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中国夜話 毛沢東異界漫遊記  作者: 藤原 てるてる
8/22

田中角栄を肴にの巻(八話)

へなへなと、毛沢東は老子に喝を入れられ、しょげ返ってしまった。

まったくもって歯が立たん。新中国建国のわしでも、赤子の様じゃたわいと。

鬱憤晴らしに誰かに当たりたい、そう思ったのである。

誰がいい、大物がいいな、この際は外国のにしたろかいな。

ここは総理、子飼いの周恩来に相談やな、ってな感じで……



毛沢東「おい、お前の手引きで老子様と謁見することは出来たがな、その……」

   「大恥を掻いたわい。陰陽二元論を教わったはいいが」

   「わしの色ボケが見抜かれて、喝を喰らったわい。主席に喝ぞ」

   「下界にいた頃は勿論、まさか天界でな、こいは青天の霹靂じゃて」

周恩来「毛大兄、諸氏百家の一人に会えただけでも、充分ではありませぬか」

   「そもそも、若返りの術、素女経の奥義を聞こうとすることが、すでに」

   「あの性書は、やはり、まずかったんでは、まして、老子様にとなると」

毛沢東「うん、今は大いに恥ておるわい。穴があったら入りたい」

周恩来「天界に来てまでも、欲あり。まあ、そのうちに昇華されましょう」

   「その、まだしも老子様だったからいいものの、これが孔子様だったらと」

   「大恥では済みませんぞ、日本で言うところの、あれもんですぞ」

毛沢東「ん、何、日本。そかそか、いい事を思い付いたわい」

   「我が国侵略の小日本めの、誰かに鬱憤晴らししたろかいや」

   「話はこうなったわいな。周恩来よ、誰がいい?」

周恩来「したらば田中角栄は如何かと。中日国交正常化の井戸掘りの恩人ですけど」

毛沢東「いや、あの男は農家の出じゃ。わしと同じで、土の味を知っておる」

   「米一粒の有難味をな、わしかて麦の落穂拾いに精出したもんや」

   「それに、わが中国の白酒をこよなく愛してくれておる」

周恩来「でも、大兄、あの男は中国侵略でやって来ましたぞ」

   「はたして人民に、いかなる所業をしでかしたか、この際、聞いてみては」

   「それに、まさか東条英機と喧嘩する訳にもいきますまいに」

毛沢東「田中先生には大恩がある。中南海での小一時間のやり取りが懐かしいわい」

   「いい四川のマオタイを呑ませてやったわ、75度のな」

   「今から思うと、泥酔いさせて戦時賠償するなんて、言わせれば良かったな、はははっ」

   「今のは冗談や。先生は苦労人だ。すぐ中国に飛んで来てくれた」

   「お互いにとっての、まさに大同小異についてくれたのう」

   「では、やんわりと、大陸での悪行、いやいや所業について聞いてみよかいな」

周恩来「私の思いのなかでは、国交正常化の調印式の時、思いっ切りと握手されました」

   「癌で病身でしたぞ。いやー、本当に嬉しかった、これで中日が始まると」

   「あの、ご迷惑をお掛けして発言には、怒り心頭でしたがな」

   「まあ百歩譲って、あれは日本政府の原稿の、そのまま読みとしましょう」

   「田中先生の真意を確かめてはくれませぬか。あの下りで癌が悪化しました」

毛沢東「わかったわい。三八銃が何人に命中したか、娘子どれだけ泣かせたか、聞くわいな」

   「周恩来よ、お前の為にも田中先生と会う事とする」

   「近いうちに手筈を頼むぞ。やんわりと、聞いてみるわい、待っておれ」

周恩来「はあ、お任せくだされ……」



毛沢東は、一度だけ田中角栄と会っている。

国交正常化交渉がまとまるとみて、田中ら三人を中南海の書斎に招いた。

部屋の前で立って出迎え、開口一番、冗談で場を和ませた。

愛用のタバコには手を触れず、終始、大布団の様に振る舞った。

田中は会見の後、廊下で鼻血を出した。毛沢東の風圧にやられたのである。

さて、今度は天界での会見となる、喧嘩にならなければよい。 

まあ、二人は色好きである……    

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