第3話 お地蔵さまと封印
「不、不、不、ふーじ〇ちゃーん。うーん、分んねえ」
「まあ、いいや。童子切安綱は、今度、父さんに東京に連れてってもらってみればいいか」
木杖(金剛力士の刀)を背負って走る、空。4kmを15分程で走り切り、通り魔事件があったらしい河原付近に着いた。
「このあたりだとおもうけど、何かあんのか?」
「うん?あそこの土手を上がったとこにお地蔵さまがあった気がするけど、見あたらねえぞ?」
きょろきょろ、と、辺りを見渡すと、草むらにお地蔵さまが転げ落ちている。
「おいおい。何てバチあたりな事をする奴がって、これ、不良の奴らがやったんじゃ?」
『グッ』と、重いお地蔵様をかかえ、土手を登っていく。
「ふう、ふう、ふう、っと。このあたりだとおもったけど。うん?地面が掘り起こされてる?」
お地蔵様が立っていたあたりの地面が深く抉れている。
「この穴、何かが掘り出された?いや、なんかが出てきたのか?」
抉れて穴を覗くが、よくわからない。
「埋め戻しておくか。」
穴の周りの土や石で穴をふさぎ、その上に、お地蔵さまを戻す。
川岸におりて、手拭いを濡らし、『ゴシゴシ』とお地蔵さまをキレイに拭く。
「これでよっし。舞ん家の近くも見に行くか」
歩き出そうとする、草むらから、舞を襲った男とよく似た、ボロ衣服で黒刀を持った男が襲い掛かってくる。
「ウ、ケケケ!」
木杖(金剛力士の刀)を、左手に持ち、腰を落とし、居合の形で構える。
やはり、意思を感じない、ボロを纏った男が、上段から無造作に、打ち込んできた。
「フン!」充分に引き付けてから、空が動く。
『キィンッ』
瞬息の居合抜き、斜め上に向かい横に一閃。降りぬいた刀身を引き戻し、中段に構える。
「戸隠流、居合二の型」
今回は、黒い刀を折った瞬間、ボロの男が刀もろとも霧散した。
「俺が打った『狛犬の太刀』よりも、じいちゃんの『金剛力士の刀』の方が強いってことか?うーん、納得できねえ」
刀を鞘に納め、木杖(金剛力士の刀)を、背負いなおす。
「よし、太刀打ちは明日だ。今日は、舞ん家の鳥居付近をさがしてみよう。お地蔵さまか、狛犬が倒されているかもしれない」
深く深呼吸して呼吸を整えると、須原神社に向かって走る。10分程で到着し、きょろきょろ、と、辺りを見渡す。
すると、鳥居から少し山に入った所に祭られていた、狛犬の石像が、30cm程の台座から地面に落とされていた。
そして、台座の中心に、やはり、大きな穴が開いていた。
台座の周りから、土や石を穴に投げ込み、穴ををふさぐ。
「ウグググ、こりゃ重い」台座の上に、狛犬の石像を戻し、手拭いで『ゴシゴシ』と、狛犬の石像をキレイに拭いた。
「さっきみたいに、襲われるとヤバいからな」
暫くのあいだ、きょろきょろ、と、辺りを見渡す。特に、問題はなさそうだ。
「さっきの奴が通り魔の犯人で、お地蔵さまの下から這い出してきた。昨日の舞を襲った犯人は、ここから出てきたってことか」
「うーん、これがじいちゃんの紙に書いてあった『餓鬼』ってやつなのか?」
「もしかして、封印していた石像がどかされたので、封印が解けて這い出してきたのか?」
タイミングよく、着信音が携帯からなる。BU のCMでおなじみの着信音だ。
「おう、舞か。舞ん家の鳥居のとこで、狛犬が倒れてたから直してたんだ」
「え! 会いに来たのかって? まあ、半分そうだけど」
「すぐに、そっちに行くから待っててくれ」
舞の家に向かい、歩き出した