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2-2

 「ふぅん…部長がそんなことをねぇ…。」


 昼休みが終わり、大分人が少なくなった生協食堂でカレーをぱくつきながら、東二が答える。昨日の部長の話を聞かせた後の反応だ。

 「それってつまり、23っていう数字はうちの大学を指すと同時に、ミス研の中に連続殺人犯がいるっていうことも同時に示唆している…ってこと?」

 もう食事を済ませ、コーヒーを飲んでいる美菜がそう言う。

 「馬鹿言うなよ、誰もそうは言ってないだろ。たまたまだよ、たまたま。23って数字が偶然意味を持っちまってるだけさ。殺人犯がなんかミステリっぽいことしたくて、なんとなく書いた数字かも知れないだろ。ってかそっちの確立のほうが高けぇ。なんかしらの意味を持たすような頭持ったやつが、殺人なんてするかよ。つか美菜、疑ってんの?俺らの中に犯人がいるってさ。」

 若干イラついたような剣幕で、金髪をいじりながら東二が言う。

 「そんなこと思ってないよ!ただ言ってみただけじゃん…。」

 東二の態度に少しばかり委縮した美菜がぼそぼそと呟く。なんだか険悪なムードになりつつあるで、クッションとして私は皐月に話を振った。

 「皐月はどう思う?23について。」

 話題を振られた皐月が若干のタイムラグを経て、答える。

 「…あんまり興味がないわ。」

 「おい、そりゃねーだろ皐月。なんかあんだろなんか。俺ら殺人犯の容疑者にされかねないんぜ?」

 東二が皐月を捲し立てる。皐月が少しばかり迷惑そうな表情をしているように私には見えた。

 「…あえて言うなら、23に仮に意味があるとして、やけど、ミス研の中に殺人犯がいる可能性は高い。」

 「は!?」

 東二と美菜が同時に声を挙げる。

 「…23という数字、確かに部室番号やけど、古い部室番号。2年前部室練は改築されて、今のあの部室の部屋番号は505。部長が23号室というワードを今でもつこうてるから私達もあの部屋を23と呼んでるけど、正確には違う。仮に外部の人間が私たちミス研に殺人事件に関して何らかの注目を集めさせたい、思うたら505と書く。このミス研は部長が作ったものやし、OBの存在は許されへん。ここで問題になるのが、根本的なこと。何故わざわざ自分が怪しまれる可能性を秘めた数字を殺人犯は現場に残すのか。私はこう思う。ミス研の中にいる犯人の、ミス研に対するメッセージだと。


                   『気付け』


これ以外、私は上手く想像できない。勿論他にも様々な可能性があり、間違いのない論理展開をすることは、現時点では不可能。情報が少なすぎるし、今ある情報もひどく不確か。でも私は2年間、このミス研のメンバと時間をある程度共有してきた。その経験は警察では絶対に手に入らないデータ。そのデータから考えるに、こういう結論に至る。感情を移入してしまっている、ひどく客観性が欠けた結論やと思う。でも私はこれが一番イメージし易かった。」

 東二も美菜も絶句している。表情にこそ出さないが、私もそれは同じだ。普段皐月が喋ることなど滅多になく、口にすることと言えば、「はい」か「いいえ」だ。その皐月がこれだけの言語を口にする、ということは、それだけこのミス研の状況がどこか平常とは確実に異なっている、異常な状態に陥っていることを示している。

 「皐月がそう言うなら…力いれて考えなきゃならねぇようだな…。」

 東二が険しい顔をして言う。


 「――――この中に、このミス研の中に、犯人がいるかもしれねぇってことを。」



 やっと、ここまで、きた。


 ここから、始まるのだ。


 殺人鬼たる私主催の、平凡なゲーム。

 

 犯人探しの、凡夫なゲーム。


 いつも通り、リラックスして頑張ろう。


 平和で、穏便で、安穏で、ゆったりとした、何も変わったことは一切起こらない、穏やかな日常を、


 守るために。 


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