転生者の時代
幕間
薄暗い小道で、二人の男が会話をしている。
一人は外套を深く被っており、顔が見えない。
もう一人も外套は被っているが、その間から覗かれる服は高価なそれであり、只者では無い事が容易に分かる。
「くくっ……、かの三王が滅びたとか」
深くまで外套を被った男が話し出す。
あくまで世間話だ。
「ああ、私はその国に台頭した新たな王からの伝言を届けに来ただけだ」
高価な服を着た男がそう返す。
外套を被った男はそう言われても余裕の表情は崩さなかった。
「で、その王様がわざわざ他国の裏事業に首を突っ込んで何のようだ?」
「料理人、と呼ばれる暗殺者をご所望だ」
「くくっ……、なんでもお見通しってか」
「ああ。お前たち、そいつを御せていないんだろう? 王はそいつを高額で買い取ると言っている」
「いや、金なんか要らねぇよ。あんたらの技術によって生れたもの。それをこっちで売らせてもらう」
高価な服を着た男の顔が少し歪む。
その情報は最高機密の筈だ。
それどころか件の機械を売る権利など与えてもよいものなのだろうか。
「少し待て、確認を取る」
高価な男は板のようなものを取り出した。
「くくっ……、それが件のブツか」
「黙っていろ。……ノイアルル様」
『ああ、なんだ?』
「例の件なのですが……」
『料理人か』
「ええ。金は要らないからあれを売らせろ、と」
『ああいいぞ。そもそもそっちでも販売を開始するつもりだった。ただ、専売にはできないことを承知させろ。無闇矢鱈に販売許諾を与えはしないが、こっちでも売買ルートを作らせて貰う』
「……いいのですか? こいつらは闇の住人ですよ?」
『構いはしないさ。料理人が手に入るならな』
「分かりました、では失礼します。……結論が出た」
「くくっ……、まあ大体は分かっているがな」
外套を被った男は得意そうに笑った。
「まず、専売にはできない。こちらでも独自に売らせて貰う。だが、誰彼構わず売買許諾は与えない。それでいいか?」
「くくっ……、十分さ。こういうのは早さが重要だ。老舗、だとかのブランドが付けば十分」
「では、これで。料理人の引き渡しは後に連絡をする」
「くくっ……。おおそうだ。一つ聞いてもいいか?」
「答えられる範囲なら」
「それは、なんという名前だ? これから売るんだ。それを知っておいた方がいいだろう」
「名前はそれぞれの売り場で決めていい事になっているが……、これらを総称するのであれば……」
高価な男は外套を被った男に言う。
それは、この世界にあってはならないもの。
「スマートフォン、そして略称はスマホだそうだ」
ノイアルルの支配が広がる。
料理人。
それは全てを引き換えに凄まじい料理スキルを手に入れた存在。
転生者だ。
彼は己の記憶、人格、感情、あらゆるものを手放し、この世界へと転生した。
幼い頃に両親を料理し、一つの村を料理し、そのあとに闇の組織に拾われた。
彼は、ノイアルルの手元に集められた。
転生者たちは、全員が同じ時に生まれた。
現在、15歳。
ノイアルルの革命を皮切りに動き出す。
転生者の時代がここに開幕する。




