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殺した方が早いのに……

「……? 【能力】が……」


 ランヴェルさんが【能力】を発動させたと思ったら、発動していなかった。


「頑張れー、ランヴェルさーん。ふぁいとー」


「椅子に座ってくつろいでる……。正気……?」


「ほら、よそ見はよくないわよ」


 ウラリルトがランヴェルさんに切りかかる。

 どうやら攻撃用の【能力】は持ち合わせていないらしい。


 まあ【能力】を三つまで貰えるとはいえ、その権利を放棄することで【能力】の出力を上げることもできるし、何かしてるんでしょうね。

 まず間違いないのが、【能力】を発動させない【能力】。

 あと二つは不明。

 もしかすると、いくつかの【能力】を組み合わせているかもしれない。


 ウラリルトが使う得物は短剣。

 となると、効果範囲がそこまで広くないのかもしれない。

 接近するために短剣を用いている。

 あくまで可能性だが。


 対してランヴェルさんは武器を持っていない。

 それどころか狩りに行った際にも武器を持たなかった。

 もしかしたら、武器を作るような【能力】かもしれない。


 まあなんにせよ、【能力】を無条件で発動させない、というのは強すぎる。

 なにか特殊な条件や効果範囲がある可能性は高い。


「ランヴェルさん! 一旦離れて! 効果範囲を調べたい!」


「分かった!」


 ランヴェルさんがウラリルトに蹴りを入れ、離れる。

 十数メートルは離れただろうか。


「くふっ……、効果範囲なんてないってことを教えてあげよう。私の【能力】に弱点はない」


 しかし、ウラリルトは余裕の表情を一切崩さない。

 それどころか自分から離れていった。


 効果範囲が無いのであれば、ターゲティングだろうか。

 何か対象に印をつけて【能力】を防いでいる。

 その可能性が高い。

 だが、私は彼に触られるだとか、そういったことはされていない。

 仮にランヴェルさんの【能力】を防げても、私の【能力】も防がなければあそこまで油断できないだろう。


「ランヴェルさん! 取り敢えず殺せばいのよ!」


「僕は殺さない!」


 強情な奴め……。

 まあ私の【能力】は防がれてなさそうだからいいけど。


 私のは転生によって神から貰った【能力】ではない。

 悪魔として元来より所持する【能力】だ。

 ウラリルトの【能力】では防ぐことができない。


 ランヴェルさんが殺されたらウラリルトの脳内に音割れ聖歌を流して、その隙に殺せるわね。

 私は天敵だったわけよ。

 運が無いわね。


「ウラリルト、といったか。君は」


「……? 突然どうしたのかね」


「少し、分かって来たよ。君の【能力】が」


「へぇ……」


 ほう。

 まあ勝ったら勝ったで別にいいし、期待しておきましょう。


「分かったところで私には勝てぬがね」


「それはどうかな?」


 そう言って、ランヴェルさんは瞼を下した。

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