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1-3

 私の名前は九条静香。京都市内のはずれにある私立大学に通っている。現在2回生。元々東京の出なのだが、一念発起、いっちょうやりますか、という感じで関西方面に出てきた。高校は東京の進学校に通っていたので、当然のようにそのまま東京のどこかの大学に進学するのだろう、と思っていた浅はかな両親には猛反対を喰らった。私、大学は京都にするよ、と言ったやいなや、なんで京都に行く必要がある、東京で、このまま実家にいながら通えばいいじゃないか、と正論をかざす父親や、静香ちゃん…この家がそんなに嫌いなの?と涙ながらに同情論を行使してくる母親を振り切るのには苦労した。さすが曲がりなりにも私の両親、当たり前のことを言うなぁと思ったが、このまま何もせずにいたらこの家からは、東京からは、死んでも脱出できない、と感じた私は、京都の抹茶スィーツ特集!やら、京都、長屋で毎日をほっこり暮らす。みたいな普段なら読んでるだけで吐き気を催してくるような雑誌を山ほど購入して、京都で暮らすことがいかに楽しいか、毎日が充実するかを両親に力説した。それでも、そんなに京都が好きなら俺が月1で連れってやる!あらあらそれは楽しそう、お土産たくさん買えるわね、と今度は両親がトンデモ理論を提案し、納得してくれなかったので、私は奥の手を出した。

「私は本当の目的はまた別にある、私は神社仏閣、仏像マニアなのだ、フェチなのだ、愛しているのだ、性的興奮を阿修羅像に覚えるのだ。仏像なしでは生きていけない。このまま東京にいるくらいだったら、進学しないでいっそ仏門に下る覚悟がある。」


 この発言をした際両親があれ…娘をこんな風に育てた覚えはないんだけどな…まいっちゃったなぁ…という表情をしたことを私は忘れない。かくして今でも私は食べたくもないスィーツを楽しそうに食べている写真を月1で両親に送り、住み辛いレトロな(大家さんに申し訳ないので、私の知る限りの最善の表現を使っている)長屋に住み、月末になれば仏教美術の書籍類が大量に東京から送られてくる、という生活を2年続けている。その中には両親が書いたと思われる手紙も入っていたが、一度も読んだことはない。本棚もそろそろ限界なのでである。私はただ人口と気候の観点から京都に住みたかっただけなのに、人生というものは制約を色々受けつつ、その中で自分の生き方を選択しなければならない面倒なものらしい。



 あの両親ときたら分かっていない。

 いかに東京には人が多いのか。人間と一緒に生活する、ということがどんなに苦痛なのか。人という生物が私の視界に入り、脳が、それはニンゲン、という生物だよ。と認識するたび下してくる命令に対してどんなにに我慢をしているか。時にはその命令を無視できなかった時の事後処理にどんなに苦労しているか。そしてその後に訪れる満足感がどんなに素晴らしいものなのか。

 あの両親は全然――――――分かっていない。

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