番外編 あたしメリーさん。いまオークキングが誕生したの……。
王都にある冒険者ギルドのひとつ『冒険者ギルド[アシストⅨ号支店]』。
煉瓦造りの三階建て雑居ビルに、でかでかと『アットホームな冒険者ギルドです♡』と看板が掲げられ、壁には職員同士が腕を組んで満面の笑みで、きら◯ジャンプをしているポスターがベタベタと貼られていた。
夕暮れが去り夜のとばりが落ちてきた時間帯。通りがかりにそれを眺めながら、一杯ひっかけてきた帰りらしい職人たちの一団が、タガが外れた調子で好き勝手言いまくる。
「ブラック企業の定番うたい文句だよな『アットホーム』って」
「そうそう。あれって婉曲に親族経営とか、上がワンマン体質って言ってるも同然だからぁ」
「あと『未経験大歓迎』『幹部候補募集』『成長できる会社です』『頑張り次第で稼げます』とか」
「『あなたのやる気を重視!』や『ノルマなし』や『残業なし』『週休二日(休めることも年に一回くらいはあるかも)』なんて確実に罠だよな」
「それと社員が笑顔で肩を組んでいる写真や笑顔でガッツポーズしてたり、飛んだり跳ねたりしている奴も明らかに地雷だよな。要するに作った笑顔以外に、何もアピールすることがないってことで……」
「ぐはああああああああああああああああっ!!!!」
「手取り20~40万って話だったのに、実際は最低賃金のさらに下……」
「何が店長候補だ! 責任とノルマだけかぶせて月360時間残業で、もっと人件費減らせとか!」
「俺が組んだプラグラムじゃねえのに、なんで出先まで最低一カ月出向で、契約上旅費もホテル代も出ないとか、舐めてるのか!?!」
それを聞いていた社畜転生か転移組らしい連中が、古傷をえぐられて、その場で七転八倒、罵詈雑言を口走る……『俺TUEEE』『またオレ何かやっちゃいました?』とは裏腹の(人間転生だの転移したからといって陰キャや無能が改善されるわけがない)異世界あるあるの光景が展開されていた。
そんなものすごくどこにでもありそうな、ありふれた名前――他にも「アドバンス」「サンライズ」「フロンティア」「アクティブ」「ネクスト」あたりが鉄板で、名字で言えば「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」くらい石を投げれば確実に当たる何の変哲もない――の冒険者ギルドの正面扉が不意に押し開けられ、見れば、そこには赤とオレンジと白を基調としてたフード付きヘルメットと、ベスト、長手袋、マントにブーツいうやたら目立つコスチュームをまとった小柄な人影(?)が堂々と仁王立ちしながら、その場で切迫した口調で言い放つ。
「僕の名はジュリー=ケイ=フジ……じゃなかった。ガ◯バロン。 ――お尻は狙われているっ!」
残っていた職員が一瞥して、即座に興味をなくした様子で日常業務に戻った。
何しろここは冒険者ギルド。おっさんもビキニアーマーを着る世界観を踏襲しているファンタジー世界。基本的に冒険者など奇人変人の巣窟なので――特に最近はとある幼女勇者のせいで感覚が麻痺している――この程度の相手は日常茶飯事なのである。
「「「「「……すみません、本日の営業は終了しましたので、また明日の営業時間にお越しください」」」」」
一斉にテンプレートの返答をしてお引き取りを願う冒険者ギルド職員たち。
ただでさえ忙しいのに、この上時間外に余計な案件抱え込んでたまるか! という笑顔とは裏腹の鬼気迫る本音が露骨に透けて見えた。
「お前、拾ってもらったんだよな? 辞めるって恩を仇で返す気か? 」
「お前の代わりはいくらでもいるんだ」
「お前なんで来てんの? 」
「ここでダメだったら勤まる職場なんてないぞ! 」
「新卒なんて使えないとわかれば半年で首にしろ。半年後にはまた新卒が入ってくる」
『アットホームな職場』とは裏腹の殺伐とした光景に、ジュリー=ケイ=フジとやらは密かに戦慄するのだった。
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『大体において異種族のおとーちゃんが違う種族のメスとやったから雑種が生まれるとか非科学的なの……』
『呪いの人形が科学を語るのもどうかと思うけど、ま、確かに生物の進化って、選択や環境に対する淘汰圧力とかが原因で、10世代くらいでガラリと変わるらしいし、交雑種は一代限りで子孫を残せないあだ花なのがほとんどだからねえ』
交雑種が子孫を残せない身近な例で言えば『三元豚』がそれにあたる。
アレはランドレース種やバークシャー種なんかの三種類以上(四種類だと四元豚になる)の純粋種の豚を掛け合わせた1代雑種で、三元豚同士を掛け合わせても三元豚は生まれずに、元になった雑種が生まれるだけだ。
『そういえばメリーさんが通っている幼稚園には、母親が鬼の姫だか天狗のお嬢様で、父親が料理ができるだけのただの人間とか吹聴している園児がいるけど、他の園児からは差別の対象になっているの……』
『『『異種族婚……!』』』
『『『獣姦だ、獣姦だっ。お前のとーちゃん変態だ!!』』』
異世界の幼稚園児は容赦ないな、おい。
『当人がハンサムで勉強ができてスポーツ万能、性格も良い出木杉君みたいな相手だから、親が貴族とか金持ちの七光りなだけで、他に何の能もない阿呆な園児のやっかみもあると思うの……』
「お前のことだな」
『メリーさん照れるの……』
「出木杉の方じゃねえ! どんだけ自己評価が高いんだ!?」
“そういえば日本じゃあまり聞かないけど、中国だと幽霊と結婚するパターンもあるのよね”
洗い物を終えた霊子(仮名)が、なぜかチラチラ俺の方を窺いながら思わせぶりに口にする。
「ほう。日本だと鶴とか亀とか蛇とか狐、雪女なんかが定番だけどな」
“中国では割と定番みたいよ。それで子供ができたり、生き返ったり”
「死人が生き返るとかDB並みに命が軽いな、おい。んなことがホイホイできるのは“神”かそれに類する存在くらいなもんだろうに」
と軽口を叩きつつも、なぜだろう? 霊子(仮名)から妙な圧を感じる。
『で、何日か前にスズカと出かけたときに、冒険者ギルド前の広場でバザーがやっていたのでメリーさん覗いてみたの……』
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● つわりバンド:腕に付けるとつわりを軽減できるマジックアイテムです。手首に吐き気を抑えるツボがあり、その部分を刺激します。
● つわ◯ン:妊娠初期のムカムカが辛い時に飲むゼリー。
● 天使の卵:ほんのりミントの香りとさっぱりとした清涼感のあるミントティーで、つわりの妊婦さんも飲みやすいです。
「あたしメリーさん。『天使の卵』って、もっとこう天◯喜孝風パッケージで、見るからに薄幸そうな少女が謎の卵を温めてるんだけど、最後勝手に卵を割られて地割れから落ちるイメージなの……」
「それは違う『天使の◯まご』です! あとこのあたりの商品はメリーさんには関係ありません!」
「ならスズカには関係あるの……?」
「ありません! コンビニのおでんに味噌がなくてカラシだけとか、定食の味噌汁が白だしだとか、トーストに餡子が塗ってないくらいあり得ません!!」
断固とした口調で、メリーさんの手を引っ張って足早にその露店から離れようとしたスズカ。
「メリーさん的にはそっちの方がないような気がするの……」
釈然としない様子のメリーさんに逆に釈然としないスズカであったが、
「ぼこぼこ……もしかして、スズカ……ぼこぼこ……」
通り過ぎかけた露店の店員から思いがけずに声をかけられた。
見ればアイドルのブロマイドやグッズを売っているらしい露店で、正体不明の――マジで全身旧式の潜水服みたいなのをまとった――人物が親し気に手を振っている。
よくよく注意して見ると、水を防ぐための潜水服ではなく、逆に内部に水をためてエラ呼吸を助ける、半魚人や水棲人必須の潜空服であった。
「……誰?」
首を捻るスズカに向かって、さもありなんとばかり頷く謎の人物。
「わたしわたし、ほら、中学の時同級生だった――」
「――では、忙しいのでこれで」
「スズカの中学ってバケモノの巣窟なの……?」
異世界転生して中学の時の同級生がいてたまるか――とばかり、失礼千万なことを聞いてくるメリーさんの手を取って、即座に踵を返すスズカ。
「いやいや、オレオレ詐欺じゃなくて……ごぼごぼ……。ほら、金パチ――三年B組の時に同級生だった」
「――っ!? 当時の担任のあだ名を知っているとは……」
慌てて追いすがる謎の人物が告げたワードにスズカは愕然とした。
「そうそう。あの金髪八重歯でパチモン臭い、略して金パチ先生」
途端にスズカの脳裏に前世――中学三年の時の担任で、国語教師であった金パチ先生の独特の授業風景がよみがえる。
「いいかお前ら! お前たちはケツの青い童だ!」
『童』と黒板にチョークで書く金パチ先生。
「ちなみに『童』というのは刃物で両目をつぶした奴隷を象った文字のことで、お前らは教師の言うとおりに、よそ見をせずに奴隷のように従っていればいいんだ!!」
「……いまだったら色々とアウトな問題教師ばっかりだったわね」
ついでに家庭科教師・音楽教師・体育教師のハズレ率の高さを思い出してげんなりするスズカ。
さて、無茶苦茶を言う金パチ先生の持論に対して、そこは腐っても教師、馬鹿でも教師、非常識でも教師なので逆らうわけにもいかず――昭和の時代は教師は偉くて絶対なので、保護者も唯々諾々と――従っていた暗黒時代の思い出に付随して、ひとりの同級生だった女子生徒の顔が重なった。
「その通りです先生っ! わたしは先生のお考えに感銘を受けました! あ、地元の銘菓クラブ◯リエのバームクーヘンです。餡をくるんだ三角形の上生菓子のういろう……名古屋で本家面している、美味くもなんともない餅と違った本物とどっちがいいか悩んだんですけど、こっちにしました。お納めください!」
立ち上がってクラスの人気者で通っている男子三人組。通称“きんたのトリオ”を引き連れて、目立たない女生徒が、明らかにバームクーヘンとは思えない、どっしりとした重量感のある菓子折りを金パチ先生に渡すのだった。
「おおぅ、わかってくれるか! うんうん。先生は猛烈に感激しているぞ!!」
どす黒い教育現場の裏側――賄賂の受け渡しを目前にして、三年B組の生徒たちは現実の過酷さと、地元名物を貶められても抗議できない自分たちの無力さを噛み締め、ある意味これを生涯の反面教師とするのだった。
ちなみに金パチは九州出身で、くだんの女子生徒は関西出身である。
そんなことを一瞬で思い出したスズカ。
「――もしかして、北川さん?」
当然ながら微妙に懐疑的に尋ねる。
「うん」
「問題1.滋賀県全体に占める琵琶湖の割合は?」
「6分の1」
「問題2.滋賀県民が持っていないと非県民扱いを受けるカードの名前は?」
「平◯堂のH◯Pカード」
「問題3.滋賀県民の殺し文句は?」
「“琵琶湖の水止めたろか”」
そこまで質疑応答を繰り返したところで、完全に納得したらしいスズカの警戒が溶けた。
「うわ~~っ、確かに北川さんだわ……」
「ごぼごぼ……そう……あの後、び◯湖放送(略称BBC)が余計なことしなければ、会社も倒産――あ、いえ、いろいろあって異世界転生をして、淡水系水棲人『淡海人』に生まれ変わったのよ。あ、いまの名前はジュリー=ケイ=フジシマっていうの。……で、スズカは貧相そうな犬?」
「狐よ、狐! こんこん様よ!」
やっぱジュリーとは生まれ変わっても合わないなー、と思いながらさっさとこの場から退散することを思案するスズカ。
「ええと……ジュリー? あなた見た目以外は変わらないわね……」
「スズカは狐耳とか尻尾とかであざとさが増したけど、見た目も中身も中学時代とあんまり変わってないんじゃない? 特に胸の当たりとか」
やっぱりコイツ嫌いだ。
転生前の知り合いにたまたま会うという、ある意味運命的な出会いであったが、単純に腐れ縁だったわ。そうスズカが完全に理解したところで、不意に広場前にメガホンによる大声が響いた。
反射的に見れば、中東風の頭にかぶったクゥトラとゆったりとしたトープをまとい、でっぷり太った中年男性が盛んに何やらアピールしている。
『冒険者の皆様! そして肉をこよなく愛するご家庭の皆様! 本日は私、ジャスタウェイ・ブッチャチャが皆様に素晴らしいマジックアイテムをご紹介いたします! これぞ魔法の代わりに科学技術が発達した異世界チキューの技術を再現した、未知なる英知の産物。人呼んで――』
それに応じて四姉妹らしい十代後半から前半までの、妙に所帯疲れした少女たちが、荷車に巨大なソレを乗せて運んできた。
豚を模った一見するとピンク色の陶製をした全長3mほどの置物に見えるそれは――。
「巨大蚊取り豚……?」
見たままメリーさんが口にする。
『違~~う! これぞチキューの科学が生んだ傑作。口の中に肉や生き物を詰め込むと、たちまちソーセージやハムに加工してくれる科学の調理器だ~~っ!!!』
「「「「「「そんな極端にアホな科学は地球にはないっ!」」」」」」
その場にいたスズカやジェリーをはじめ、地球出身者たちから、たちまち否定の言葉が噴出した。
【豚肉の生食:食中毒になる。新鮮かどうか限らず、仮に生きた奴を生で齧りついてもE型肝炎ウイルス(HEV)に感染したり、サルモネラ菌やカンピロバクター等の食中毒のリスクがある。猪や鹿の内臓も同じなので、お肉や内臓はよく加熱して食べましょう。】
「――ということで、現在は豚やら猪やら牛やらの解体・精肉は職人の手腕にかかっている! だが現状一日に供給できる肉の量は消費を遥かに下回っているのが現状であ~る!」
冒険者ギルドの前にある広場で、《スマイル・ピッグ》とやらを前にして熱弁を振るうジャスタウェイ・ブッチャチャ。
「だが、そんな手間もこの《スマイル・ピッグ》にかかればたちまち解決です! ――ええと、冒険者の皆さん必要ない魔物の臓物や廃棄予定の部位がありましたらご提供願えますでしょうか?」
それくらい自分で用意しとけよ、手際悪いな~……という野次が群衆から飛んできた。
「くっ……! この《スマイル・ピッグ》開発のために有り金を使い、借りられるところからは借りまくり、子供たちの食費にも事欠くありさまでなければ……」
忸怩たる思いで唇を噛むジャスタウェイ。
「「「「おとっつあん!」」」」
娘たちも父の無念を知ってか文句も言わずに労わりの目を向けるのだった。
「あたしメリーさん。その割にはオヤジ肥え太っているの……」
「……そーいえばそうですねー」
目の前で繰り広げられる浪花節に半分ほだされかけていたスズカが、メリーさんの無遠慮な一言で我に返った。
その間にも情にもろい冒険者たちが、使い道のないワイルドボアの生首とか、糊工房(馬を素材にした膠は昔は◯ーロッパでよく見られた)で潰したスカシ馬の臓物とかをもらってきて、せっせとと《スマイル・ピッグ》の大きく開かれた口の中へと放り込む。
ついでに何か勘違いしているのか、通行人がいらなくなったホモ雑誌の束を、ドサクサまぎれに処分していた。
その様子を眺めながら、ジャスタウェイは口惜し気に吐き捨てた。
「おのれ……せめて、せめて、かき集めた最後の生活費を一点に張り込んだ、今日のレースで大穴のファビュラスブラザーが一着になっていれば、娘たちにこんな苦しい思いをさせなかったものを!」
「「「「競馬で生活費を使い果たしてんじゃねえええええ!」」」」
刹那、四姉妹の鉄拳がオヤジの肥え太った腹にさく裂する。
「げほっ――!?! ま、待て。父さんはもう絶対にギャンブルなんかしない。賭けてもいいぞ」
「「「「そう言っている時点で信用なんてあるわきゃないだろう!!!」」」」
激昂した四姉妹はジャスタウェイの四肢をがっちりとホールドして、そのままゴミのように《スマイル・ピッグ》の口の中へと投げ入れた。
周囲がドン引きしている中、《スマイル・ピッグ》が目を点滅させながら起動。
全身を震わせながら何やら作動していたが、15分ほどしたところでピタリと動きが止まり――。
「わははははははははははははっ! ホモはいいぞ~! やはり娘よりも美少年だな!!」
ジャスタウェイ・ブッチャチャ――ではなく、豚の顔に牛の角とか、馬の尻尾、鶏の翼などいろいろいろいろ混じった謎の二足歩行をする怪物が、《スマイル・ピッグ》本体をぶち破って現れ、いきなり高笑いを放った。
「あ、やっぱり失敗か」
長女らしいジャスタウェイの娘が、ため息とともに独り言ちる。
それを皮切りに姉妹たちが口々に愚痴りはじめた。
「安く上げようと材料をケチって半分ハリボテだったもんね」
「肉抜きは効果ないって言われただろうに」
「肉作るマシンだけになおさら……ね」
そして最後、四姉妹で一斉にため息をつく。
「「「「はあ~~」」」」
それはそれとして――。
「……なにあれ……?」
唖然としたスズカの呟きに応えるかのように、豚男はポーズを作って自己紹介を始めるのだった。
「我こそはオークキング。その名も……えーと……むう、記憶にないな」
「いや、あの……記憶以前にいま誕生したばかりだから、何もないんだけど」
「ジャスタウェイ・ブッチャチャなの……!」
スズカとメリーさんのツッコミに、腕組みをして考え込むオークキング。
「名前がくどいな。もうちょっとピンとくる名前が欲しいところだ。あと“ブッチャチャ”というふざけた響きの名字はいらん」
「「「「ブッチャチャで悪かったわね!」」」」
いきなり名字をDISられた四姉妹が一斉にオークキングに食って掛かった。
しかし柳に風で完全に無視して、オークキングは思案していたが、何か思いついたのかポンと手を叩く。
「ジャ……気楽に“ジャニー”と呼んでくれ」
呼べるかそんなもん、という無言の抗議も何のその。半壊した《スマイル・ピッグ》を両手で掴んだオークキング・ジャニーは、
「修理すればまだ使えるな。よし、これでオーク軍団を作り上げ、この地上に生きるすべての美少年を我が軍門へ菊門ごと下らせてみせよう。――では、諸君さらばだ!!」
そう捨て台詞を残して、背中の翼を広げて《スマイル・ピッグ》を抱え、高笑いを放ちながらこの場を飛び去って行くのだった。
「あたしメリーさん。犠牲になるのが美少年限定なら特に問題ないの……」
完全に他人事というスタンスで、小さくなっていくジャニーの後姿を見送るメリーさん。
「いや、どーなんでしょう。う~~ん……?」
考え込むスズカに向かって、
「いやいや、大問題だって! ごぼごぼ……トチ狂ったオークキングがオーク軍団を量産して……ごぼっ……攻めてくるんだよ! きちんと警告しないと!」
意外な熱心さでジュリーが正論を口に出した。
「金一封もらえるかも知れないし、あと現場にいたけど、わたしは無関係だと表明しないと!」
結局のところ金と自己保身が原動力だったらしい。
「いや、まあいいけどさ」
どこまでも無関係を貫こうと、そう決意を新たにしたスズカであった。
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10/21 加筆いたしました。




