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キャンパスの異変
「モテ男に、俺はなるっ!!」
そう決心したのは去年の夏。
うだるような暑さ。セミの鳴き声。
真夏の日差しに当てられて揺らめく安田講堂を前に、
俺は一人、決意した。
俺がこの世界に転生したその日のことだ。
やり直すんだ。もう一度、青春をこの手に――!!
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気持ちの良い目覚めだった。
低血圧の俺には珍しく、心地の良い朝。
頭はすっきり冴えわたっている。
俺は戸惑いを隠せなかった。
昨晩、睡眠薬を大量服用した。なのに、これはなんだ?
ここが天国?いや、地獄?
そのどちらでもないことは一目瞭然だった。
ここは自分の部屋。時計に表示された日付は睡眠薬を飲んだ次の日。
そして何よりも、床には睡眠薬の空箱が転がっている。
ここは現実世界だ。それ以上でもそれ以下でもない。
目覚めは良かったが、そう認識して、俺はすっかり脱力してしまった。
失敗したのだ。
自分という存在に終止符を打つことにさえ、俺は失敗してしまった。