」
まあ私はハンバーガーを食べたことはないが。
私はあくまで悪魔であり、前世は存在しない。
だが、自身がそれだと気が付くまでは普通に前世を信じていたことからも分かるように、ある程度の記憶はある。
私を転生させた奴の記憶だろうか。
「ハンバーガーにポテトとコーラを合わせるのが一番おいしいんだから。カロリーと美味しさは比例するのよ」
「あ、あはは……」
「何にしようかのぉ……」
種類はかなり多い。
エビフィレオとかもある。
お、照り焼きもあるじゃん。
私は照り焼きバーガー、ランヴェルさんはマフィンバーガー、仙孤さんはシンプルなダブルバーガーにした。
「お会計、銅貨二十一枚となります」
「あ、キャッシュレスで」
「かしこまりました」
サクッと支払い、席に座って待つ。
注文はすぐに届いた。
「「「いただきます」」」
照り焼きうめっ、照り焼きうめっ。
ポテトうめっ、揚げたてじゃない。
コーラもうめっ、よく冷えてるのに氷が入っていないから薄まらない。
しかし、他の人が食べているのを見ると、それも食べたくなるわね。
穏やかな日常。
表面上はそう見える。
周囲の人たちも、みんな幸せそうだ。
誰かの犠牲の上に成り立っていたとしても、ここには確かな幸せがある。
だから、こう思う。
ああ、早くノイアルルを殺したいなぁ……。




