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妖魔戦記  作者: ぴろりん
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第5話 火造り(ひづくり)

今日は、日曜日、高校は休みだ。日が昇る前から、鍛冶場で、炭に火を入れる。

神棚には、造込み(つくりこみ)・素のべ が終わった、2本の日本刀がある。

両方とも四方詰めで造られた、刃渡り60cm程の手の込んだ刀身だ。


今日は、火造り(ひづくり)、焼き入れ(やきいれ)を行う。

あきらそらに分かれて、それぞれで行う。


「うん?そら水を汲んできたのか?」

「ああ、甲賀神社の神水だ。今日は、焼き入れがあるからな」


ドバドバと水桶に神水を注ぐ


「今日は、匂出来においできで、焼き入れをやってみる」

「そうか、俺は、いつものように沸出来にえできで、焼き入れをするつもりだ」

「そうか、じゃあ、いつものように勝負だな?」

「ハハハ、ようやく売り物ができるようになった小僧が言うじゃねえか、よし、勝負だ」

「そうだな、もし、俺が勝ったら、打ち上げた太刀をもらってもいいか?」

「売らずに、保管しておくってことか?いいだろう、その勝負受けたぞ」

「よし、気合いれるぜ!」


両頬を、バンバンと叩き。刀身を持ち、作業台に腰を据える。

先ずは、火造り(ひづくり)で、刀身を成型する。

あきらは、本造りという、両側 鎬造しのぎづくりだ。

そらは、差表さしおもて 鎬造しのぎづくり差表さしうら 切刃造きりはづくりで造り込みを行う。


食事をとらず、ひたすら造り込みを行う、あきらそら

夕刻には、火造り(ひづくり)が終わり、焼き入れのための、土置きを始める。

棟の方には厚く、刃の方には薄く土を塗る。

特に、刃の土は波紋に直接関係するため、集中が必要な作業だ。


あきらは、祖父譲りの土(粘土、木炭、砥石の粉、少しの鉄粉を配合)を利用

そらは、祖父譲りの土に、甲賀神社で拝借してきた土を混ぜて使ってみる事にした


土置きが終わると、焼き入れの為に、刀身を800℃近くまで、均一に熱する。

そして、一息に、水桶に刀身を潜らせ、焼き入れを行う。


『ジュ、ジュ、ジュワー』


凄まじい勢いで、水蒸気が舞い上がる。

ゆっくりと刀身を取り出す、そら


その後、合い取りという焼き戻しを行い、刀の粘りを出していく。

そらが、鍛冶研ぎを終えた頃には、既に深夜だった。


既に、鍛冶研ぎを終えたあきらが、近づいてくる。


「おお、良い出来じゃないか。刃紋が、浮き出ていやがる」

「へへ、気合入れたからな。ちょっと、神格を図ってみるぜ」


下から順に見ていく。稚、衆、導、狛、金、毘、不、地。不だ。


「よっしゃ! 不格だ! 神水のおかげかもしれねえな」

「おお、俺はいつもの。導格だってえのに、大したもんを打ち上げたな、そら

「勝負は?」

「売り物値段だと、俺の勝ちだが、神格は明らかにお前の勝ちだ、そいつは、お前が持っとけ!」

「親父、さんきゅ!。どうしても、こいつが必要だったんだ。よっしゃ、うまくいったぜ!」


「何に必要だったんだ?」

「ああ、このまえ、まいを襲った奴がいただろう?もっと手強い奴がいそうなんだ、そいつと対峙するには、どうしても不格の太刀が必要らしいんだ」

「うーん、よくわからねえが、まいちゃんのためって事だけは分かった。大事にしろよ」

「ああ、もちろんだ」

「よっし、なか仕立てと、銘切りを済ませてから、数打ち用で拵えとくぜ。よっしゃ、よっしゃ、まいに見せてやらないと」


そらの野郎、まいちゃんにメロメロじゃねえか。そりゃ、かわいい娘だけどよ。まあ、先に寝るからよ、程々で寝ろよ!」


「ああ」


夜空が白む頃には、白木で総拵えされた太刀が完成。

神棚に飾ってから、炭火で暖かい鍛冶場で眠りについたそら

3時間後には、母におこされ、シャワーを浴びる。

着替えて、朝ご飯を食べたら、まいの家に向かって、走り出した。


「こんにちはー、そらでーす。まいさん、いますかー」

「かわいい、ゆいちゃんならいますよー」


まいの妹、ゆいが駆けだしてくる。


「おはようー、ゆいちゃん、今日もかわいいね!」

「えへへ、ありがと、そらにー」

「こら、そら、かわいいまいちゃんでしょ?」


バシッと、頭をはたかれる。


「うわ、いった!」

「アハハハ、今日も、そらの驚いたかおって、おもしろーい。さあ、早くいかないと、バスに遅れちゃう!」


制服姿で白いスニーカーを履いた、ポニーテールのまい

同じく、水色のスニーカーを履いた、ツインテールのゆい

同じ高校に通う2人の美少女に手を引っ張られて、困った顔のそら


須原神社前のバス停までは直ぐ、バスも時刻通り、直ぐにやってきた。


まいの太刀が打ちあがったんだ。」

「えええ、凄いじゃない。童子切安綱どうじぎりやすつなと同じ神格だよね?」

「ああ、これで、名のある童子が現れても、大丈夫だ」


「ねえ、2人とも、格とか、童子切安綱どうじぎりやすつなとかって、日本刀の話し?」


「ああ、そうだよ」「そうだよ、ゆい

「ねえ、私にも教えてよ!」

「うん、そうだね。この前、ゆいちゃん家に納めた、太刀があったろ?あれが、こまって神格なんだ」

「神格ってなに?」

「ゲームでいう、レベルみたいなもんらしいよ」

「太刀のレベルか、そうかもしれないね」

「うん、家の太刀のレベルは、下から、稚、衆、導、狛、金、毘、不、地、月、日、薬、大 て分かれていて、

 どうしても、よりも、高いレベルの太刀が必要だったんだ」

「ふーん、レベルの高い日本刀を、そらにーちゃんが作りたかったって事?」

「そうそう、そういうこと」

「で、なんで、その、?っていうのがいるの?そもそも、ふってなに?」


「うん、平安時代に、酒呑童子しゅてんどうじって鬼を切ったのが、童子切安綱どうじぎりやすつなって太刀だったんだ。

 その、童子切安綱どうじぎりやすつなって太刀が、つまり、不動明王格の太刀らしいんだよ。」


「なるほど、童子切安綱どうじぎりやすつなと同じものを打って、いいとこ見せようと、まいねーちゃんに約束して頑張ったってことか。はいはい、ごちそうさま」

「ちょっと、ゆいそんなんじゃないってば」

「はいはい、あ、学校に着いたよ!ほら、そらにーちゃん、行くよ」

「もう、ちょっとまってよ!」


バス停から、須原神社までは近いとは言っても、何かあるといけないので、

帰りも3人で同じバスに乗って、須原家まで、まいゆいを送ってきた。


そらにーちゃん、今日は泊ってかないの?」

「魅力的なお誘いだけど、寝不足だから、今日は帰って寝るよ」

「なんだ、残念。眠気に負けちゃったよ」

ゆいの魅力じゃね。じゃあ、そら、気を付けて。あ、明日も、ちゃんと迎えにきてよ」

「もう、まってるからね?」

「了解、じゃね!」

「「またね」」


何事もなく、無事に家に辿り着いたそら

部屋で、不動明王の太刀を抜き、しげしげと眺める。


「我ながら、良いできだ。持ち歩き用に、肩掛け式の竹刀袋を買うか。でも、流石に、学校には持っていけないな」

「でも、不動明王よりも、もっと上のレベルがあるって事は、名を持つ童子よりも強い悪意が居るってことか?」

「よし、今週末にでも、甲賀神社をもう一度しらべてみるか、あー眠い」


そのまま、ベッドで眠ってしまうそらであった。

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