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3.おもちゃ epi.4:価値④



──そんなに世話したいなら部屋で世話してよ。


そう言ってわたしを部屋に引っ張った。



「待ってください、何するつもりですか!」


「あんま大きい声出すと寧音たちに聞こえるよ?あんたが部屋に押しかけてきたって俺が言えば、この屋敷にはいられなくなるかもね?」


「⋯っ」



また顎を掴まれ、彼は冷たい笑みを浮かべながら唇を重ねる。

怖くて、悪意を感じながらキスされることがこんなに辛いとは想像したことがなかった。


唇を割って舌が入ってくる感触に顔が歪み、また噛まれてしまうのではと手に力がこもってしまう。


「⋯っふ、⋯ん」



──ちゅ、ちゅ⋯


キスの音が響いて聞こえてくると、次第に恥ずかしくなり息苦しくなってきた。



「⋯これじゃ、世話してんの俺だね」


唇が離れたと思うと、次は手を引かれベッドの上に彼が腰掛ける。


「世話してよ」


「⋯?」


どういうことか理解できずに戸惑っていると、わたしの口に指を入れてきた。

ようやく言っていることを理解し、一気に顔が熱くなるのを感じた。


「むっムリですムリです!わたし⋯したことないので⋯失敗すると思います⋯?」


果たして失敗という表現で良いのか。

焦って口走ってしまう言葉に彼は一瞬呆然として、なぜか笑い出した。


「なに想像したの?あんた変態なんだね?」


とケラケラ笑っている。

からかっているのか、馬鹿にされているのか、余計に恥ずかしくなり


「からかわないでっ」


と咄嗟に言うと、ベッドに押し倒されわたしの服の中に彼の手が滑り込んできた。


「ひゃっ⋯や⋯」


「あんたに拒否権はないって、もう忘れた?」


また唇が重なり、舌を絡められる。

理不尽なことを言われているのに、何故か触る手が優しくて服の中に入っている手を抑える自分の腕に力が入らない。



頭が回らず、このまま流されてしまいそうになった時、彼は言った。



「明日から毎朝、こうやって起こしにきて」


「へ⋯?」


「返事は?」


「は、い」


理解出来ないうちに返事を急かされ、思わず"はい"と言ってしまった。

わたしの返事を聞いて満足したのか、その後すぐに部屋から放り出された。


ぼうっとしながら自分の部屋に戻り、言われたことの意味ををやっと理解して絶望した。

⋯きっとムリだと言っても、また拒否権はないと言われていたけど。



この時、初めて彼にあった時の「新しいおもちゃ」の意味を理解した。



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