ピンチは唐突に
今、何話目?
さて、ピンチか。
『なんでこんなに狼がいるのよ!』
血の匂いに寄ってきたんじゃない?
『あ゛ああああああ!! 何も上手くいかない!!』
「グゥルルルル……」
おっと、よだれを垂らしながら近付いて来ます!
どう見ますか?
解説のエキュリソーさん!
『なんとかしろ! ノイアルル!』
任せてくれ。
俺にできることはまだ一つだけ残っている。
『なにをするつもり!?』
神様仏様、助けてください!
『神頼み!? それ残っているって言わないんだよ!』
もしかしたら、こいつら食中毒になって突然死ぬかも。
『祈る事しかできないってそういう意味じゃないから!』
逆に考えるんだ。
祈る事しかできない、じゃあない!
祈る事ができるんだッ!
『そんな事言ったって現状は変わらないわよ?』
……よし。
エキュリソー、奴らの脳内に話しかけられるか?
『できるけど……、言葉が通じるものなの?』
いや、普通に音割れ君が代を流して欲しいなって。
『普通の意味を辞書で引いてこい』
できる?
『無理。相手の精神に負荷を掛けるような事はできないの』
?
『不思議そうにするなっ!』
うっ……、負荷がっ!
『うるさい!』
「グルルルゥ……、グァラララァ!」
今にも襲いかかってきそう。
『なんとかして!! 安全を保証するんでしょ!?』
しょうがない。
「【かいとう】、【ぼにゅうせいせい】」
血を俺に塗りたくって、と。
『な、なにやってるの?』
いや、これなら俺が先に喰われるだろ?
そうしたら俺の前でエキュリソーが危険な目に遭う事はない。
『なによそれ! 結局助からないじゃない!』
いや、約束は守ってるし。
『詭弁よ! 詐欺よ! 訴えてやる!』
ここから無事に抜け出せたらな。
『死にたくなあああい!!』
「っ#######!!」
えっ誰?
誰か来た。
『だ、誰だか知らないけど助かったわ……』
そこのご老人。
随分とお強いではありませんか。
『聞こえてないわよ?』
まさか手も使わずに狼たちを追い払うとは。
誠に感服でございます。
『聞こえてないわよ?』
して……、その念力のような面妖な力をご教授頂きたいのですが……。
もちろん、ただとは言いません。
私めにできる限りの御礼はさせて頂きます。
『聞こえてないのはコイツの方だったか』
うるさい!
今の見ただろ!
狼が宙に浮いたぞ!
思考だって読まれてるかもしれんぞ!
うわっ、こっち来た!
『多分大丈夫だとは思うけど……、優しそうだし』
今、油断したね?
油断は命取りだよ?
『いや、この人上等そうな服着てるし、なんか神官みたいじゃない?』
邪教徒かもしれない。
きっと生贄にされるんだ……。
『あなた被害妄想が強いタイプね』
敵か!
味方か!
どっちだ!?




