あなたはどんな【能力】を望みますか?
幕間
ある者は言った。
「転生者を殺す【能力】」
その者は、自身の障壁として最大となるのが転生者だと考えた。
あらゆる転生者に対する特効。
それを求めた。
一つの【能力】としては強すぎるそれを三分割し、異世界へと降り立った。
ある者は言った。
「料理が上手になる【能力】」
それはその者の悲願であり、それを叶える事が最大の幸福であった。
ありとあらゆる代償を支払ってでも、より美味しい料理を作れるように。
それは人として重要な物ですら捨て去り、異世界へと降り立った。
ある者は言った。
「差別を無くす【能力】」
その者は差別により虐げられており、そんな世の中は間違っていると信じていた。
全てを均し、ただ同一である事を望んだ。
その代償は個人で支払える程の物ではなかった。
その者は同士を集め、代償を支払うべく、異世界へと降り立った。
ある者は言った。
「誰にでも勝てる【能力】」
その者はただ勝つ事だけが生きる目的であった。
勝つ方法に拘りはなかった。
矜持も何も無い。
ただ勝つ為だけに、異世界へと降り立った。
ある者は言った。
「誰にも負けない【能力】」
その者はただ負けない事だけが生きる目的であった。
負けない方法に拘りはなかった。
矜持も何も無い。
ただ負けない為だけに、異世界へと降り立った。
ある者は言った。
「神に反逆する【能力】」
その者はただ見下される事を嫌った。
だからこそ、神の用いる力で、神へと反逆する。
その者は異世界へと降り立たない。
神にとって、最も不都合な存在を代わりに転生させた。
悪魔は、再び世界に舞い戻った。
彼ら、彼女らは【能力】を望んだ。
この先は神ですら知り得ない。
次から二章です。