表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
997/2401

九百九十三生目 国家

 グレンくんと魔王討伐の意思を固めた。

 その後別れ……

 また水を飲んでいる。


 本当に喉が渇く……

 そこで兵たちと話を交わし。

 仲良くなりつつ知りたい相手の情報を入手。


 重たいからだを引きずりつつ向かったテントへ。

 ひときわ高級で警戒が厳重な場所。

 入り口で兵士たちに通されてからしばらく待たされる……かと思いきやすんなり部屋まで通れた。


 そこには……ダンダラ。そして

 ダンダラとは同じ部屋にいて互いに話を交わしていたようだ。


「あ、お邪魔します。皇帝閣下、命の無事何よりです」

「おっ、救世主のおでましだな!」

其方(そち)は……あの時の。あの時は助かった。命を救った英傑の前に、乱れた服装で失礼」

「いえ、滅相もありません」


 ダンダラは普通にしているのはダンダラは王子のひとりだからね。

 私はかがみ頭を下げ話す。

 といっても相手は簡単に"鷹目"で見えるが。


 皇帝たるものという感じで謝罪は形式のみでそれは全員分かって話を流している。

 皇帝も顔は当然という感じだ。

 ……身体の方は本当に皇帝というか単にけが人だが。


 脱ぎやすい簡易な服装に拭われた跡がある汚れと包帯。

 控えている3人。こまめにデータを取る医者。

 当然医療用の寝具に寝かされている。


 というか起き上がるのもつらそうといった様子。

 雰囲気だけは気丈に見せているがさすがに見た目とにおいで弱りっぷりはごまかせないほどに。

 医者たちはまさに目が離せずだからといって代理で客を追い出す権利もなく……といったところかな。


「良い。頭を上げよ。皇帝として許す」

「はっ」


 見上げると同時に皇帝は上半身を起こす。

 見るからに顔色も悪くしんどそうだ。

 医者の皇帝を見る目が鋭くなった……


 ここまでの流れは皇帝というよりも皇帝が背負う帝国そのものに対して重要なことだ。

 最終的に頭を上げて良いとしても周囲のためや国のために必要な儀式みたいなもの。

 ……アノニマルースでも何か考えたほうがいいのかなこういうの。


 それはともかくこうして対面し声を聞きにおいも分かるのに性別はわからない。

 出会った時は女性ぽいと感じていたのに今は男性ぽいと感じるのだ。

 変幻自在。両面の顔を持ちニンゲンを超え役割の帝王と徹する存在ゆえか。


 "観察"すればわかるかもしれないけどいくらなんでも不敬だ。

 ……まあ今の皇帝は顔を青くして震えている小さな一個人でしかないが。


「一応プライベートな場だし、ここまでしなくてもいいっちゃ良いんだが、悪いな」

其方等(そちら)は救国のために良くぞ力を尽くしてくれた。民のために尽力する王族や、国のために身を捧げる兵でもなく、隣国の旅人(りょじん)に、魔を得る獣たちに助けられることとなるとは、夢想だにしないことよ」


 ちらりと視線をダンダラに投げかけると軽くうなずく。

 なるほど皇帝はだいたいの経緯は知っていると。


「だがこれが新たなる神話の内になるのならば、理解できる。そう……あの外のことを其方(そち)は話に来たのだな。神話たるゆえんであり、神話として残るかどうかすら危うい元凶。魔王について」


 ここからは外の様子は見られない。

 それでも皇帝が投げかけた視線の先にその存在はたしかにいると訴えかけてくる。

 見えずとも聞こえずとも感じるこの威圧こそ魔王が誇示しているかのようだった。


「まさか本当に復活するとはなあ……オレの宝石剣(マイワイフ)も心なしか震えているしよ……」

「いつか来る時が今だったと思えば良い。発言を許可する。何を問い、何を求める?」

「ありがとうございます。魔王に関する情報……秘匿情報も含めて、攻略作戦班への共有をお願いします」


 私しか言葉を発していない。

 しかし明らかに空気がざわついた。

 急激に心情変化を起こしたにおいは控えのうちひとりと……隠れている兵3名。


 何も音も言葉も動きもないのにわかるほど明らかに攻撃的になったのは私が言った言葉はそれだけ危険だからだ。

 ようは国が長年かけ集め守ってきた重要な情報をただで寄越せという話だからだ。

 下手すれば国辱。皇帝が私を指差せば四方八方から暗器が飛び交うだろう。

 しかし私が言ったのはどうしても必要なことで……そしてこれすらもひとつの儀式めいたものだからだ。

 誰かが言い誰かが出さねば国が落ちるだけでは済まない。


 そして誰かが怒らねばより重い責任を持つものが怒るしかなくなる。

 国のために。

 単に肩代わりなのだ。


 そこまでこの部屋にいるダンダラや皇帝は理解しているし私もそこに乗っている。

 それだけだ。

 絶妙なタイミングで皇帝が片手を広げ上げる。


「良い。すべて許す。妨げるものあれば皇帝として出すことを許す……ふふ、英傑殿も微笑ましい面があるとみえる」

「悪いな、後でお菓子おごるから!」


 ……?

 みんな私の顔になにかついている? っていうくらい見てくるのだが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ