逃避行、赤子付き
今、何話目?
『……うーん、どうやらこのお嬢様ご一行は亡命中らしいわ』
マジ?
『ええ、お嬢様がメイドさんたちと話してるのを聞いたわ』
亡命中かぁ……。
大変そうだな。
『他人事じゃないのよ?』
で、なんで亡命してるんだ?
『えっと……、クーデター? が起きたっぽい』
あやふやだな。
『しょうがないじゃない! まだ完璧に言語を理解できてないんだから!』
エキュリソー、もっと言葉を覚えろ。
『ノイアルルが覚えなさい!』
無理だって。
マジでなに言ってんのか分からん。
『才能格差ね』
クソおおおおおおおお!!
『ま、それはそれとして、私たちこれからどうしましょう』
どうするもこうするも、ユニコーンの馬車に乗っちゃったからなぁ。
このまま逃避行に付き合う他ないだろ。
俺たち赤ん坊だし。
『ここから逃げるって手は?』
このユニコーン空を飛んでるんだぞ?
『ほら、あなたの【能力】で良い感じに……』
四つん這いで歩けるようになってから言え。
『はいはい』
お嬢様の子供として平和に生き延びるのが一番じゃないか?
少なくとも後ろ盾はある。
『お嬢様に裏切られない限りは、だけど』
まあそのリスクは甘んじて受け入れよう。
今の俺たちには絶対的な安心を手に入れる事はできない。
取り敢えず今すぐ行動を起こす必要はない。
『それもそうね』
落ち着いたら逃亡も視野に入れておこう。
『了解よ』
ま、当分は優雅に空の旅を楽しもう。
『あなたに優雅とか言う感性があったのね』
フッ……。
ない。
『だと思った』
それはちょっと酷いんじゃないか?
俺に優雅な感性がある可能性だって否定できないだろ。
『あなたって常日頃から隕石が降ってくることを視野に入れてるのね』
そんな訳無いだろ。
可能性が低すぎる。
『でしょ?』
ムッキー!!
『お猿さん?』
ウッキッキッ!
バナナ喰いたい。
『ある訳ないでしょ』
いや、そこにあるじゃん。
『え?』
いや、そこにあるじゃん。
『いや、そうじゃなくて、どこに?』
はい、うっそ~。
『うざ』
期待したでしょ。
『する訳ないわよ!』
まあ、そうか。
『……暇ね』
しりとりしようぜ!
俺からな!
り、り、リン酸!
『ンジャメナ』
ナン!
『ん廻し』
シクロヘキサン!
『ンドレ』
れ、れ、レーン!
『ンゴロンゴロ保全地域』
きりん!
『ンドゥール』
る、る、る……。
負けました。
『最初からんで終わってるから負けてるわよ』
ば、馬鹿な……。
この俺が戦う前に負けていた、だと?
『ええ』
ふざけるなあああああ!!!
良いわけ無いだろ!
そんな事が!
あって良い訳が!
無いだろ!
『言い訳は終わりかしら』
くそおおおおお!!!
ヤバい。
ネタが尽きてきた。