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中国夜話 毛沢東異界漫遊記  作者: 藤原 てるてる
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老子に喝くらうの巻(七話)

毛沢東は、いよいよ古代中国の性書について教わるときが来たか。

「素女経」、これは紀元前二千五百年ころの、房中術である。

皇帝の黄帝は、不老不死を願い、女仙二人に指南を受けた。

その一人が素女であり、玄女と共に夜な夜な秘術を施したのである。

素女は白を意味し、音楽の巧みな神女であり、四川は成都の出だらしい。

玄女は黒を意味し、戦術にたけた神女であり、南方の出か。

陰陽を司り、二人で一人とも言える。


毛沢東は、養生の為に娘子をはべらせ、この「素女経」を実践させたのである。

さかのぼれば、かの黄帝は、この術が故か酒池肉林をこなした。

稀代の英雄、色を好むか。その奥義について、赤い皇帝も欲して止まずなり。

さあ、老子様に、問うてんか……



老子 「毛よ、不老不死を願うは、これ道理なり」

   「人の世は陰陽に基づく、男は女から若返りの元をもらう」

   「女も然り。この陰と陽とで結び付くのが自然の摂理なり」

   「互いに欲する事により、一つになるは必然じゃ」

毛沢東「仰せの通り。私は下界にいた頃は、もっぱら女に頼っていました」

   「あの書を精読させ、技を身に付けさせる事ばかりでありました」

   「今思うと、まったくもって片手落ちでして、その、奥義が知りたくて」

老子 「でもな、毛よ、この天界にて知ってどうするのだ」

   「若返り術は、下界だからの事じゃ。もう、間に合わんぞ」

毛沢東「私は、かの黄帝の様に女仙に会いたくてなりません」

   「色の白い、あの素女に極楽に連れてってもらいたかった」

   「老子様、天界では誰にでも会えると聞き申した、会えませぬか?」

老子 「つまり、若返りぬきでの戯れの為か?」

毛沢東「はい、私めは、その、欲が深すぎてなりませぬ、下界が恋しくて……」

老子 「喝! 毛よ、はき違えておるぞ。お前は欲に溺れておる」

   「いいか、色欲とは下界故の方便ぞ。天は子を作る為に悦を与えたんじゃ」

   「本当は子が主で、悦が従なのじゃ。この悦を与えたからこそ、人の世は続く」

   「大事な事には、悦が付くのだ。食うのも悦、寝るのも悦、わかるな」

   「悦なしでは、人の世は成り立たん。だが、悦は悦なのじゃよ」

   「やはり、お前には『素女経』を語るに値しないと見る」

毛沢東「あの、私の待女達では、技不足かと、で、もっと……」

老子 「喝!喝! お前は皇帝の様に後宮に浸かりたかったのだ」

   「今は天界におるではないか、未練を絶ち、己が修行をせよ」

   「したらば下界での悦なんぞ泡のようぞ、天界の悦こそ本物ぞ」

毛沢東「老子様、素女には、やはり会えませぬか、話だけでもと……」

老子 「毛よ、では、お前の天界にての修行の出来で、わしが取り持ってもよい」

   「相当の修行ぞ、いいか、下界でのあらましを振り返れ」

   「数多の民以上の涙を流せ、自身を振り替えるのじゃ、その後でじゃ」

毛沢東「素女様に、よろしくとだけでも、お伝えくだされ」

老子 「まだ早い、まだまだじゃ、毛よ、まだまだじゃ……」

毛沢東「……」



そもそも、老子様に「素女経」の奥義を聞くものではない。

大思想家に礼を失するどころではない。

皇帝に手ほどきをした、あの、素女様にこそ伺う事である。

さて、毛沢東は女仙に会えるのだろうか……

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