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3.おもちゃ epi.5:わがまま①



あれから、柊様は朝自分の部屋にいることが多くなった。



学校に行く前、休日の朝も

わたしが部屋まで"起こしに行く"のを待っている。


「⋯はっ⋯ん」


はじめの頃、キスを渋っていると『わたしからキスしないとクビにしてもらう』と言ってきた。

そこから毎回、起こしに行くたびにキスを繰り返している。



「だんだん慣れてきたんじゃない?」


皮肉を含んだような笑みで言う。

幸いと言って良いのかわからないが、服の中に手を入れられることはないのが救いだ。


「そっそんなことないです!変なこと言わないでください⋯」


「次はもっと激しいのにしてよ」


柊様はわたしの腰に手を回し、自分の方に引き寄せながら言った。


(激しいのとは?!)


「風呂場でしてあげたやつ。あれ。」


「お風呂場?⋯!?」


お風呂場で舌を甘噛みされた時のキスを思い出し、顔が一気に熱くなる。

口をつぐんでいると、柊様は冷めた表情で言い放った。



「慣れてきちゃったらつまんないじゃん。」


「つまんないって⋯」


この人は、あくまでも嫌がらせをしたいんだ。

絶対にノーと言えない相手が焦って困っているのを見て楽しんでいる。



「あー、今日人来る予定あるから、来たらまた呼んで。もう出てっていいよ」


「しょ、承知しました⋯」



言われるがまま部屋を出て、ひとまず深呼吸で自分を落ち着かせる。


(⋯いやわがまますぎないか!?)



こちらのことはお構いなしに、腰に回していた手を解くと部屋から出ていけと言われる。

人を振り回すことに長けているようだ。


今日は学校がないので、柊様は1日家にいるのかと思うと気が重い。

あとで誰かが来ると言っていたが、学校の友人が来るということだろうか⋯。



1階に降りると天音さんが待っていた。

今日は天音さんと買い出しの当番だった。


「天音さんお待たせしてすみません、すぐ着替えてきます!」


「いえいえ!まだ時間はあるので焦らずで大丈夫ですよ〜!柊様、起きられました?」


「あ、はい!一応⋯。今日は誰か来訪があるようで」


「了解です!寧音さんに伝えてくるので、瑠李ちゃんは着替えちゃってください」



買い出しをする時は流石にメイド服では目立つので、私服に着替えてから車で向かう。


車は葉室家専用の送迎ドライバーが運転してくれて、

スーパーもセレブ御用達でオーガニックや、珍しい品揃えの食品や生活用品を扱っているお店を見て回る。


どれも庶民のわたしにとっては新鮮で少し楽しみでもある。



「そういえば、最近柊様は毎朝いらっしゃいますね〜♪。少し前までは大体朝練の時間よりも早く学校に行ってたのに」


必要な生活用品をカゴに入れながら天音さんが言う。

毎朝部屋にいる理由に覚えがありすぎて、内心バレてしまってるのではと手に冷や汗が滲んだ。


「たしかにそうですね、あはは。でも夜は変わらず帰宅が遅いですよね」


「そうですね〜、小さい頃からご両親がご不在なことが多いから、門限破りは日常茶飯事ですけど⋯また変なトラブルに巻き込まれてしまったりしないか心配です⋯」


()()⋯?)


「あの天音さん"また"って、前になにかあったんですか?」


トラブルに巻き込まれたことがあるということだろうか。

あの意地悪な性格なら何か起こしそうだなとも思ってしまった。


「あんまり口外するなって言われてて詳しくは話せないんですけど、数年前柊様がすごく荒れた時期があってね。柊様って体があまり強い方ではなかったから体調崩しやすくて、その時にちょっと…」



反抗期だったのだろうか。

今も十分に荒れているように見えるけど、やっぱりわたしに対してだけなのかも知れない。


「体が強くないの、初めて知りました。」


「今はだいぶ良くなったって寧音さんが言ってました。学校も部活も行くようになって。きっと今日いらっしゃるお客様もよく一緒にいるご友人だと思うから、美味しいもの作ってもらわないと♪」


楽しそうに笑って話す天音さんを見ていると癒やされる。

そんな天音さんも近所の大学生に通っていて、卒業後は葉室家にしばらくお世話になるつもりだと帰りの車で雑談しながら教えてくれた。



しばらく先も、寧音さんや天音さんと一緒に仕事ができると思うと心から安心した。




⊹₊ ⋆ー寧音さんと天音さんー⋆ ₊⊹

寧音さんと天音さんは姉妹です。寧音さんとは7コ違い。

間にもう一人3コ違いの弟がいて、現在海外留学中。


天音さんはお屋敷の近くに通う大学4年生で、来年の春から葉室家の正式に従事する予定。

寧音さんたちも代々葉室家のメイドとして従事してきた家系なのだが、強制ではないらしい。



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