どこへ征くのか
やっとこさ四話。
ガタッ、ゴトッ、グラッ、バコッ……。
馬車つらい。
『なんで私まで……』
俺に聞くな。
てか初めて家から出たけど、クッソ田舎だったな。
『なんで私まで……』
よく馬車があったな。
定期便かなんかか?
御者は知らん人だし、護衛っぽい人もいるしな。
『なんで私まで……』
どこに行くのやら。
街か?
村じゃできない事でもすんのか?
『なんで私まで……』
botやめろ。
NPCかよ。
『だって私なにもしてないわよ? 無実、冤罪よ』
可哀そう。
『他人ごとみたいに言うなっ!』
ちなみに両親の荷物見た?
『多かったわね……』
どんだけ遠出するつもりなんだろうか。
『と言うかもうすぐ日が暮れそうだし野宿するのかな?』
ぽいね。
うん。
母乳飲みたい。
『最後の晩餐的な?』
そう。
でも無理そう。
『……なんで?』
明らかに避けられてない?
『馬車の対角線上にいるわね』
なんでだろう……?
『あなたが【能力】を使ったままだからでしょ!』
流石にお腹から足を生やすのは良くなかったか。
『マジでキモい』
おっと?
奇形児差別か?
『キモいのはあなたの思考回路よ』
思考恥ってな。
ガハハ!
『そうやってネタにする奴が一番差別的よ。死ねば良いのに』
すぐ来るぞ。
『ぎゃあああああ! 嫌だああああ!』
脳内で騒ぐな。
「ぎゃあああああ! いややああああ!」
声に出せば良いという問題ではない。
舌足らずでよく叫べるな。
両親が凄い顔で見てるぞ?
『……恥ずかしい』
分かるよ。
キチゲ、溜まってんだろ?
生理現象だから。
『んな訳あるかぁ!!』
ああ、日が沈みそうだ。
野宿確定演出だな。
夕焼けよ、虹色に光れ。
『神様がパチンカスだった世界に住みたくない』
大喜利するか。
もし神がパチンカスだったら。
『サイコロでゾロ目が出やすくなる』
人の腹部に足を生やす。
『そんなに虹色の夕焼けが見たいの!?』
見たい。
『てかさっさと足を消しなさい!』
いやあ、ピュアだなぁと。
『なにが?』
俺が本当にこんな【能力】を望んだと思ってるのか?
『うん』
フッ……、そんなわけないだろ。
俺がそんな無意味な【能力】を望む訳がない。
『……?』
俺の【能力】は誰かが欲しいと言った【能力】を実現する【能力】。
『ややこしいわね』
そして欲しいと言った誰かが信じ続けている限り継続できる。
つまりお前は信じ続けていたって訳さ。
あ、消えそう。
消えた。
「【ほぞん】」
『なにやったの?』
今の【能力】を保存した。
『いらないでしょ!』
いや面白いじゃん……。
『やっぱり望みそうなんだけど!』
失礼な奴め。
あっ両親が近付いてきた。
い゛き゛た゛い゛で゛す゛。
『でに濁点ついてるんだけど!!』
よく分かったな。
『あなた脳内で濁点をつけようとしてるからすぐに分かるわよ』
思考が……、盗聴されている……?
『アルミホイルでも巻いてなさい』
アルミないな。
足でいいか。
『やめなさい』
どこへ征くのか、作品の方向性が決まりました。
このサブタイトルはそういう事ですね。
ちなみに方向性が決まっただけで具体的な事は何一つ考えてません。