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タンパク質が足りていない

 私たちが女子トークに花を咲かせていると遠くから黄色い何かがこちらへやってきた。

 仙孤さんだ。

 彼女は周囲の見張りと薬草集めをしてもらっている。

 薬草は回復薬の原料となるらしい。

 冒険者には必須級のアイテムだ。

 しかし、とても苦い割には効果が薄いという。


「ワシはのぉ、仙薬を作りたいと常々考えておるのじゃ」


 というのは彼女が私と過ごす最初の夜に言ったことだ。

 仙薬作りの道中でスバルちゃんたちと出会ったそうだ。

 彼女の言う仙薬とは、飲めば痩けた頬がたちまち肥え、あらゆる傷や病が一瞬にして治るような薬らしい。

 そんな物が作れるはずもないが、しかし太古の昔にはそれがあったらしい。

 そして、仙孤さんが長生きしているのも、その仙薬のおかげと語っていた。


「しかし、仙薬を作るにしたって、ノイアルルを殺してからね」


「ふむ……」


「だってあいつが知ったら確実に技術は盗みにくるわよ。それこそ、私たちを殺してでも」


「こ、恐い人なんですね……」


「ノイアルル自体はそこまで強くないわ。けど、あいつの精神はイカれた殺人鬼と同等か、それ以上。そこがこの上なく厄介」


 本当に最悪な人間。

 クズでカスで……。

 あ、そう言えばノイアルルに貸したお金、返してもらってない……!

 ああ。

 忘れてた……。

 やっぱりクズだ……!


「そ、その人は、どれくらい人を殺してるんですか?」


「え、それ聞いちゃう? まあ直接手を下したのは数人ね。けど、間接的な被害で言えば数百人に上るわ」


「数百人……」


 聖王が生贄に使ったのもカウントしていいでしょ。

 だってノイアルルが革命なんて起こさなければあの犠牲はなかった。

 スバルちゃんは悲しそうな顔をする。

 死んだ奴らを悼んでいるのだろう。


「せめて、亡くなった方々が私たちのように転生できることを祈ります」


「え? あ、うん。そうね」


 あのジェネリック神はそんなことしないと思うけど。

 悪魔時代の私はジェネリックと話したことがあるが、あいつもあいつでかなり性格が悪い。

 ノイアルルを殺したら次はジェネリックだ。


「さてと、スープが冷めちゃうわね。ランヴェルさんはまだかしら」


「見えておるぞ」


「え、どこ?」


「仙孤ちゃんは目がいいんですよ〜!」


「へ〜……」


 で?

 それ自慢?

 うっざ。

 死ねよ。


「あの様子じゃとランヴェルの奴、成果は無かったようじゃのぉ……」


「うー……。今日も野菜スープにパンね……。タンパク質が、タンパク質が足りない……!」


「タンパク質とはなんなんじゃ?」


「何と言われると説明が難しいわね……。人間に必要な五大栄養素の一つ、というのが説明? でも五大栄養素が何かと言われると……。うーん」


 こういうのはノイアルルが詳しいわよ。

 母乳の成分を随分と弄っていたし、多分タンパク質にも詳しい。


「まあ栄養素、ということか」


「そうね。そう覚えておけば問題ないわ。タンパク質は筋肉を作ったりする重要な栄養素だから、摂れるなら摂りたい栄養素よ」


 仙薬はタンパク質も含んでいるのかしら……。

 すごい栄養が詰まってそうだし、多分入ってそう。

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