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他人事《ひとごと》ではございません その3

「なにが指定した場所に来い、だよ。」

指定された場所に行ってみると、そこは市役所の前だった。


なにか期待している部分があったのは認める。

浮かれるというわけではないが、女性と会うのだから、

少なからずデート的なことになるのではないか、と。


そうでないにしても、まずは会食などをして、親睦を含めていくとか。

そういったことが必要だと思う。


ただ、もらった書類を見た限りでは、そんな予定はなさそうだった。

それでは、この後どこに連れて行かれるのだろうか。


そもそも、やっぱり結婚というのは、好き同士がするもので、

恋愛の後にゴールインするものだと思うんですよね。


なんて乙女みたいな思考回路をしているオレ。

うーんピュアだねキミ。


待ち時間がヒマすぎて、わけのわからないことを一人で考えていると、

ようやく約束の時間になった。


そう、オレは時間より早く到着しておく性格。

そして、MIB(メン・イン・ブラック)風の黒服の二人は時間ピッタリに現れた。


「よし。時間通りだ。行くぞ。」


お前、どっちかっていうとそれ遅刻だろ。

と、思いながらも、一緒に市役所の中に入る。


いや、市役所なんかーい。


なぜ外で待たせたのだろうか。

理解に苦しむ。

最初から建物の中で待ち合わせすれば良かったのではないだろうか。


不満がありつつ、市役所内の待合所に案内される。


相手は既にそこにいた。

まあ当然と言えば当然なのか。

だって黒服のやつ時間ピッタリにくるんだもん。

こうなるでしょ。


相手の女性には、両親と思わしき男女と、さらに二人の黒服の女性がいた。


黒服はまあ、こっちにもいるからそういうことなんだろうけど、

ご両親も一緒かあ。


女の子だからね。当然だよね。

ちょっと甘く見ていたというか、認識が甘かった。

オレは一体今日なにしに来たんだろうな、とちょっと思った。

ピクニック気分というか、まだどこか他人事のように思っていた。

そうだ結婚するんだよな、オレ。


黒服たちは、二人を引き合わせることに成功した。

次の任務は婚姻届の提出だ。


「それではこちらに記入してください。」

黒服から差し出されたのは、なんと婚姻届だった。


え?出会っていきなり婚姻届なの?マジぃ?

なんて思うオレだったが、そんなことはお構いなし。


届け自体もささっと記入を済ませ、窓口に提出。

何の感慨もないというか、なんというか。

これで良いのか?という非常にアッサリしたかんじ。


「はい。これで受理されました。ご結婚おめでとうございます。」

受付の女性が、非常に機械的にそう言った。

うーん。これはどうしたら良いのだろうか。

特にうれしいとも、なんとも感じない。

これで済んでしまったのか?というあまりのあっけなさに拍子抜け。


すると、相手のご両親がオレに近づいてきた。


「あの、ウチの娘をどうか、よろしくお願いします。」

深々とお辞儀をするご両親。

そんな、マジか…。


会って間もないオレに、大切な娘さんを預けてしまうというのか。

いや、そうせざるを得ないのだ。

なにしろ、法律で決まってしまったのだから。

国からの命令が来てしまったのだから、従わざるを得ないのだ。


ご両親からしたら、さぞツライだろうな。

こんなわけのわからない男に娘をやらないといけないなんて。

俺が両親側なら、こんなことまず言えないと思った。


「あの、俺なんかでスミマセン。精一杯がんばりますんで!」

なんとか言葉を捻り出した。

ご両親は笑顔で「ありがとう。」と言ってくれた。

少しは安心してもらえただろうか。


ともかく、オレは結婚してしまった。

なにも知らぬ相手と。

これから一体どうなるのだろうか。

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