九百八十五生目 背水
イタ吉が大きく尾の刃を振り込み胸を傷つける。
すぐに見た目は治るが気にせずイタ吉は撤退。
直後に上空に巨大な紫炎の塊が生み出せる。
それが撤退していくイタ吉たちに向けて放たれイタ吉たちが飛び込むと同時にイタ吉たちの姿が消える。
そして炎が舞い上がる……!
かわりに遠い場所でイタ吉たちは現れた。
私から"ミニワープ"を借りたようだ。
イタ吉が炎を誘導し離れさせた直後ダカシの刃がうなる。
敵の爪に片側小剣が弾かれつつ復讐刀を無理やり隙間に叩き込んだ。
すぐに離れ凄まじい速度で振られる爪を"防御"して剣と光で受けた。
ダカシはとにかくすぐ下がる。
私のイバラがかわりに敵に攻撃を叩きつけ魔法を放つ。
"二重詠唱"の土魔法"Eスピア"!
2つの土槍が敵の足元から襲う!
……もう! また防がれる!
まったく通らないわけではないが魔王の力がこもった魔法バリアみたいなものに毎度防がれるのだ。
土槍もバリアでえぐれ崩れてしまった。
うまく壊せないかと叩き込むものの毎度こうだから魔法は補助と回復に割り切るかな。
でもなあ……と悩んでここまで来てしまった。
妨害そのものにはなっている。
敵の魔法発動が遅れるあたりから魔力の流れを一部分けて防いでいるのかな。
結局誰かの治療や補助切れのほうが厄介でそちらに集中する。
とくに追加生命力を与える光魔法"ライフブレス"と"シールド"はないと死者がでかねない。
土魔法"スタッドボーン"による肉体頑強化も優先したいが魔法に対して無意味なので優先率は低め。
さらに"クラッシュガード"は使い捨て装甲だが1回だけどれだけでかくても防いでくれる……ものの。
相手の爪攻撃はともかく魔法はどれも判定部分として複数回当たるのと同じなんだよね……
簡単に言うと痛みを与える持続時間が長いのとどの攻撃でも剥がれてしまうから氷のつぶて1つ目で剥がれる。
ただ巨大氷に巻き込まれた時だけは助かるかな。
そんな機会ないほうが良いが。
今の所うっかりグレンくんが半身凍って勇者の剣を無理やり使い切り抜いて自力脱出した以外はなんとかなっている。
氷自壊時のつぶてはかなりイタ吉とダカシに生命力削ってくるので距離取りは大事。
散弾銃を全方位に放つようなもんだからね……
おっと。前衛3者がかわるがわるヒットアンドアウェイするくらいで次の魔法が来る。
今回は私が魔法を使ったのでチャージが遅れている。
この時にどれを使うか……安全な場所はどこになるかを瞬時に判断。
……風が頬を撫でる。
「敵へ!」
「「おう!」」
各々の返事を聞きつつも私もついていく。
風の魔法は周囲を凄まじくえぐる。
ただし中心地はほぼ効果範囲外で魔法の中心は当然敵。
なので……敵とインファイトせざるおえなくなる。
「うおおお、こえええっ!!」
「イタ吉なら2回までは大丈夫だから!」
「俺は残数制じゃねえよ!!」
「勇者の剣で俺が防ぐから!」
グレンくんから踏み込み剣を振るう。
重みのある剣の形にしたらしく振るわれ相手の爪と弾きあう。
唱え終わったあとなら腕はフリーだから爪が恐ろしい。
外側から暴風が吹き荒れどんどん足場が狭まる。
この暴風は最終的に斬られたくないならほぼ密着するしかない。
私は敵の頭上をもらう!
殴りきってもう勝ちたいところ。
と言うか倒れるよね!?
この状態気絶に持っていけるよね!?
でないとこっちがもう疲労限界……
みんなが地上で爪をしのいでいるあいだに上空にのぼり……
そこからイバラで攻撃!
"千の茨"で敵の爪に無駄振りを狙いつつ鞭剣ゼロエネミーで勢いをつけ斬りかかる!
"龍螺旋"は爆発するから使わない。
硬いんだよなあほんと……!
生命力もどんだけあるんだってほどだし身体はニンゲンサイズしかない。
ほとんどその場から動かないのに鋭利かつ強力な反撃が手痛い。
さっきから連続でイバラがスパスパ斬れられている。
痛い痛い……いや痛みはないんだが。
斬られる感覚も先の動かせなくなる感覚も出るから痛みもないのに痛い。
下で争うメンバーはさらに痛いからそうも言ってられない。
「ひーっ! かする!」
「みんなには、傷つけ、させない!」
「こんだけ斬ってんだ、死ねよ!」
イタ吉たちが毛皮を散らしグレンくんが爪を的確にそらしダカシがたまに出す渾身の一撃を放つ。
暴風は2歩引けばあっさり我が身を切り刻む位置に来てギリギリのところで切り裂きあう。
……よし! 風が消えた!
「うあっ!?」
「グレンくん!」
それと同時にグレンくんが吹き飛んだ。
ついに腹部に大きな傷が!




