2 正に元凶とも言える彼の微笑を理解せよ
木村が大学友人第一号ならば、赤崎は言うなれば私の大学友人第零号である。
私は彼のことを積極的に友人とは呼びたくない気持ちが強いが、私と彼の関係性を簡潔に述べようとすると友人、としか言い表せないのだから複雑な気分だ。強いて言うならばライバルといったところだろうか。私が遊びを主催すればすぐに嗅ぎ付けてメッセージを送ってくるし、彼もまた何かを画策すれば私に嗅ぎ付けられ、嫌々私に事の次第を話す。どれだけ私が赤崎を嫌っていても、まず会って、色々話すのは彼であった。
「――中島くんは、僕のことが好きなのかな?」
赤崎が冗談混じりにそう言ったことがある。冗談じゃない、と返すまでに二秒もかからなかった。
それを聞いた彼は例の不敵な笑みで私を見つめ、自身の髪を指で弄った――赤崎のぐるぐるに絡まった天然パーマは、それだけで彼の醸し出す独特の雰囲気の牽引役を担っていた。
頭髪だけではない。黒と深緑を基調とした服装、それにプラスして登山リュックを背負うというファションは恐らく世界のどんな大都市でも流行していないだろう。間違いあるまい。例の微笑と合わせて、ますます赤崎の胡散臭さが高められていた。
胡散臭さ――赤崎の佇まい。
換言して、何となく浮世離れしているとも言える。
彼の話す一言一言がとても重要なことに聞こえてくるし、意味を持っているように感じてしまうのだ。勿論そんなことはないはずだとわかっているので、私は赤崎の語る一字一句をそのまま半分、言わば『零点五字零点五句』として受け取るように努めていた。それを赤崎に言うと少しだけ彼は悲しげな顔をしたが、それだって多分、気のせいに過ぎないのだと思う。