攫われたスバル
私たち三人はアクアリオ王国領の森で野営をしていた。
あの後、ランヴェルさんも合流した。
どうやらスバルちゃんがこっそり治癒していたらしい。
しかし、スバルちゃんの死体はどこにもなかった。
それを見ていた人が言うに、攫われたそうだ。
SNSに動画も上がっていた。
全体的にモザイクがかかっているが、確かに攫われている。
「……取り戻そう」
「ええ。死んでいなければ」
「……」
ランヴェルさんが物凄い形相で睨んでくる。
確かに失言だった。
反省しよう。
「すまぬ。ワシがいながら……」
「いや、仙孤さんの所為じゃない。あいつが強すぎたんだ」
「ほんと、異常な強さをしてたわね。なにを犠牲にあんな力を……」
「考えるのはよそう。どうせ碌でもない」
「確かに」
異常と言えばスバルちゃんの【能力】もそうだ。
あの時ランヴェルさんはほとんどミンチになっていた。
あそこから復活なんてありえない。
「まあ、スバルちゃんを助けるなら急いだほうがいいわね」
「そうだな。いくら傷を治療できるとはいえ、痛みがないわけじゃないんだ」
「そういう意味じゃないわよ。スバルちゃんをノイアルルに会わせてはいけない、という意味よ」
「どういうことだ?」
「私たち、ササショセの街で【能力】を封じる【能力】を見たじゃない」
「そう、だな。だが、あいつはまだ捕まっているはずだ……」
「そう。でもノイアルルには【魔導書】がある。それは部下を取り込み【能力】を抽出する神器」
「スバルの【能力】が消される……?」
「その可能性が高いわね」
【能力】のないか弱い少女。
それを殺すなど容易だろう。
だから急いだほうがいい。
理由はもう一つあるが、こっちは言わない方がいいだろう。
「所で、スバルちゃんの【能力】ってたまに使ってた?」
「スバルの【能力】は病気にも使えるのじゃ。病気になりかけの時期にこっそりと使ってはいたのぉ」
「ああ、この世界の医療はあまり高度ではないからね。僕らみたいな体が資本の冒険者が旅をするには、やっぱりスバルの【能力】が必要だった」
「ノイアルルが天王になってからもあまり医療は進んでいないから、そこは難しいんでしょうね。……まあすぐに医療の高度化も進む気がするけど」
「はは……。そうなったら天王を殺す方が悪みたいになってしまうね……」
ん?
ランヴェルさんが、殺すって言った?
スバルちゃん。
誘拐されてくれてありがとう。
おかげでノイアルルを殺しやすくなった。
ほんと、よかったわ。




