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便利な世界

十話

 スマホが普及し始めてから三カ月が経過した。

 私たちはアクアリオ王国、つまりノイアルルが統治する国へと向かっていた。

 現在は、帝国と王国を繋ぐ関所の役割を持つ街を目指している。


「……このキノコ、食べれるかしら」


 鬱屈とした森の中。

 赤いキノコをチラリと見る。

 すると、空中に説明文が浮かび上がった。


『ヒバナタケ。熱に弱い毒を持っている。しかし炎に触れると爆発する。蒸し焼きにする郷土料理が存在する。旨味成分を多く含むため、一流シェフの間で高く取引される』


「うーん。一応持っていきましょうか」


 そうしていると、画面の端から通知が出現した。

 スバルちゃんから電話だ。


「もしもし」


『もしもし。野営地を見つけたので座標を送ります!』


「ありがとう。すぐに向かうわ」


 スバルちゃんがそう言うとすぐに地図上へとバツ印が付いた。

 そして空中に矢印が出現する。

 目的地までのルート案内だ。


「……癪に障るなぁ」


 ノイアルルが作った機械を使うのがすごいムカつく。

 便利なのが一番やだ。

 本当に便利。

 複雑……。


「はぁ……。ずっと同じこと考えちゃう。割り切ろう! って思えば思うほど、ね。人間っぽい。悪魔なのに……」


 ムカついて矢印を蹴飛ばすが、現実にあるわけではないので空振りに終わる。

 それが私の神経をさらに逆撫でする。


 クソがッ!

 調子に乗りやがって!

 ノイアルルのくせに!

 クソッ!


「はぁ……」


「相変わらず嫌そうな顔じゃのぉ」


「ああ、仙孤さん。……まあムカつくから。仙孤さんは……、随分と満喫してるけど」


「楽しんだ方が得じゃないかのぉ」


「それは分かってるのよ……。でも、理屈じゃないっていうか」


「難しいものじゃのぉ。……そろそろ野営地じゃな」


 そこは少し開けた場所。

 開けたとはいっても、木が少なく日差しが多いというだけだ。

 だが、野営地には丁度いい。


「あ、エキュリソーちゃん! 仙孤ちゃん! こっちに作ってあるよ!」


 スバルちゃんが手を振りながら私たちを呼ぶ。

 その背後には、小さな小屋があった。


「すぐ行くわ!」


 野営キット。

 それはもう野営と呼べるのは曖昧だが、小屋を作ることができる。

 それも数分で。


 気分が悪くなり、上を見た。

 葉の合間から見える空に、飛行機が飛んでいた。


 この世界はおかしくなった。

 どこまでも便利に、楽になっていく。


 私の想定は甘かった。


 ドーパミン中毒にして人間を操る?

 そんな生温い事にはならない。

 ノイアルルの目的は人類全体の弱体化だ。

 いずれ人類はノイアルルなしでは生命活動すら行えなくなる。


 そういった進化を促しているのだ。


 このままではマズいと危機感を持った所で、この技術を手放すことはできない。


 終わりの始まりなのだ。

 だから、ノイアルルを殺さなくてはならないのだ。

 私の生死をノイアルルに預ける?

 ふざけるなよ。

 私は生きる。


 絶対に生きてみせるんだ!

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