3.おもちゃ epi.6:わがまま②
買い出しを終え屋敷に戻ると、ちょうど一台の車が門を入ってきた。
車は玄関前に静かに停まり、中から男の人が2人と女の人が1人が降りてきた。
「こんちはー!柊います?」
1人の男の人がにこやかにわたしと天音さんに挨拶をした。
目がパッチリしていて笑顔が爽やかな人だ。
「ええ、お待ちしておりました♪今開けますので中へどうぞ」
天音さんが玄関のドアを開けて中へ通すと、他の2人も続いて中に入る。
もう1人の男の人は身長が180cmくらいの体格が大きい人で、女の人は真っ白な肌に睫毛が長い美人な子だった。
うちの学校にも愛されキャラの可愛い子や、高嶺の花と呼ばれるような凛とした美人の先輩がいるが
透明感のある儚げな美人を目の当たりにしたのは初めてだった。
つい見惚れていると、彼女もわたしの視線に気づき目が合ってしまった。
「?」
彼女は一瞬不思議そうな顔をしたあと、ふわっと柔らかく笑った。
「はじめまして、藤咲茉白です。ここの新しい方ですか??」
小さな口から発せられる高く澄んだ声が心地良い。
「あ、いらっしゃいませ!じっと見てしまってごめんなさい、瑠李です。」
「瑠李さん、よろしくお願いします。」
そう言って茉白さんは屋敷の中へと入っていき、後ろ姿を見送った。
このとき、振り向いた彼女の瞳に鋭い敵意が宿っていたことを、わたしはまだ知らなかった。
「みなさんを客間にご案内してきますので、瑠李ちゃんは柊様を呼んできてもらえますか?」
扉を締めながら天音さんが言う。
「わかりました!」
買い物の荷物を置き、2階の柊様の部屋へ向かう。
流石に、お客様を待たせて変なことはしないだろう⋯と自分に言い聞かせながら部屋の前に立った。
——コンコンコン
ドアをノックするが、返事がない。
「柊様、お客様がいらっしゃいました」
「⋯」
また寝てしまっているのかもと思いドアを開けると、柊様はすでに着替えた状態でベッドに横になっていた。
「柊様、みなさんいらっしゃいましたよ?」
いつもは寝たフリをしていたりすぐに目を覚ますのだが、何回か声を掛けても起きる気配がない。
初めて見る彼の寝顔は穏やかで、どこか幼さを感じた。
(可愛い寝顔だな、いつもこんな感じならいいのに)
髪の毛がふわふわしていて、思わずそっと手を伸ばすと
急に腕を掴まれベッドに押し倒された。
「わっ!⋯っ起きてたんですか?」
「ほんとに寝込み襲おうとするとか、クビになりたいの?」
見おろしている瞳が薄っすらと開いていて、声も寝起きで掠れているようだった。
「違います!お客様が来たって呼びに来たら眠ってたので起こそうと⋯」
⋯
日差しが差し込む明るい部屋で、彼の顔に見おろされ、視線が長く絡み合う。
大抵の人が認める整った顔だなと改めて思う。
じわじわと自分の顔が赤らむのを感じながら
しばらくの間、時が止まったように感じた。
この状態、まさかキスされるのではないかと頭をかすめた。
「⋯キスされたいの?」
少しの沈黙の後、彼は片方の口角を上げながら言った。
心を読みとられたみたいで恥ずかしくなり、目線を逸らす。
「否定しないんだ?」
「ち、違います⋯っ」
苦し紛れに発する言葉。
柊様の目はじっとこちらを見ていて、次第に顔が近づいてくる。




