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トーチ  作者: HEP
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初めての冒険 

暗いのは怖いので、人は明かりを灯します。明かりがあれば暗いところでも前に進める。

知らないところへ行くことはドキドキしますが、気持ちが明るいと前に進めます。

気持ち明るく、いつもと違ったルートを通りましょう。あなたはいくつもの発見をします。

それが冒険なのです。それはすべてが良いものとは限りませんが、すべてが悪いものでもないでしょう。

もしあなたが心細くなったら、心に明かりを灯しましょう。明かりがあればどんなところでも前に進める。

とても暗いが、何も見えないわけではない。

とても暗いが、足取りは軽い。

とても暗いが、心が躍る。

とても暗いのは松明を忘れたからだ。後悔はない。


私は今、洞窟の中を一人で歩いている。冷たく暗い洞窟を松明無しで歩くのは、無謀だ。

散々言われてきたことだが、人生で初めての大冒険を前に気持ちが先走ってしまったのだ。



「痛いっ」


私は足元のくぼみに躓いて、盛大にずっこけた。そりゃあ痛かった、後悔しかない。


冒険とは何か、冒険とは松明を準備するところから始まるのだ。

もう松明を準備し終えた時には冒険は終盤となっているのだ。

バカなことを考えながら私は先へ進む。

しかしどうしたことか、涙で前が見えない。足取りは重く、心はこの洞窟のように暗い。

なぜ松明を持ってこなかったのか、後悔しかない。

引き返そう、引き返して家に帰ろう。私は反転し駆け出した、怖くて怖くて仕方がなかったのだ。


入口へはすぐたどり着いた。私の冒険は100メートルも進んではいなかった。

振り返れば、お前を飲み込んでやろうかと大きく口を開けている化け物がいた。

私は涙をぬぐい胸を張った。どうだ、お前の腹の中から生きて出てきてやったぞ。

何とも言えない達成感が込み上げた。結果は悲惨なものだったが。


昼間に、母に頼まれたお使い程度の距離だった。ただ、この妙な達成感はお使いでは得られない。

冒険とはこうも楽しいものなのかと、さっきまでべそをかいていた私は知ってしまった。


それからというもの私は、たびたびこの洞窟に訪れた。松明を握りしめて。

魔物もいない、宝箱もない、何もない洞窟を私は奥へ進んでは戻りの繰り返し。

何度も繰り返しているうちに、洞窟の奥までたどり着いた。

洞窟の奥には壁があった。私は壁に自分の名前を刻みつけ、洞窟を後にした。

もう私はこの洞窟に訪れることはなかった。


あれから、いくつもの冒険をした。魔物との死にかけるような戦いを繰り広げ、数年間は遊んで

暮らせるような財宝も見つけた。世界で一番の鍛冶屋が打った剣も手に入れた。賊に襲われていた美しい女性の危機を救い、求婚されたなんてこともあった。

しかし、どんな冒険もあの洞窟ほどの達成感は得られなかった。

どんな窮地も切り開いてきた剣も、松明ほどの安心感は得られない。


私はまた一つ冒険を終わらせた。あの時以上の達成感は得られなかった。

ただただ楽しかった、ああやはり冒険とは楽しいものなのだ。

楽しいから前へと歩いていける、続けていけばあの達成感が得られるような気がする。

私は背負い鞄に松明を刺し、次の冒険へと向かう。

続くといいな。

松明=安心、明るい心というわけで、別に松明振り回して敵をばっさばっさと無双する話ではありません。

初めての冒険が楽しくてしょうがなかった子供が、冒険しに旅立った話です。

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