死ね! クズ!
疲れたので椅子に座って休む。
スバルちゃんが掛け布団を持ってきてくれた。
「ありがとう……。本気で疲れた」
「あ、あはは……」
「なにがしたかったんじゃ……?」
なにが、したかったんだろう。
よく考えたらランヴェルさんとスバルちゃんが付き合おうがどうだってよかったな。
ただ私は他人に嫌がらせをしたかっただけ、か。
「いや、淑女たる私がそんなことをするわけがないわ」
「「「淑女……?」」」
「皆して首を傾けてるんじゃないわよ!」
はぁ。
機械が淹れたコーヒーを飲む。
カフェインで落ち着く……。
気がする。
「で? アクアリオ王国にはどうやって入ればいいの?」
「三つの方法があるのじゃ」
「前も聞いたわ。でも、二つしか教えてくれないじゃない」
「うむ、普通に関所を通るルートと、天王が新たに作った空のルートじゃ」
「飛行機に乗るやつね」
「そうじゃ。しかし、飛行機はまだ上流階級以外は乗れぬ。天王のことじゃからいつかは解禁するかもしれぬが、そのころには取り返しのつかない事態まで進行しておるじゃろうな」
「だから陸のルートを選んだ。でも、もう一つのルートはどうなのよ」
「関所を通らずに行くルートじゃよ。つまり不法入国じゃな」
「おお」
不法入国。
なんてワクワクする響きだろう。
「おおじゃないわい。天王は技術によって人々の生活を支えている半面、犯罪者はとても厳しく取り締まっておる。捕まったらどうなるか分かったものじゃないぞ?」
最近、不可思議な噂がある。
アクアリオ王国にて捕まった者は、その先まったく見かけなくなるというもの。
ブレインというノイアルルが作ったSNS上では、『全ての犯罪者は秘匿死刑にされている』だとか、『人体実験の材料にされている』などに書き込みが時々ある。
だが、それらは全て眉唾の噂だ。
でもノイアルルならやりそう。
「まあ、そんなマンパワーを軽々しく捨てるような真似はしないか。命の再利用でもでき、な……」
あれ。
なにか引っかかる。
なんだ?
機械、魔導具。
そうだ。
私はそれが引っかかっている。
「動力源……。電気は通っていない……。命……。【聖杖】……?」
「! お主、なんと!」
「私たちが使ってる機械とか魔導具。これらのエネルギーはどこからやってくるの?」
「まさか……、そんな……」
「な、なにがですか?」
「スマホとかがエネルギーを使わないのは分かる。これは【龍玉】が見せている幻覚だから。でもコーヒーマシンだとか、料理を作る機械とか、明らかにそれだけでは説明がつかない物がある」
仙孤さんは分かっているのだろう。
これはもしかしたらの仮定じゃない。
間違いなく起きている。
これほどまでに大きなエネルギーを用いるために必要なことだ。
「……【聖杖】には、人間の魂をエネルギーとする力があるのじゃ」
「つまり、この便利さは人間の命を代償として与えられているってわけね」
「そ、そんな……!」
うん。
まあどうでもいいか、それは。
どちらにせよ、ノイアルルが作った機械に触れてるだけで寒気がするし。
「気にしない方がいいわよ。私もこれまでそうやってきた訳だし。あ、もうコーヒーが切れてるわね。また作りましょう」
「……」
「どうせ私たちがこれを使おうが使うまいが、世界はなにも変わらないわ。というかどうせノイアルルの事だし、人間牧場でも作ってるんじゃない? ノイアルルの【能力】で繁殖力を増強させた人間を飼育してるでしょうよ」
「僕らにできる事は、いち早く天王を倒す事だけ、か……」
「そ」
かなり落ち込んでいるな。
まあそっか。
自分たちが使ってた道具が人間の命を代償としてるなんて、普通は落ち込むか。
確かに。
「うわー、物凄い落ち込むわー」




