炎を囲む
ランヴェルさんが戻ってきたため、夕食となった。
彼は随分としょぼくれた顔をしている。
動物を狩れなかったのがそこまでショックなのか……。
もう何回目かの夕食だが、いつもこんな感じだ。
「ランヴェル、元気出してください! 大丈夫です! エキュリソーちゃんが美味しいスープを作ってくれましたから!」
「そこまでハードルを上げられるとちょっと緊張するわね……」
「あっ……、ごめんなさい!」
そこまで謝ることでも無いのに……。
まあそれを言えばまた謝り出すでしょうから言わないけど。
なんか、すごく面倒くさい。
人と会話するのってこんなに神経使うのね。
まあ出会って数日だからかもしれないわね。
問題は彼らとこの先も旅していきそうな所ね。
まあ私だけだとノイアルルは殺せなさそうだから仕方がないけど。
「それじゃあ」
「「「「いただきます!」」」」
「エキュリソーちゃんのスープ、美味しい……」
「それはよかったわ」
「ほんとに美味しいよ。僕らは誰も料理ができなかったから助かる……」
「……もう野菜の直火焼きは勘弁じゃ」
「あなたたち、よくそれで旅が出来てたわね……」
仙孤さんの持つ袋。
それには見かけ以上の物が入るらしい。
そこに鍋だとか食器はあるのに、誰も使っていなかったのだ。
ちなみに肉は使い切ったらしい。
精神の波が……。
やっぱりスバルちゃんが揺れているわね。
この感じは嫉妬。
ランヴェルさんが私を褒めた所為でしょうね。
ここ数日、毎日毎日こんな感じだ。
そろそろうざい。
ランヴェルさんもスバルちゃんの気持ちに気が付いていなさそうなのがたちの悪いことだ。
鈍感め……。
死ね! は言いすぎか。
くたばれ!
あ、そう言えばいいもの持ってたわ。
「見て、これ」
私は懐から指輪を取り出した。
赤子の時に母から貰った指輪だ。
捨てたくせにエキュリソーの名が刻まれた指輪を残していきやがった。
ああ、ノイアルルに思考を侵されてる……。
暴言がつい出てしまう。
「これ、私の恋人から貰った指輪なの」
「え……」
まあ有り難く使わせて貰おう。
嘘に。
スバルちゃんの精神が揺れる。
「今、彼女がどこにいるか、私には分からない」
「彼女ってことは、女性……?」
「ああ、言ってなかったかしら。私、同性愛者なの」
スバルちゃんの精神がだんだんと落ち着いてくる。
嫉妬は消えて、安堵が残る。
これでよし。
目的は達した。
「でも、彼女の居場所をノイアルルが見つけたら、確実に誘拐するか殺すかをするはずなのよ……」
「そ、そうだったんだ……」
「ま、だからノイアルルを殺したいなって話。別に暗くしたい訳じゃないからあんまり気にしないで。ちょっと言いたい気分になっただけ」
スバルちゃんの精神は完全に落ち着いたわね。
これで嫉妬から変な気を起こすこともないでしょうよ。
「エキュリソーさん。僕は正直、人を殺すとかに加担することはちょっと難しい。けど、君の気持ちはよく分かった。教えてくれてありがとう。僕らはいいチームになれる」
そう言ってランヴェルさんは私を抱擁して……、スバルちゃんの精神が波立ってる。
これで表に感情を出さないんだから怖いわよ。
ノイアルルなら女って怖ぁ、とか言いそう。
殺すぞ、ノイアルル!
その荒波は、ランヴェルさんが抱擁を止めるまでの十数秒間続いたのだった。




