第1話
この国では17歳になると女性は武器を持ち外に出なければならない。
その地の名はノルン地域。周辺にはまた自治の違う地域はあるが、それよりも問題は地域内に生息するモンスターが人々や作物を襲う事例が絶えないことだ。
そこでノルン地域の政府はモンスター退治に関する決まりを出した。
17歳以上の男女は武器を取り、モンスター退治に行かなければならない。新入りには一人モンスター退治数年経験者の者が指導につく。そんな決まりである。
当初地域の住人は反対していたが、今ではそんな者も大人しくなり、皆齢17になるとモンスター退治へと出かけた。
モンスター退治を行うと政府からお金を貰えるため、これをプロの仕事とする者も現れ始めた。
今年で17歳になるイアリ・ヴァルキュリヤは父親から新品の短剣を買って貰った。
「これでいっぱいモンスター退治して、お金沢山貰って、お小遣いでドレス買うんだ。」
「怪我しなうように気をつけろよイアリ。お父さんも、後3日後にはモンスター退治のために出なきゃいけない。」
「分かってる分かってる。何か新人には上司がつくんだって。どんな人なんだろ?」
「俺からもモンスター退治部署の人に挨拶したら、俺の知り合いの息子が指導につくらしいぞ。だから安心して行ってこい。」
「ま、お父さんの知り合いの息子さんなら大丈夫ね。」
「おう。どんと大船に乗ったつもりでいなさいイアリ!」
イアリは家族と談笑して翌日の準備をした。
・・・・・
イアリはノルン地域の中心部近くに住んでいる。そのため、モンスター退治部署のある場所に徒歩で数分で着いた。
なんだかわくわくとイアリは胸が高まる。
モンスター退治部署の玄関の戸を開け、受付窓口で挨拶をする。
「おはようございます。本日からモンスター退治をするイアリと申します。よろしくお願いします。」
「おはようイアリちゃん。よろしくね。」
「はい。早速ですが、私の担当の方は…」
「ああヴィトくんね。ここの2階の休憩ルームにいると思うから、挨拶してきてね。」
「はい、分かりました。いってきます。」
イアリは応じてくれた受付の方に挨拶すると、階段の方へ歩いていき、2階へと上がっていった。
休憩ルームと書かれた場所の戸を開けると、窓側に立って窓の外の景色を見ている背の高いお兄さんがいる。何だか寡黙そうで話し難い雰囲気がある。
「あのっ、失礼します。イアリ・ヴァルキュリヤと言います。今日からこちらでモンスター退治させていただくことになって。貴方が担当のヴィトさんですか?」
「キミがイアリ君か。話は聞いています。今日から俺がキミの指導につくこととなっているヴィト・ハミンギアです。分からないことがあったら色々聞いて下さい。」
「はいっ。ありがとうございます。」
イアリは意外にも感じが良さそうなお兄さんで良かったと安心した。
・・・・・
次の日、また次の日と1週間ほどは、慣れないモンスター退治でイアリは相当バテバテになった。早い時間に起き、モンスター部署から歩いて1時間もする森へと向かい、慣れない武器で戦い、ヴィトにも呆れられる。
そんな中、イアリは遂に問題を起こしてしまった。寝坊していつもの集合時間に遅れてしまったのだ。
これにはさすがにヴィトも叱らざるを得なかった。
「あのですねイアリ君。慣れない環境で大変なのは分かりますが遅刻しないで来ることぐらい出来ないんですか?」
「そんなこと言ったって私朝苦手だし…。いつもだって頑張って朝起きて来てるのに…。」
イアリは今にも消え入りそうな声でヴィトに反論する。
ヴィトははあっとため息をつくと、こう言った。
「キミが朝が苦手だと言うのならこれから毎日キミの家に迎えに行くけどもいいですか?毎朝キミの家に押しかけてキミのヨダレのついた寝顔と寝癖を見に行くことになりますがそれでもいいですか?」
「えっ。ムリムリ。そんなの絶対ムリ。恥ずかしすぎるし殿方が来るだなんて!」
「そんなに嫌ならちゃんと規定の時間に起きて来てください。でないと本当にキミの家に寝顔を見に行きますからね。」
「それってセクハラなんじゃないんですかヴィトさん…?」
「俺のようなカッコイイお兄さんに寝顔を見られるだなんて光栄なことだと思いなさい。」
「なんですかそれ。」
イアリはふふっと笑った。
イアリとヴィトはこれからモンスター退治に向かう。
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アイリス大賞用の恋愛ファンタジー作品です。
長期作品となる予定です。
よろしくお願いします。