新薬
幕間
あと、ちょっとグロいかも。
やはり、俺が世界を支配するためには医療の高度化は必須。
だが、これは一朝一夕にはいかない。
まず、医者や薬剤師、看護師などの医療従事者を育成しなければならない。
しかし俺が医療に詳しい訳でもなく、見つけた転生者の中に医者だとかもいなかった。
いたとして、この世界特有の病気なども数多くあるだろう。
地球で人間が見つけた病気だけで数万はあると聞いた覚えがある。
そのいくつかはこの世界にもあるだろう。
だが、そんなもので医療の高度化とは言えない。
「だが、こいつがいればそんな問題とは無縁になるな」
俺は目の前にいる少女を見た。
彼女は涙を浮かべ、俺を見る。
料理人曰く、治癒の【能力】を持っているとか。
俺は手のひらを浅く切り、少女の前まで持っていった。
「おい、治せ」
「こんな……、無理矢理……」
「料理人、こいつの腕を落とせ」
「はい」
「……え? ぎゃああああああ!!!」
「うるせぇな。木の板をこいつの喉に詰めろ」
「はい」
これで少し静かになった。
しかし、斬られた腕が一瞬でくっついたな。
凄まじいスピードだ。
「治せ」
「……がッ」
俺の傷が一瞬で治った。
どこまでの傷を治せるんだ?
実験しよう。
「シルシフ、罪人と死体をくれ」
「どんなの?」
「罪人は適当に一人いればいい。死体は腐乱死体と白骨死体と、あと直近の【聖杖】で死んだ奴」
「りょーかい」
俺は人事のシルシフに実験材料を頼んだ。
彼女は頭のネジが外れていること以外はマトモな人間なので、重宝している。
あと、仕事が早い。
頼んでから数分で届いた。
さて、実験だ。
「……ふむ。流石に腐乱死体と白骨死体は治癒できない。が、死後数分の人間は蘇生できる。しかし【聖杖】で死ぬと蘇生不可、と」
実験結果によると、生きている人間であれば無条件に完全再生が可能だ。
脳を潰しても肉体が活動していれば治癒でき、肉体が活動していなくとも脳が動いていれば治癒できる。
治癒できないのは完全に死んだ者のみ、と。
「さらに触れていなければ治癒できないのか」
だが、逆に触れてさえいれば絶対に治癒できる。
例え、血液の一滴に触れただけであっても。
「おい、シルシフ。こいつはすごいぞ」
「そうだね……! 例えばさ、この子の血液を乾燥させて錠剤風にしたら、とんでもない事になるんじゃない……!?」
「さすがだな、シルシフ。じゃあこいつを調教しろ。ちゃんと治癒効果を発揮したらヤクを与えろ」
「オッケー! パブロフの犬みたいにしろってことね!」
「ああ。どれだけ肉体を損傷させようが、こいつは死なないようだ。条件付けが成功したら骨髄を摘出し、ただ血液を生み出す装置にしろ」
「おお、すごい! 無限に新薬を製作できる!」
「何日かかる?」
「うーん。数週間くらい? 設備も作るなら天王様の【能力】が必要かも」
「分かった。必要になったら呼べ」
クククッ……。
ツイてるな。
俺はつくづくツイてる。
こんな逸材が見つかるとは……。
料理人に感謝しなくちゃいけないな。
それと新薬の仲間にも、な。
「クハハハハハハハッ!!!」




