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1.少女、祠を壊す

Twitterで流行ってる祠壊しムーブメントに滾ってしまい書き始めました。鉄は熱いうちに打て!ということで、お付き合いいただければ嬉しいです。

(神様なんていない。いるはずがない。だって)

 

 もしもいるなら、どうしてただ一人だけ優しくしてくれた彼女は、呆気なく病で亡くなった? どうしてあの屋敷に住む外道たちが、罰されずにのうのうと生きている?

 

(どうして、ただ必死に生きていただけの私が、こんな──)


 虚な目をした少女は、握った(くわ)を大きく振りかぶる。

 狙いは、眼前の小さなほこら

 

 鍬は見た目よりも重い。少女は後ろにひっくり返りそうになるのを踏ん張って堪え、なんとか振り下ろした。

 

 ぐしゃり。木がひしゃげる音がしたかと思うと、誰もいなかったはずの背後から場違いなほどのんびりした声が聞こえた。


「へぇ、壊しちゃったの? それ、()()()()()の祠なんだけど」


 人がいたとは思わず、びくりと肩が震える。振り返ると、一人の男がしゃがんでこちらを見ていた。すぐそばには蝋燭が置いてあるとはいえ真夜中の暗闇では、この男の髪の色も目の色も、その表情さえもよく見えなかった。

 

 ちろちろとした橙の光で、彼が怪しげに口の端を歪める。十代後半にも三十代前半にも見える彼は、不思議な清廉さ、そして色気を纏っていた。


「罰当たりだな。これは君、死んだね」


 くつくつと低く、喉の奥で笑うような声が聞こえる。彼の瞳の奥には、ぞっとするような冷たい光が宿っていた。背筋を指でつぅ、っとなぞられたかのような感触が走る。


──死、か。恐ろしいはずのその響きが、今だけは酷く甘美に聞こえる。少女は酷薄な笑みを浮かべ、口を開いた。


「別に良いよ。ちょうど、死にたかったところだから」


 目の前の男は一瞬きょとんと目を瞬かせると、吹き出したのだった。

 

「くっ……あははは! 何それ。ふふ、祠なんて壊されて、はて、どうしてやろうかと思っていたけれど……それなら、」


 詩を詠むかのように朗々と言い放った男は、少女に手を伸ばし──。


「死なせてあげないよ」


 そこで、少女の意識は途切れた。

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