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九百八十九生目 崇奉

「……そうか、あれが魔王……」


 私達は魔王に単なる咆哮で吹き飛ばされてしまった。

 しかしそのおかげか魔法ジャミングと化していた魔王の力も吹き飛ぶ。

 空気の魔王力濃度が減り改めて"ファストトラベル"出来た。


 それでニンゲン軍のキャンプまで飛び……

 熊のジャグナーを含むキャンプにいたメンバーに治療しつつ報告していた。


「アイツ、どう動くつもりなんだろうな……」

「今の所静止しているのが逆に不気味……」


 イタ吉やグレンくんが汚れをぬぐい包帯をまかれながら城の方を見る。

 帝都城の上側は完全に吹き飛び3つ首が天を見つめているのだけはわかる。

 ……地獄の山脈が視界を妨げているのにその巨体はしっかりと見えていた。


 改めてその肉体を見ると……魔王ってもっとおぞましいものだと思っていた。

 アンデッドたちや悪魔たちと来たせいで慣れてしまったのか。

 いや……それ以上に。


 あの魔王は一種の神々しさがそこに込められていた。

 毛皮と鱗そして頑強そうな皮膚が織りなす姿は汚かったりあまりに邪悪であったりしない。

 なんなら自然にそうあるものだと思わせる美しい配合だった。


 巨大な肉体も醜悪からは遠く……

 全てを包み込み受け入れるような大きさを感じさせる。

 要は純粋に生き物として造形の出来がいいと感じさせてしまうのだ。


 もっと黒や赤中心でグロの方向かと思いきや白や金を中心に神々しい。

 故に恐ろしい。

 3つ首が空を見上げているその姿が。


 覗かせる牙は間違いなく全てを噛みちぎれてしまう。

 だがそれすらもまるで磨き抜かれた剣だ。

 輝きに惹かれ感心してしまうかのような存在だ。


 それは私だけではないことは周囲が示していた。

 兵たちが士官たちが看護師たちが。

 その一挙一動に注目し崇めるかのように視線を投げかけていた。


「……なるほど、魔王とはよく言ったものだ」


 ウォンレイ王のつぶやきが遠くから聞こえた。

 それと同時に周囲の兵たちがふと我に返り作業の手を戻す。


「……そうだジャグナー、結局こっちの様子は?」

「あ? ああ、めちゃくちゃキツイ戦況だったのに、さっきいきなり敵アンデッドが何か城側へ吸われるように消えてな。そのあとアレが出てきた」

「あの時魔王の座に座って吸い上げたときだ……」

「ま、そっちで何かあったんだろうなぐらいはさすがに分かったさ」


 ラキョウではしなかったアンデッドすらも容赦なくエネルギーを奪うということ。

 あそこにいるはずの捕らえたカエリラス兵たち……大丈夫かな。

 それと。


「30回くらい死ぬかと思ったよ、なんなのさありゃ?」

「オウカさん、あれが魔王ですよ」

「まったく……嫌だねえ」


 オウカたち後発部隊。

 彼等も異常を察知し私達より先に離脱していた。

 私から魔法を借りたログがあるので間違いない。


 というかみんな各々休んでいる。

 オウカさんが無駄に元気なのだ。

 エネルギッシュおばあちゃんとか言ったら怒られるので言わない。


「まあ復活しちまったもんはしょうがないさ。何にするにせよ仕留めないとだね」

「……出来るかな」


 正直かなり討伐可能かどうかは懐疑的になっている。

 正直……格が違う。

 蒼竜の神格すら怯えていると感じるほどに。


「やれる! だなんて無責任なことは言わないさ。だけど、やらなきゃ終わる。だからやろう」

「うん、そうだね……うん」


 もはややるしかない。

 勝たなければあれが星を焼く。

 蒼竜たちすらかてなくても勇者と共にニンゲンたちは勝ったのだから。


 ……うん?


「――さん、オウカさーん! 司令室でお呼びがー!」

「おや、すぐ行く! じゃあ、また後で」

「うん」


 オウカが兵に呼び出されどこかへゆく。

 私はこの"ネオハリー"の姿のまま傷を"トリートメント"で治して……

 ……ん?


 周囲に(エフェクト)が3つどこからか淡く集まる。

 この感じは確か……

 そう思っている間に(エフェクト)は形を成した。


 黒きダイヤモンドのごとき身体を持つ神への忠犬ナブシウ。

 私へのつきまといを諦めない白き植物で出来た(つる)獣神ホルヴィロス。

 崖下にいた真なる姿を歪められた生きる屍神と化していたグルシム。


 ……の分神たちだ。


「みんな!?」

「「大丈うわ間に夫かあああったいロたくーズようさんいるだな!?」」

「同時に喋るとわからないよ!?」


 いやなんとなくは分かったけれど!

 どさぐさに紛れて飛びついてグルーミングしてこようとしているのがホルヴィロスだし……

 私以外の相手があちこちにいるせいでドン引き私の影に隠れているのがナブシウ。

 無表情ながら魔王の方を見つめすっと目を細めたのがグルシムだ。


「……魔王か」

「うん。あれをどうにかして止めなくちゃならない。キミたちはどうしてここに?」

「さすがにあんなのまで来られると、神側の領分だからね。さすがにどうにかしに来たんだよ!」

「そ……そうだ! 我が神の地と連なるこの地を滅させるわけにはいかぬ……!」


 そうか……ついにその領域なのか。

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