龍王はクソ
「俺に娼館を見せたってことは、何かやらせたいことがあるのか?」
「……違う。……俺はお前を研究し、精神支配が解けた際の対処法を編みだそうと思っていた。……その強力な精神支配耐性は研究のしがいがあるからだ」
「思っていた……? まるで今は違うみたいな言い草だな」
「……ああ、違う。……お前の知識と能力、それがあれば他の王どもを容易に蹴散らすことができる」
他の王、ね。
魔導王と聖王の事だろうな。
だが俺が従う訳ねぇだろ。
「……この国の王は、三竦みの関係となっている」
「三竦み?」
「……ああ、龍王は聖王に強く、聖王は魔導王に強く、魔導王は龍王に強い。……だからこそお互いに牽制をしている。……俺が聖王を殺すことは容易だが、聖王が死ねば魔導王に俺は殺されるだろう。……そうやって秩序は維持される」
「その三竦みを俺が崩す、と」
「……そうだ」
確かに、俺の力があれば魔導王に勝てるかもしれない。
この前に戦った時は負けたが、もう一度戦えば負ける気がしない。
だが俺が従う訳ねぇだろ。
「……研究材料として拷問されるか、俺の部下として戦うか、二つに一つだ。……どちらを選ぶ?」
「部下になぁりまーっす!!」
「………………即答か」
「お願いしまぁっす!」
「……では魔導王を暗殺してこい」
「了解しました! 作戦を考えておきます!」
さて、どうしようか。
まあ魔導王を殺すなら毒だな。
なんかあいつ適応力が強いんだよな。
俺の技にも一瞬で対応してたし。
「……違う」
あ?
違う?
なにが違うってんだ。
今、考えてんだよ。
邪魔すんな。
「……今すぐだ」
「は?」
「……今すぐに魔導王を殺しに行け。……道案内はつける」
「今すぐ!? それってつまりこれから殺しに行けってこと!? 直で!? イカれ!? イカられてますか!?」
「……今すぐだ。……暗殺は早い方がバレにくい。……先手必勝だ」
「ま、待ってくださいよぉ~。せめて魔導王の特徴とか弱点とか教えてくださいよぉ~」
「……魔導王に弱点はない。……弱点が無い事が特徴だ」
弱点が……、ない……!?
どういうこっちゃ。
もう意味分からん。
クソだな。
「……魔導王は部下を本にできる」
「本?」
「……ああ、【魔導書】の1ページだ。……それを【魔導書】として保管できる。……そしてその部下が持つ【能力】を自由自在に扱える」
「なるほど」
「……そして奴がこの数百年で収集した【能力】の数は計り知れない」
「だから弱点がないのか」
「……そうだ。……あらゆる局面を様々な【能力】で対応してきた。……魔導王の万能性は俺の【龍玉】と相性が悪い」
確かに【龍玉】はただ人間を操るだけだもんな。
ある程度の不死性を人間に付加できても、あくまで人間を操るだけの【龍玉】では魔導王に勝てない。
「でも聖王は魔導王に勝てるんだろ?」
「……聖王は途轍もない力を放つことができる」
「力? 漠然としてるな」
「……そのままの意味で力、だ。……聖王は信者の魂をエネルギーに変換し、そしてある程度操ることが可能だ。……例えば相手を攻撃するエネルギーの球だったり、攻撃から身を守る盾だったり、そういうことをだ。……もし聖王が全力を出せば何物も止めることができなくなる」
「は? なんでそれにお前が勝てるんだ……? あ、そういう事か」
「……ああ、聖王のエネルギー源は人間。……つまり、俺の【龍玉】によって信者の魂を保護できる。……俺の前で【聖杖】は使えない」
それで三竦み、か。
これ、俺が魔導王をぶっ殺したらやべぇんじゃね?
三竦みが崩壊すればまず聖王は龍王に信者を奪われる前に超強力な攻撃を放つはず……。
巻き込まれて死ぬ可能性が高い。
これは……、かなりのクソだな。




